第14話 家族でレベリング2

【家族でレベリング2】


「さあて。3階についたぞ」


 景色は相変わらず洞窟のままだ。


「おまえら、ダンジョン攻略で一番大切なのは?」


 基本中の基本だ。


「索敵と気配消し」


「そうだ。これのできない者は深い階層にたどり着けないし、早期に退場することになる」


「俺はスキルあるぞ。気配探知スキルと気配遮断スキル」


「私、まだ持ってない」


「ダンジョンレベル4になると発動するんだ。マノンはレベル3。ジョエルは4だな」


「うん」


「では、まずマノンがレベル4になるのが目標だな」


「よっしゃー」


「では、隊形の問題。これも基本を問うぞ」


「ソロからパーティに至るまで、攻撃は遠距離攻撃をメインとする」


「その通り。遠方から敵を索敵し、遠方から一方的に敵を攻撃する。それが安全確実だ。で、次は?」


「近接戦闘が避けられない場合のために、防御役を設ける」


「それが、タンクだな。タンクの種類は?」


「通常のタンク、ひたすら盾で敵の攻撃を防御するのと、避けタンク。ひらひら敵の攻撃を交わす役割」


「必要なスキルは?」


「ヘイトを呼び込むスキルと防御スキル。対物理、対魔法両面で。それを抑えた上で近接戦闘スキル」


「うむ。では、ジョエルとマノンの二人パーティでやってみよう。ここは、3階。魔物の種類は?」


「コボルト、角兎などの小動物系魔物」


「正解。苦手な魔物はいるか?」


「私、角兎嫌い。素早いし、あの角が怖い」


「ああ。角兎の角は鋭角で、刺されると場所がまずければ致命傷になる。攻略は?」


「遠方でボーとしている兎を攻撃するのが第一」


「だな」


「はずしたら、速攻でこちらに突っ込んでくるので、盾を構えて慌てず第一撃をはずす」


「角兎は直線攻撃しかできない。冷静に対処すれば、交わすのは非常に簡単だ」


「交わした瞬間に攻撃するのがベスト。まあ、父ちゃんなら盾バッシュで攻撃できるんだろうけどさ」


 バッシュとは、盾で直接敵を攻撃する技だ。

 父ちゃんのような熟練者になると、一撃で魔熊を破壊する。

 角兎レベルだと、瞬時に蒸発する。


「冷静にっていうけど、だって怖いんだもの。兎だっていうのに、全然かわいくないのよ。血走った目で向かってくるから」


「マノン、慣れだよ。数やってれば、簡単にかわせるようになるって。そもそもマノンはスピードマスターなんだから」


 マノンのステータスは明らかに速度よりだ。

 敏捷性が非常に高い。


「ううう」


「まあ、手当たり次第にやっていこうか」



 俺の索敵範囲は半径30m程度だ。

 3階ではあまり安全な距離ではない。


 というのは、特に角兎のダッシュが素早いのだ。

 30mを2秒足らずで突っ込んでくる。


 洞窟内だと、お互いの距離が30mもないことが多い。

 だから、初撃をはずせば、瞬間的に角兎が突っ込んでくる。


 やりはじめの頃は、初撃をマノンが外すことが多かった。

 攻性魔導具のホーリーアローで攻撃をするのだが、

 慣れていないこともあって、攻撃が安定しない。


 俺は即座に角兎にヘイト攻撃を仕掛ける。

 ヘイト攻撃は威圧で代用している。

 威圧をぐんと弱めると、相手の注意をひきつけられるのだ。


 俺に向かってきた角兎の攻撃を交わす。

 交わし際に裏拳を当てる。

 100%、角兎を迎撃している。

 俺はマノンほどではないが、

 それでも敏捷性のステータスが高い。


「さっすが、お兄ちゃん」


「いや、あの程度ならおまえにだってできるはず。見えてるだろ?」


「うーん、見えてるけど、やっぱり顔が可愛くない」


「じゃあ、可愛かったらいいのか?おまえの好きな猫ちゃんだったら?」


「ああ、余計にムリ」


 

 そんなことを言いながら、結局30匹程度討伐して、

 俺もマノンもレベルアップした。


「うわー、これが気配探知と遮断スキルなのね!遮断スキルの効果はわかんないけど、気配探知は感動的」


「だよな、ぐっと安心感が増すだろ」


「うん。洞窟内の動きがよくわかる」


「まあ、レベル4だと半径30m程度だから過信するなよ」


「だね。角兎なんかだと、あっという間に目の前だもんね」


「それでも、集中すると動きがスローモーションになるだろ?慌てなければ、全然大丈夫さ」


「ね。顔は見ないことにする」


 ◇


「じゃあ、お昼ごはんにしましょうか?」


「ヤッター!お弁当!」


「ジャジャジャーン」


 おお、豪華な折り詰め弁当だ。

 鳥の唐揚げ、ミニハンバーグ、チキンのガーリック炒め、

 ほうれん草とコーンの炒めもの、ピーマンの肉詰め、

 ポテトフライ、豚なす、アスパラの肉巻き、

 マカロニサラダ、そして洋風卵焼き。


「このマヨネーズってやつもジョエルの作ったもんだぞ」


「お兄ちゃん、急に料理に詳しくなったのね。学園で習ったの?」


「ああ、料理屋の息子がいてね。マヨネーズはそこの地方の特産だっていってた」


「こんなに美味しいのに、今まで知られていなかったの?」


「割りと最近の話らしくて、宣伝中らしい」


「ジョエル、もっとネタを仕入れてこいよ。料理のレパートリーが増えるのは大賛成だぞ」


「そうよ、ジョエルちゃん。洋風卵焼きも美味しいけど、マヨネーズ入りのマカロニサラダ、私、手が止まんないわ」


 もちろん、マヨネーズは俺の前世の知識だ。

 油、酢、卵の基本素材に砂糖やコショウ、マスタードを

 入れて味を整えている。


 打倒Q○マヨネーズのつもりで俺がチャレンジしていた

 レシピだ。

 この世界で披露しても、なかなか追随できないと思う。


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