第9話 家族の話をしようか2

【家族の話をしようか2】


 にぎやかな食事後、俺は両親に相談することにした。

 何をって、俺のスキルのことだ。

 両親の部屋に行き、


「父ちゃん、母ちゃん、ちょっと聞いてくれ。俺にとんでもないスキルが発現した」


「とんでもない?」


「ああ、掛け値なし、嘘偽りなくとんでもない」


「ジョエルちゃん、それはなんなの?」


「ちょっと見てくれ」


 俺は両手をテーブルの上においた。

 手のひらを上に向けて精神統一をする。

 すぐに青白い渦がまきおこり、小さな魔石が生じた。


「え、どういうこと?それって魔石?」


「うん。魔石」


「信じられん。手品とかじゃないよな?」


「しかも、ダンジョンの外で発動するスキルなのね?」


「そう。ここは魔素密度が薄いからこんな程度だけど、時間をかければこの通り」

 

 と俺は野球ボールよりもふた回り大きい魔石を

 テーブルの上にゴトリと置いた。


「うわ、なんて大きな魔石!」


「先日作ったやつだ」


「俺たちの獲得した最大の魔石は直径10cm程度だったよな」


「アレクさんが大怪我したときのよね」


「アレはBクラスの魔物だったが、実力的にはAクラスに近かった。それでもその程度だった」


「この大きさの魔物となるとAクラスどころじゃないわよね」


「Sだろうな」


「わかるだろ。俺がこんな魔石を獲得したなんてこと、普通はありえないだろ?」


「だな。ダンジョンの入口で厳しいチェックが入るな」


 ダンジョンでゲットした魔石のうち、

 大きいものはダンジョン入り口のダンジョン管理室で

 売却することになっている。


「そうね。拘束されてどこかのために働け、なんてことになりかねないわ」


「じゃなければ、大犯罪組織に誘拐されるな」


「だろ?冗談じゃすまないんだ。どうしたらいいと思う?」


「うーん。とりあえずは、大きな魔石作るのは自重というか、禁止の方向で」


「魔石の大きさは変えられるんでしょ?」


「うん」


「だったら、CかDクラスの魔物の魔石サイズをたくさん作ればいいんじゃない?」


「ああ、その程度の魔物なら俺たちが狩ってきた、ってことにできるし、俺たちのルートでいろいろできるな」


「魔石を売ってもいいし、魔導具屋さんに持ち込んでもいいし」


「ジョエルちゃんはどうしたい?」


「そりゃ、店の売上に貢献したいよ」


「どうかな。まずは家族のレベルアップを計るってのは」


「家族でダンジョンに潜るってことね」


「ああ。息子にとんでもないスキルができたんだ。自衛力を鍛え上げなきゃ」


「じゃあ、武具もグレートアップしたほうがいいわね」


「だよな。俺たちは放任主義だったが、子供たちに教えられることって、結局ダンジョンのことってこともあるし」


「じゃあ、魔導具師さんのガリエルさんに相談してみる?」


「だな。攻性魔導具を作ってもらうか」


「それと、武器・防具職人のシャルルさんの店」


「うん。あそこは街で一番の品揃えの店だ」


 さすが、両親は元冒険者だけあり、思考が脳筋よりだ。

 でも、自衛力を鍛える、というのはこの世界の普通の考え方だ。


 ◇


「おお、アレク久しぶりだな。マダムは相変わらずお美しい」


「まあ、ガリエルさんったら、いつもお上手で」


 ガリエルさんは、ドワーフだ。

 短躯だが非常にがっしりした体の持ち主で、

 商売人というよりも職人である。

 ヒゲモジャで年齢はよくわからない。


「今日は二人揃ってどうしたんだ?」


「いやね、高性能の攻性魔導具を手に入れたくてね」


「店に並べるのか?それとも冒険者に戻るとか」


「将来的にはいい魔導具を置きたいんだけど、その前に少し冒険者活動でレベルアップしておこうかと思ってね」


「ほう。B級冒険者だったお前さん方が引退後もムリのない範囲で活動を続けているのは知っているが、それ以上ってことか?」


「ああ、昔ほどじゃないにしてもね。体の動くうちに子供たちにいろいろと伝授しておこうかと。だけど、昔の攻性魔導具はいい加減ボロが出てきてるんだ」


「息子さんと娘さんがいるんだよな。そういや、息子さんはアカデミーの1年だろ。凄いな」


「まさしく鳶が鷹を産んじまったよ」


「何卑下してるんだよ。お前さんたちはあのまま引退しなかったら、今頃冒険者ギルドでブイブイ言わせてたと思うぜ」


「はは、ありがと。まあ、そんなわけでいい攻性魔導具を相談したいんだ」


「アレクは土属性だったな。クリステルさんは火だったか」


「ああ。娘は聖だ。息子は今のところ無属性だ」


 ダンジョンで使用する魔導具は使用者の属性に合わせる必要がある。

 属性が合えば、魔導具の能力を十全に発揮するが、

 反対属性だと動かないことも多い。


 例えばクリステルの場合、火魔法を得意とする。

 魔導具無しでも火魔法をぶっ放せるのだが、

 魔導具を使えばさらに強い魔法を放てるのだ。


 しかも、魔力が節約できるし、

 魔力が切れても新たな魔石をチャージすればいい。

 だから、ほぼすべての冒険者は

 自分の属性にあった攻性魔導具を所有している。


 ただ、弱点は魔導具に刻み込んだ魔法しか使えないことだ。

 例えば、火魔法ファイアボールを刻み込めば、

 より強力なファイアボールを、より持続的に発動できる。


 しかし、ファイアボールの上位魔法であるフレアボールを

 発動することはできないし、

 下位魔法であるファイアでさえも発動できないのだ。


「ふーむ。子供さんは一度攻性スキルをチェックする必要があるな。聖属性とか無属性とかは特殊だからな」


「ああ、次連れてくるよ」


「アレクは盾。奥さんは大剣。魔導具を組み込むか?」


「お願いするよ。シャルルの店でいいのを買ってくるから」


「よっしゃ、待ってるぞ。子どもさんも連れてこいよ」


「うん。来週の日曜日はシャルルの店に行くから、次の次の日曜日だな」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る