第16話:戦闘開始 ~立ちはだかる強敵~

「提督・・・ご武運を」


王獣魔導隊と超重装粉砕突撃騎兵師団が敵に目視で確認される距離に入ると、ティナとガルベル提督は

中央左翼と中央右翼に別れ、中央突破を開始した。

まあ、本当に中央突破を行うのはティナ達だ。

鉄壁要塞駐屯諜報部隊の情報によると、超人兵隊は右翼に陣を敷いている。

そう、中央右翼を突破するように見せかけて、超人兵隊を誘き寄せ、相手する作戦だ。

しかし、超人兵隊が我々の作戦を見抜き・・・本陣を守るように布陣してしまえば

我々の作戦は失敗し、空中からの離脱が可能だが・・・ガルベル提督率いる超重装粉砕撃滅騎兵師団は

後方の残存敵兵力と前方の超人兵隊に挟撃され・・・壊滅するだろう。

例え、王獣魔導隊の援護の下撤退したとしても、甚大な被害を負うことは避けようがないだろう。

・・・と思っていたのだが、どうやら超人兵隊は右翼前方に陣を敷いたらしい。

流石は共和国最強の部隊と言うべきか、我々の作戦行動を見抜いていたらしい。

その上・・・その作戦に乗ってくれるようだ。

大方、敵の司令本部前には手練れの部隊が布陣しているのだろう。

超重装粉砕突撃騎兵師団撃滅後、超人兵隊と本陣前の部隊で王獣魔導隊を挟撃し

撃破するつもりなのだろう。

ガルベル提督は、被害が大きくなり始めたら撤退する予定だ。

ガルベル提督曰く、45分は稼いで見せるらしい・・・。

32万もの敵の中央突破を45分以内に遂行せねばならない・・・難題だな。

しかし、皆が命を掛けている戦いだ・・・成功する見込みは十二分にある。


「・・・突撃」


ティナの掛け声とともに、第一小隊は全力で前進を開始した。

そして、第二小隊と第三小隊も第一小隊援護に動き出した。

敵重装歩兵及び騎兵師団を攻撃、第一小隊は前方の敵及び、出来る限りの魔導師を攻撃しながら

前進している。

これにより、第一小隊の脅威である重装歩兵と騎兵を第二・第三小隊が撃滅、第二・第三小隊の脅威である

魔導師を撃滅、互いの実力を生かし両者の突破力を最大限に維持する。

これが速攻作戦に置ける陸空の連携行動の絶対条件だ。

第一小隊だろうと、第二・第三小隊だろうと、敵本陣の上級将校らを一掃できればよいのだ。

協力し、突破力を生かすことだけを考えればよい。

無論、空中からの攻撃でも良かったのだが・・・幾つもの支援魔導師団が協力し結界を張った場合

ティナの超広範囲殲滅魔法くらいでしか破壊できないだろう。

しかし、そうなれば地形が大きく変わってしまう。

今後、共和国侵攻作戦を行う時に・・・大きな障害になる可能性が出てくるのだ。

特に、敵国の奥深くに侵攻するのに・・・補給線に問題を起こしてしまえば、確実に敗北するだろう。

だが・・・魔力を防御するだけの結界なら、地上戦力がその結界を通り抜けて侵攻することが可能だ。

それに、空中にいる魔導師の方に多くの者は警戒し、ティナ達地上戦力への対応が疎かになる

可能性もある。

起こりうる可能性と、今後の作戦行動のことを考え、地上戦力と空中戦力による機動性と火力重視した

作戦にしたのだ。

それはさて置き、魔導武装を施したティナ達はシェルやミラ達の援護の下、順調に中央を突破していた。

しかし、予想通り敵前線司令本部が見え始めたところで・・・強敵に出くわす。

それに最初に気が付いたのは、先程メリナ少将も警戒すべきだと言っていた者たちの一人である

双剣魔導師、神速蟷螂のエリナ・ゲイディック・スプライト中佐であった。

前方に・・・防毒面(ガスマスク)隊の存在を確認したのだ。

エリナ中佐は急いで皆に防毒面(ガスマスク)隊の存在を大声で伝える。


「前方、防毒面(ガスマスク)隊と思(おぼ)しき部隊を確認」


エリナ中佐の言葉を聞き、皆が前方を確認すると・・・確かに防毒面(ガスマスク)隊が前方

敵前線司令本部前に布陣していた。

要塞駐留諜報部隊からは敵の増援の情報は一切入っていない・・・戦力分散。

しかし・・・ガルベル提督が相手している防毒面(ガスマスク)隊よりも数が多い。

なるほど、あの女狐(メリナ)はご丁寧にも、本体を我々に向けたわけだ。

精鋭隊で超重装粉砕突撃騎兵師団を蹴散らした後、後方の部隊と前方の部隊で我々を挟撃するつもりだな。

ふむ・・・こちらに天才軍師(ミラ)がいるように、敵にも天才軍師(メギツネ)がいるわけだ。

それに・・・敵さんたちはあの女狐(メリナ)のことを余程信頼しているらしい。

完全な防御陣形を取っている。

戦力の消耗を抑えつつ、絶対に敵を突破させない陣形・・・完璧だ。

今は敵のことを褒めている状況ではないのだが・・・。


「第一小隊、そのまま戦闘を継続しておけ・・・一時的に私は離脱する、私のいない間の指揮は

 アアメル大佐に一任する」


はっ、と良い返事が返ってくるのと共に、ティナは一旦地上から離れ、空中にいる第一・第二小隊の下へと

向かう。

ティナが向かって来ていることに気が付いたミラは、一瞬で全てを察して、第三小隊に各自の判断で

魔法を行使するように伝えてから、ティナの下へと向かって飛んでいく。

察しの良すぎる親友(ミラ)に苦笑いを浮かべながら、ティナは飛行速度を上げる。

二人は、この状況をどう打開するかの話し合いにしに集まったのだ。

まあ、ここは戦場だから長々と話し合いをする訳にいかないのだが・・・。

そんなこと、ティナもミラも百も承知だ。

話し合いと言うのは語弊があるな、正しくは ティナがミラの作戦を聞きに来た が正しい。

大帝国一の天才軍師の意見を聞かない者は、愚か者だけだろう。

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