第21話:報告書と同僚 ~同期の登場~

報告書や資料については、何か書かなければならない場合はシェルが、書類はミラが読み上げてくれる。

見せてくれるだけでよいと言ったのだが・・・却下されてしまった。


報告書

先の戦いの『仮名:ヘルス平原の戦い』での敵と味方の被害についてです。

我々、鉄壁要塞防衛及び駐屯軍の被害

王獣魔導隊は、負傷者6名、重傷者1名で済みましたが・・・

残念ながら、ガルベル提督率いる超重装粉砕突撃騎兵師団は戦力の7割を失い

ガルベル提督も討ち死になさいました。

超重装粉砕突撃騎兵師団は、騎兵大隊となり、現在は生き残った将校の中で最も階級の高かった

エドヴィー・ラディエル・フォルテン大佐が指揮を執っています。

要塞防衛司令官は、モットー・フォン・ランデル中将が臨時で就いております。

要塞防衛隊にも、少なくない被害が出ております。

鉄壁要塞防衛魔導隊、1個大隊及び2個中隊が撃破され、4名の上級将校が死亡しました。

防衛魔導隊以外に、歩兵隊にもそれなりの被害が出ており・・・合計で1万3千名程度の死亡が

確認されています。

続いて、共和国軍に与えた損害です。

諜報部隊は、時間が足りず大まかな情報しか集められていないそうですが、確認できている範囲で報告しておきます。

敵の歩兵7個師団を、我々王獣魔導隊が撃滅、超人兵隊にも大きな被害を与えました。

まず、大きな功績としてガディック・バルボン中佐を討ち取ったことです。

その他にも、おおよそ300名の超人兵隊の構成員の死亡を確認しました。

しかし残念ながら、ビルスク大将と側近のフィース中将の生存は確認。

続いて、要塞防衛隊の功績として・・・敵の別動隊、つまり要塞攻撃部隊の攻撃を見事に

耐え凌ぎました。

その過程で、敵攻城魔法特化隊及び小規模殲滅特化魔導騎馬隊を撃滅しました。

その他にも、多くの部隊に甚大な被害を与えたとのこと・・・敵超機動弓兵隊以外は壊滅状態だ

そうです。

シーシャ大佐が立案した作戦で、敵を罠に誘導し、エミリエ大佐が魔法で作った罠に見事に嵌めることに

成功したとのこと。

以上が、今回の戦いでの被害報告です。


・・・やはり、ガルベル提督はなくなられていたか・・。

戦争では、猛将や知将ほど死に瀕する確率は高い。

だが、それを回避する術は知っている。

まあ、何度も成功するわけではなく・・・運が尽きればそこまでだが・・・・・。

大切な祖国と、仲間達を守るには早期戦争終了が望まれるな・・・。


続いて、補給物資及び援軍についての報告書です。

補給物資と援軍が到着しました。

・・・補給物資は分かる、ヴィヴィとフィーナに頼んだからな。

「援軍・・・援軍とは」

悩んでも一向に埒が明かないと思った私は、ミラに直接問うことにした。

だが、答えは思ったより単純だったようだ。

「戦況が動いたので、我々に帰還命令が出たのです」

・・・戦況の変化、我々を呼び戻すと言うことは、一気に勝利を掴める可能性が出てきた好機か

逆に、敗北する可能性が出てきた最悪の事態か・・・。

まあ、今はそんなことをを考えても意味がない。

報告書の続きを聞くとしよう。

なので、ヴィヴィ中佐とフィーナ少佐は帰還しております。

丁度、ティナちゃんが意識を取り戻す直前のことだったから・・・二人が挨拶に来なかったのは

許してあげてね。

ミラが小声でボソッと呟いたので、私は笑いながら頷いた。

二人も疲れているだろうし、私もこんな状態だから休むなとは言えないしな。

それは良いとして・・・。

補給物資の状況だが・・・。

要塞の倉庫に収まりきらいない程、大量に輸送されてきました。

これも、援軍のお陰です。


「以上が報告書となります」


ミラの報告を聞き終わった私は、その結果に満足していた。

それはさて置き・・・援軍に来たのは一体どの部隊だ。

確かに・・・敵の特殊専門工作部隊の殆どを壊滅状態に追い込み

敵の本体にかなりの被害を出したし・・・・超人兵隊にも、牽制程度の被害は出せた。

だが・・・こちらも、主力である超重装粉砕突撃騎兵師団を失った上に、ガルベル提督まで・・・。

それに・・・防毒面(ガスマスク)旅団は健在だ。

もし、敵が防毒面(ガスマスク)旅団を投入して来れば・・・まともに補修も出来ていないこの

要塞では、太刀打ちできない。

中途半端な援軍を送って来たのなら尚更だ・・・だが、大総統は稀代の政治家でありながら

大英雄ともいえる知将だ。

実際、これまでの作戦行動に置いて何一つ問題は起きていない。

流石は大帝国軍と言うべきか・・・見事に優秀な人材がいたものだ。

そんなことを考えていると、コンコンと、扉をノックする音が聞こえてきた。

恐らく、報告書で聞いた援軍の指揮官と言ったところか・・・。


「どうぞ」


私がそう言うと、懐かしい声が聞こえてきた。

「ティナちゃ~ん」

と、明るい声で勢い良く入って来た小柄な女の子は私の同期、大帝国最強の魔導武装白兵戦部隊

第八魔導武装白兵戦連隊隊長、アルフィナ・カルヴァートン少将だ。

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