家族

第8話 家族の話をしようか1

【家族の話をしようか1】


 俺の家族は両親と中3の妹。

 3人共俺とは違って随分と美形だ。


 まず父親。

 俺は父ちゃんと呼んでる。

 俺たちは庶民だからな。

 父上とかパパとかはくすぐったくて口に出せない。


 父ちゃんは元B級冒険者だ。

 冒険者というのは、ダンジョンを探索・魔物を討伐する人のこと。


 名前はアレク。

 身長190cm、体重90kgの巨漢だが、

 筋肉質であり見栄えのする男だ。

 前世の俳優のライアン・ゴ○リングに似ている。

 髪はブルネット、目はヘーゼル。


 得意は盾。

 守備専、タンクである。


 年齢は39歳。

 22歳のときに大怪我を負い、

 治療が長引いてそのまま冒険者を引退。

 母親と結婚して冒険者向けの店を開いた。


 A級冒険者間違いなしと言われていたらしいが、

 母親のお腹に俺がいた。

 だから、金や名誉よりも家庭の安寧をとったわけだ。



 次に母親。名前はクリステル、通称クリス。

 母ちゃんだ。

 父ちゃんとペアを組んでいた元B級冒険者。


 身長170cm、体重55kgで痩身。

 顔が小さく手足が長いので、母ちゃんも見栄えがする。

 年齢は父ちゃんと同じ39歳だが、

 30を越えているようには見えない。


 系統としてはほのぼの系で、

 雰囲気的には強いて言うならば西野○瀬。

 彼女をもう少しおばさんよりにし、

 目をブルーにして鼻を高くして

 全体のメリハリをつけた感じだ。

 さらにもっとほんわかさを加えたタイプである。

 髪の毛はシルバーブルー。


 普段はおっとりとしている。

 とても元冒険者には見えないが、

 怒ると大変怖い。


 その実、本質は火の人。

 大剣を操り、火魔法を得意とする。

 超攻撃的な人だ。


 彼女は小さい頃から美形で有名で、

 言い寄る男が列をなしていたという。


 ところが、彼女のタイプは強い人。

 私を守ってくれる強い人、っていう意味じゃない。

 私と闘って勝てる人、っていう意味だ。


 で、彼女に挑んで破れた男の屍が

 山のように積み上がっていたらしい。


 そして、彼女に対して最後まで立っていられたのが、

 父ちゃんだ。


 それでペアを組んで冒険者街道を爆進。

 父ちゃん同様、Aクラス冒険者目前であったが、

 父ちゃんの怪我と同時に妊娠が発覚。

 冒険者を引退したのだ。


 父ちゃん・母ちゃんに共通するのは、

 10代の頃に天蓋孤独になったこと。

 俺たちには親類がいない。

 この世界ではよくあることだ。



 妹。名前はマノン。

 中3、14歳。

 BABY○ETALというメタルダンスユニットの

 M○Aという女の子、

 彼女の中学生時代を彷彿とさせる美形だ。


 目は母ちゃんに似てブルー。

 髪の色は現在はシルバーピンク。

 父方のおばあちゃんの髪の色だという。


 彼女は初めて入ったダンジョンで聖剣スキルを発現した。

 得意魔法も聖魔法だ。

 教会に見つかったら引っ張られそうで心配している。


 勉強はあんまり好きじゃなく、

 そのかわりダンジョンが大好きで、

 攻撃的な性格は母親譲りかもしれない。


 ただ、母ちゃんは普段はおっとりしているが、

 マノンはいつも姦しい。

 子猫のような騒々しさがある。



 一家団欒の夕食が始まった。


「ジョエル、どうだ。学園生活は」


 家族3人共、俺がアカデミーに合格したら、

 大騒ぎして喜んでくれた。


「そうよ、ジョエルちゃん。ちゃんとご飯食べてる?」


「寮の飯はかなり不味いな。だから毎日こっそり家に帰ってくるんじゃないか」


「オレの料理は上手いからな」


 我が家の料理担当は父ちゃんだ。

 冒険者時代から料理上手で有名で

 ダンジョンで野宿するときなど、

 しばしば冒険者仲間が材料を持ち寄って

 父ちゃんに料理させていたそうだ。


 だから、店を開くときに冒険者向けのグッズ販売にするか

 レストランにするか迷ったという。


 最終的に自由時間がたくさんとれるということで

 グッズ販売の店にすることになった。


「そうよ。アレクさんの料理がおいしくて、私達お付き合いすることになったんだから」


「いや、クリスとの手合わせを耐え抜いたからじゃなかったっけ?」


 もう何度も繰り返される定番の話題だ。

 まあ、とにかく仲がいい。

 いつもベッタリしている。


 時々、猛烈な喧嘩が始まって家の中が台風のようになるのだけど、

 10分程度で再び甘い雰囲気に戻ってしまう。


「お父さんの料理食べると、私の彼氏選定基準がどんどんあがちゃうのよね」


 バクバクと父ちゃんの特製料理を食べながら、

 マノンがそうのたまう。


「父ちゃんの料理はプロレベルだぞ。男だろうと女だろうと、そんなスキル持ち滅多にいるわけないだろ」


 マノンはようやく食べているときに口を閉じることを覚えた。

 以前は食べ方がよく言えば豪快だったのだ。

 何度言っても治らないので、俺が「マノンの真似」などと

 マノンの食事風景を多少誇張して真似てから矯正された。


 マノン的には大ショックだったらしく、

 それ以来、随分と食べ方が上品になった。

 マナー本を読みつつ、いろいろ練習しているようだ。


 だから、このところまるで前世のマナー講師のような

 うざ絡みをしてくることがある。


 ただし、妹との仲は良好だ。

 というか、妹は俺のことを誇りに思っているようだ。

 こんなチビデブピザなのに。


 まあ、腐ってもアカデミーの学生だからな。


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