第13話 家族でレベリング1

【家族でレベリング1】


 シャルルの店へ行った次の日曜日。


 予定通り、盾と大剣、無属性汎用グローブと

 ステルス機能付き聖属性の付与した聖剣を受け取った。


 これをガリエルさんのところに持ち込んで、

 攻性魔導具化してもらった。

 攻性魔導具とは、武具に攻撃性魔法を刻み込んだものだ。


 予算や使用者の考え方にもよるが、

 1~3つ程度の魔法を刻み込む。


 父 盾・土魔法

   防御魔法(土魔法)

   結界魔法(盾スキル)

   シールドバッシュ(盾による物理的攻撃)


 母 大剣・火魔法

   ファイアーボール 単体の火球発射

   ファイアストーム 炎の嵐による範囲攻撃

   インフェルノ 範囲内を灼熱地獄にする


 俺 無属性グローブ

   インテンス 攻撃力強化

   プロテクト 防御力強化

   アヴォイド 回避率向上


 妹 剣・聖属性

   闘志(剣スキル) 素早さ・攻撃力アップ

   ホーリーアロー(聖魔法) 聖属性の矢


 今回は以上のようなスキルを魔導具化した。

 書き換えは可能なので、今後もレベルアップに伴い、

 いろいろなスキルを試してみるつもりだ。


 なお、俺とマノンの防具に関しては、

 動きやすさを優先するために、最高級レザーアーマーとした。

 ジャイアントクロコダイルという、

 現実世界の最大のワニからとったレザーを使用している。


 レザーとしてはやや固く重いのが難点だが、

 そのかわり鋼性のアーマーを凌ぐ強度を誇る。


 なお、残念ながらパッシブ・スキルをオンオフする魔導具は

 ないそうだ。

 

 ただ、スキルによってはオンオフ機能がついていることもある、

 ということだった。



「よし、みんな武具を装備して軽くダンジョンでお披露目してみっか」


「「「おー」」」


「4人でダンジョン行くのって、久しぶりね」


「ああ、マノンが16歳になったら、と思ってたからな」



 ちなみに父ちゃんは早朝からお弁当の用意で大忙しだった。

 これには俺も手伝うことにした。

 日本の記憶が蘇り、俺は前世では料理大好きだったことを

 思い出したのだ。


 何しろ、俺は高校生の時から天涯孤独の身となり、

 一人暮らしを10年以上続けてきた。

 で、どうせなら、と料理学校に通ったりして

 調理技術を高めていったのだ。


「おい、ジョエル。いつのまに、そんな調理技術を覚えたんだ?」


「へへ。父ちゃんが仕事してるときに台所入ってたりしたんだよ」


「ジョエルさん、凄いわ。蛙の子は蛙ってことですわね」


「そうだよ、おにいちゃん。この卵焼きっていうの?すっごく美味しそう」


「だな。その四角のフライパン、いつ作ったんだ?」


「ああ、卵焼きは俺考案の料理さ。鍛冶屋に頼んで作ってもらったんだ」


「ほー、シンプルそうだが、えらく技術の要りそうな料理だな」


「お兄ちゃん、これすっごく美味しい!」


「バカ、マノン。それはダンジョンの昼飯だぞ」


「いいじゃん。もっと作ってよ」


「どれどれ……本当に美味しいな。卵のケーキってとこだな!」


「まあ、みなさんハシタない……本当にふわふわしてて美味しいわ」


「おい、オレにも作り方を教えろよ」


「いいよ。簡単だから少しコツを覚えたらすぐできるよ」

 

 和風だしといきたいところだけど、

 この世界の標準的なスープ、チキンスープ入りの

 洋風卵焼きだ。


 砂糖類は入れない。

 オレの地方では砂糖は入れなかったからだ。

 砂糖を入れる地域があることを聞いて驚いたぐらいだ。


 玉ねぎやらチーズやらを入れて

 オムレツ風に仕立てあげてもいいだろう。


 ◇


 さて、ダンジョンへ行くのかピクニックに行くのか

 ちょっと迷うようなノリでダンジョンの入口についた。


 このダンジョンはラ・シエル街とラ・シエル・アカデミーを

 ずっと支えてきた。

 このダンジョンがあるから、この周辺が栄えてきたのだ。


 入り口には街の会議所の運営する管理所がある。

 会議所は街の最高機関だ。

 ラ・シエル街は貴族や教会は絡んでいない。

 いわゆる市民によって運営されている。


 市民といっても富裕層であり、

 言ってみれば新興貴族のような存在だ。

 ただ、保守的な貴族と違って開明的な考え方をするので、

 旧来の保守層とは折り合いが悪い。


「みんな、IDを出せよ」


 ラ・シエル街の市民、アカデミーの学生・職員であれば、

 入場料は無料となる。


 そうでなければ、入場料500sがかかる。

 他地域の初心者や低級冒険者は割が合わないので、

 入場しない。


 4人はIDを見せてダンジョンに入場する。

 入るときに薄い膜のようなものがあり、

 そこを過ぎるときに軽くめまいがする。

 

 ダンジョンは異次元世界であり、

 その膜が現実世界との境目になっているのだろう。


 ところで、魔素フィールドスキルが発現したせいか、

 俺は魔素の有無を肌で感じられるようになったようだ。


 ダンジョンが近づくと、魔素濃度が上がってくるのがわかる。

 なんていうか、優しい空気に包まれているような感じになる。



 ダンジョンの1階はゴツゴツした洞窟だ。

 薄暗い。


「おまえたち、見えるか?」


 初心者だと、かなり暗く感じるが、

 レベル3以上になると身体強化が進み、

 暗がりでも見えるようになる。


 ちなみに両親はレベル30で非常に明るく見えるという。


 それと不思議なことは、

 ダンジョンに入ると身体強化スキルが発動する。

 だから、父ちゃんたちは非常な違和感を感じるはずだ。


 でも、普通に行動している。

 聞いてみると、違和感はないらしい。



「じゃあ、1階と2階は軽くスルーするぞ」


「スライムってめんどくさいのよね」


「一応、最弱ってことなんだけど、倒すのにコツがいるんだよな」


「そうそう。そうじゃないと、結構強い」


 1階と2階は大した敵がいない。

 それと、スライムが多く出没するが、

 このスライムが特殊で鋭い木の棒などで

 スライムの核をつぶすことによらないと、

 討伐に非常に苦労する。


 スライムは武器耐性・魔法耐性ともに非常に高く、

 しかも体液は強めの酸性である。

 金属製の武器を使うと錆びてしまうのだ。


 だから、木の棒でコツコツと討伐していく。

 費用はかからない。

 根気だけが必要だ。

 スライムが初心者向けである理由の一端だ。


 なお、スライムの落とす魔石は

 なぜか全て同じ大きさで、直径5mm程度。

 この世界の通貨単位の基準になっている。


 スライムの魔石は一律1sとなるのだが、

 sとはスライムの略である。

 ただ、読むときは1エスと呼ぶ。



 ちなみに、20階まではダンジョンマップが売られている。

 +父ちゃんたちの気配探知で数百m先までの地図が

 頭にうかぶことになる。


 迷うことはまずない。


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