第22話:同期 ~一応、私怪我人なんだけど・・・~

150㎝と子供の様な身長だが、ティナと同等、今ではそれ以上の戦士と言っても過言ではない。

4年前の小競り合いで、敵の要塞の城壁を一撃で破壊した戦士。

故に城壁破壊のアルフィナ将軍とも言われている。

ティナがいなければ、大帝国8色8役聖騎士の『赤』の称号は彼女の物だったとも言われている。

彼女の愛用武器は戦槌、小柄な彼女には不似合いな武器だが、力はティナやアアメルと同等程度で

問題なく使えてしまう。

平和な時期に行われる軍部内の祭り『武闘祭』で、ガルベル提督に勝利を収めたこともある。

そんな彼女と、ティナとアアメルが同じクラスにいた。

ティナ、アアメル、アルフィナがいたクラスの魔導武装の実技は悲惨だったそうな・・・。

それはさて置き、本題に入ろう。


「久しぶりだな、アルフィナ」


私に抱き着いて来たアルフィナを引きはがそうとしながらそう言った。

うふふ、と変な笑い声を上げながら抱き着いたままのアルフィナだが、怪我を負っている

私ではどうやっても引きはがせそうにないので、それは諦めて、来訪の要件を聞くことにした。

すると

「えっ、友達に用事もなく会いに来ちゃいけなかったの」

と言われてしまった。

確かに・・・友達に会いに行くのに要件はなくてもよい・・・だが・・・。

私はアルフィナに対して何か言おうとしたが、言葉が出て来ず、結局は溜息という形で落ち着いた。

私が諦めて、無言でアルフィナに抱き着かれていると、もう一人私に抱き着いてくる者が現れた。

しかも無言で・・・。

頬を膨らませて、アルフィナに対抗するように私に抱き着いて来たのは、ミラだった。

そんな二人を見たティナも・・・


「なになに、じゃあ私も」


と、抱き着いてくる有様。

私、一応怪我人なんだけど・・・。

何を言っても無駄、かな・・・。

仕方がないか、ゆっくりと休めるのも珍しいし、今はこんなゆったりした時間を過ごしてもいいかな。

そんな私の考えは甘かった、甘かったのだ。

30分、30分もの間私は3人に抱き着かれていた。

私・・・怪我人なのに・・・。

流石に限界の来た私は、3人に離れてくれるようにお願いした。


「苦しいから・・・お願い、どいて頂戴」


私の苦しそうな声を聞いて我に返ったミラが、残りの二人を引きはがしてくれた。

本当に・・・士官学校にいた時もそうだったな。

よく二人には迷惑を掛けられたものだ。

私が昔のことを思い出していると、

アルフィナが、本題に入るとか何とか、訳の分からないことを言い出した。


「用事はなかったんじゃないのか」


私が呆れた声でそう問いかけると、アルフィナの奴

「ないとは言ってないよ」

とかふざけたことを言い出した。

一発ぶん殴ってやりたいところだが、この怪我じゃ簡単に防がれて終わるだろう。

それはさて置き、アルフィナの言う本題というやつは、敵に関する情報交換と、正式な帰還命令書の

受け渡しだった。

公務の状態に戻った我々は、スムーズにことを進めた。

まず最初に、ミラが持ってきてくれた報告書をアルフィナに読んでもらう。

これで、ある程度の敵の戦力の状況が分かるだろう。

残りは、私たちの戦った感想を彼女に聞かせる。

公務の時のアルフィナは真面目で、一切の聞き漏れの無いように集中して話を聞いていた。

何時もこの真面目な態度でいてくれればよいのだが・・・溜息の一つも付きたくなる。

だが、問題は別の所にある。


「緊急招集」


そう、緊急招集。

緊急招集とは、大帝国8色8役聖騎士にしか対応できな問題が発生した場合にのみ、出される令状。

事態は良好ではなく、最悪だったのだ。

私たちが暗い顔をしているのもお構いなしに、アルフィナは明るい声で私たちに別れの挨拶をした。


「それじゃ~、私は君たちの代わりにしっかりと働かないとだから~、まったね~」


相変らずだな・・・。

それはどうでもいいとして・・・問題は、負傷者だ。

王獣魔導隊には私を含めて、負傷者6名、重傷者1名がいる。

怪我の程度にもよるが詳しく話を聞こう。

私は、負傷者が誰なのかを詳しくミラに聞くことにした。

ミラ曰く、問題なく6人とも飛行行軍はできるらしい。

良かった、緊急招集には間に合いそうだ・・・否、重傷者の様態を聞くまでは分からないな。


「それで、重傷者はどうなんだ」


私がミラにそれを聞くと、ティナと顔を合わせて溜息を付かれてしまった。

一体どういうことだ。

私が戸惑っていると、ミラははっきりと

「重傷者は・・・自力での帰還は無理です」

と、食い気味に言われてしまった。

しかし、緊急招集なわけだし・・・今すぐにでも出立すべきことなんだが・・・。

仕方がない。

その者には申し訳ないが・・・


「仕方ない・・・その者は、担架に括り付けて無理やり輸送するぞ、輸送の人選はミラに一任する」


私がそう言うと、ミラはまた何かを言おうとしたがシェルに引き留められてしまった。

そして、シェルが耳元で何かを囁くと、ミラは観念したようにティナの意見に従うことにした。

それでは、今すぐにでも準備を開始して出立するぞ。

私がそう言うと、ミラは呆れた顔で、シェルはニマニマと怪しげな顔で退出していった。

これがまさか・・・あんなことになるなんて・・・。


「なんでだぁぁぁ」


高速で空を飛行する王獣魔導隊、その隊長は優雅に先頭を掛ける・・・はずだったのに・・・。

私は今、担架に頑丈に括り付けられて、無理やり運ばれている。

止めろと何度も言っているのに

「命令ですよね」

と言う、卑怯な言葉で反論を許さないミラ。

それに加勢して追い打ちを掛けてくるシェル・・・誰も助けてくれない。

・・・そう、こいつら皆・・私の敵だったのだ。

「図ったなぁぁぁぁ」

と言う私の怒号は、空の彼方へ空(むな)しく消えるのであった。

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