第10話 家族の話をしようか3
【家族の話をしようか3】
「ええ?私のダンジョン装備、新調してくれるって?本当?ラッキー!ヤッター!」
妹のマノンは両親からグッドニュースを聞かされ、
ソファの上で飛び跳ねている。
「だから、次の日曜日開けておけよ」
「ヤッホー!お買い物!お母さん、お化粧貸して!」
「あらあら、じゃあ新しい化粧品も揃えてみる?」
「ギャー! ○▼※△☆▲※◎★●」
とうとうマノンが発狂したようだ。
「さて、問題はジョエル。おまえだ」
「なんで?」
「おまえ、結局属性が出現しなかったな。得意技も拳だ」
「そうなると、ジョエルちゃん向けの攻性魔導具って、随分と幅が狭くなるのよね」
「ああ、普通のグローブでいいよ。勘だけど、俺の拳スキルはこれからいろいろ発現すると思う」
「そうなの?まあ、防具だけでもいいの作っておこうか」
「マノンもだが、二人共俊敏性を保てるほうがいいんじゃないかしら」
「だな。金属製じゃなくて、レザー製か?」
「あと、アンダーウェアでアラミド樹木でできた繊維を使ったものとか」
「ああ、俺たちも上下一式買っておこうか」
「いいわね」
「グローブでもさ、無属性スキルの勢いを増すっていう汎用魔導具があるらしいぞ」
「そうなの?」
「以前シャルルが言ってたんだが、結構新機能らしい。その分、かなり高額だがな」
「魔石と物々交換でいけるでしょ?」
「うん。むしろ、そのほうが喜ばれるな」
「魔石は無料で作り放題だから、どんどん使ってよ」
「申し訳ないが、足りなくなったらお願いするよ」
「ああ、そうだ。昨日の続きの話を後でしていい?」
「まだあるのか?いいぞ。あとで俺たちの部屋に来い」
◇
「で、なんなんだ。昨日みたいにびっくりすることか?」
「そうなんだ。昨日よりも危ないことかも」
「ジョエルちゃんって、ある意味天才ね。そんなびっくりスキルが次々と発現するなんて」
「はは。2番めのスキルは、魔素フィールドスキルなんだ」
「ひょっとして、人工魔素フィールド魔導具のスキル版ということか?」
「その通り。しかもパッシブスキルで、俺には常時魔素フィールドが発動している」
「今もか?」
「そう。合わせて身体強化スキルも発動して大変なことになっている。ほら、この通り」
俺は台所から持ってきたリンゴを握り潰してみた。
「わあ!検知器にひっかかるんじゃないの?」
「ところが、ひっかからないんだ。性質が違うのか、それともステルススキルが組み込まれているのか」
「フーム。しかし、バレたら即座に拘束されるな」
「そうなんだよ。今のところ検知器に引っかからないとはいうものの、将来的にもそうだとは限らない」
「そうか。パッシブってのが厄介だな。なんとかオンオフできるようにならんか」
「無茶だろ」
「だよな。パッシブ・アクティブを切り替えられるなんて芸当は聞いたことがない」
「色々伏せてガリエルさんに相談してみる?」
「うん、それしか俺も思いつかんわ。ジョエル、ガリエルにそれとなく聞いてみるってことでいいだろ?」
「ああ、まかせるよ。これ、下手すると王国から逃亡しなくちゃならなくなるからな」
「よし、そうなったら地下室で自主練だ!」
この家には地下にトレーニング室がある。
何しろ、二人共元B級冒険者だ。
まごうことなき脳筋である。
それに、体力は鍛えないと衰えるし、
ダンジョンレベルもダンジョンにいかなくなると徐々に落ちていく。
だから、両親は毎晩トレーニング室で自主練を行う。
そして、週末などの暇を見つけては、
ダンジョンに通ってレベルを落とさないようにしている。
そんな両親に育てられた子供だから、
俺もマノンも小さい頃からトレーニング室が遊び場だった。
両親と一緒にいろいろな器具で鍛えていたのだ。
ダンジョンへはあまり連れて行ってくれなかったが、
これも両親の、とにかく基礎ステータスをあげること、
という趣旨によっていた。
だから、俺は家に帰ってくるたびに訓練しているし、
放課後になると寮で自主練をしている。
これをしていたお陰で、アカデミーに潜り込めた、といえる。
俺はかなりの肥満だが、運動的には動けるデブだ。
昔から瞬発力も持久力も平均よりはかなり高い。
ロレーヌも小さい頃から家に入り浸っており、
俺たちとトレーニング室を遊び場にしていた。
今でも不定期に遊びに来る。
残念ながら、俺はずっとロレーヌに勝ったことがない。
ロレーヌは頭も非常にいいのだが、
フィジカル面でもとびっきりだったのだ。
ただ、こうなっては俺はロレーヌのフィジカルを
遥かに凌駕しているだろう。
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