第23話:酷いこと、そして会議 ~最悪な輸送だった・・・~

大帝国首都ベルヘンに到着した頃には・・・私は死にかけていた。

自分で飛ぶのと、空中で運ばれるのは全くの別物だった。

・・・要するに、酔ってしまったのだ。

最初の方に騒ぎ過ぎたのが問題だった・・・それに、大量に血を流し過ぎたせいか、貧血気味でもある。

こんなに弱ったのは子供の時以来だ。

うぅぅ、と項垂れる私の背中をミラが優しく撫でてくれる。

暫くして落ち着いた私は、立ち上がろうとするが、立ち眩みだったり、下腹部が痛んだり・・・。

足も、右はそもそも動かせないほどの重傷だし左足も膝が曲げられない。

ベットの上にいた時は気が付かなかったが予想以上の重症だったようだ。

ミラが私に怒っていたのも納得だ。

それは別の事として、招集された総統官邸の臨時会議室まではどうやって向かおうか・・・。

私が悩んでいると、何かを察したシェルが悪だくみをしている時の不気味な笑顔で

私に近寄って来た。

緊急招集は・・・大帝国8色8役聖騎士に全員に宛てられた物、つまりは・・。


「私たちが優しく運んで上げるから・・うふふ、安心しなさい」


安心できない・・・シェルの不敵な笑み、何かを企んでいないわけがない。

だが、今の私に抵抗する術はなく流れに身を任せることしかできない。

と警戒していたのだが・・・シェルとミラは特に私に何をするでもなく、私に肩を貸して総統官邸まで

連れて行ってくれた。

そして、総統官邸臨時会議室にノックを入室する。

到着した時間が早かったのか、大総統含め・・・会議室には誰もいなかった。

私を席に着かせてくれた二人は、私の両隣に静かに座った。

流石に、総統官邸に入ってからは誰一人としてふざけない。

それもそうだろう。

国家の中枢機関をこの総統官邸に集中させている。

大総統含め、政治の中枢を担う方々や・・・我らの上官などが仕事を行っている場。

そんな場所で少しでもふざけたりすれば・・・。

そうこう考えている内に、コンコンと扉をノックする音が聞こえ、そのまま3人の人物が入って来た。

その数分後に、大総統含め他の聖騎士達が入室してきた。

大帝国内で、それぞれの分野で最も強いと言われている8人・・・それが此処、総統官邸の

臨時会議室に集まったのだ。

それはさて置き、私たちは大総統の入室と共に席を立ち敬礼をした。

私は一人で立ち上がるのが無理なので、ティナとミラに支えて貰ったのだが。


「ご苦労、楽にしてよい」


その言葉を聞くと共に、我々は一斉に席に着く。

ここで、大帝国8色8役聖騎士について軽く説明させてもらおうと思う

赤(破壊・強大)・底なし魔力のティナ・ベルフォス将軍(中将)

白(万能)・知魔法卿のシェル・メーメルズ将軍(少将)

黄(支援)・謀略の天使のミラ・エルヴァン将軍(少将)

黒(暗躍)・不可視不在卿 通称『影』(詳細不明)

白銀(剣)・不敗の剣神のジーク・ベルン・ジェイバード・八ットナー将軍(中将)

青(盾)・神壁完全防衛のドナード・ハッセン将軍(大将)

茶(工作)・工作戦の天才のカルート・ローゼン・ハインドリヒ・ベードナー将軍(大将)

緑(安定)・事務処理の鬼神のセリナ・バルナード・フォーセン将軍(少将)

の以上8名だ。

もう少し詳しく説明すると

黒(暗躍)、通称『影』殿は全ての詳細が不明だ。

年齢、性別、姿、所属、出生地、それを知っているのは大総統のみ・・・だが、実力は確かで

多くの欺瞞情報を敵に掴ませ、より正確な情報を味方にもたらす・・・情報戦の最前線にいるお方だ。

白銀(剣)、剣神ジーク中将・・・大帝国近衛師団長であり、彼以上に強い剣士は存在しないだろう。

彼はティナの2つ上であり、士官学校の先輩だ。

成績優秀で、正に正規軍人の象徴と言うべき存在で、ティナの尊敬する先輩の一人だ。

だが、彼の凄いところはそれだけではない。

何と、魔導武装を施したティナ、アルフィナ、アアメルに・・・己が身一つと剣で勝利を収めている。

その後、3人の剣術指南役となり・・・大帝国化け物魔導武装員の師匠となった人物でもある。

今は、流石に3人相手では負けるだろうが・・・1対1なら分からないと言われている程の人物だ。

青(盾)ドナード大将、大帝国首都防衛を担う人物だ。

年齢は50歳と老練なお方で、経験と言う、我々若者に不足している物を多く持っておられる。

知識や見識もあるお方で、年齢性別関係なく誰の意見でも柔軟に取り入れる方でもある。

人望もあり、正に理想の軍人であり、最強の防衛者でもある。

ドナード提督は、その人望を活用し大帝国内に膨大な情報網を構築しており・・・大帝国内の情報は

情報部よりもドナード提督が持っている、と言われる程だ。

その結果、首都内の反乱分子や敵の諜報員を素早く捕縛することが出来る。

正に、首都の守り神である。

茶(工作)カルート大将は、20の時から隠密として工作活動を行っていたり

工作戦の重要性について、戦略・戦術研究部に論文を提出していたりと・・・当時は変人扱いされていた

お方だ。

しかし、彼のことをドナード大将が評価し始めた頃から、周りの評判は変わり始めた。

そして、現在の戦略・戦術研究部の部長が彼の論文を高く評価した頃から、カルート提督の真価が発揮

され始めた。

2年前の戦争で、100名の魔導工作部隊を率いて各所に簡易要塞を組み立てたことによって、少数の軍で

多数の敵の侵攻を食い止めることが出来た。

これにより、戦略・戦術研究部部長であるエリアナ・フィネット中将が元帥閣下に新しい軍団の編成を

願い出ることができた。

そして・・・新たに編成されたのが、カルート提督率いる『独立機動工作戦軍団』である。

規模は3万2千名、騎兵、歩兵、魔導師、工作兵などから構成される。

共和国で言う、特殊専門工作部隊に分類され、事実それらと同様の働きを行っている。

工作、諜報、戦闘、防衛、遊撃、全てを一個軍団で済ませられてしまう。

それ故、カルート提督に課せられた責任はとても重たい。

最後に、緑(安定)のセリナ少将についてだ。

彼女は、情報処理部・・・諜報員によって集められた情報の、正確性の立証及び情報整理が主な

仕事だ。

地味で、誰にでも出来る様な仕事に思えるかもしれないが・・・敵の欺瞞情報を見破ったり

情報の正確性を確かめたりするのは、相当に難しい。

それに、敵の欺瞞情報に引っ掛かれば甚大な被害を出す可能性もある。

情報戦を重視する大総統だからこそ、情報の整理や活用に最も気を配るのだ。

故に、魔法も剣術もそこそこの彼女が・・・8色8役聖騎士の緑に就くことが出来たのだ。

情報処理の鬼神と言われる彼女だが・・・情報戦の活用についても、大総統に次ぐ知将である。

まあ、心強い味方と言うことには違いない。

さて、以上が大帝国8色8役聖騎士の説明だ。

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