第14話:戦略の変更、戦術の精密化 ~出陣の時~

一方、ティナ達も作戦行動についてガルベル提督らと話し合っていた。

時間がないため・・・今日話し合って、明日実行する。

それ故、迅速かつ丁寧に作戦を考えなければならない。

最初、作戦は

鉄壁要塞に敵特殊専門工作部隊を釘付けにし、ガルベル提督率いる超重装粉砕突撃騎兵師団が

敵本陣に突撃、その間超人兵隊は王獣魔導隊が引き付ける。

そしてこの会議は、戦略規模ではなく戦術規模の作戦立案をするための会議だ。

しかし、ミラとガルベル提督は・・・戦略規模からの見直しを会議で提案した。

その理由は、ミラとガルベル提督は王獣魔導隊と超重装粉砕突撃騎兵師団の役割を

逆にした方が良いと考えたからである。

確かに、王獣魔導隊は遊撃部隊で機動性を保有しており、敵を引き付ける役としては

十二分に働いてくれるだろう。

しかし、それと同時に 最強の魔導攻撃部隊 でもあるのだ。

殲滅魔法や上級魔法を行使できる王獣魔導隊は、破壊力にも優れている。

機動性と破壊力を同時に備えている、それならば・・・王獣魔導隊が敵本陣に突撃したほうが

効率も良く、成功率も高くなる。

だが・・・ガルベル提督と超重装粉砕突撃騎兵師団はかの防毒面(ガスマスク)隊を相手にする

ことになる。

下手をすると、敵陣を突破するより被害が出る可能性もある。

だがある意味、ガルベル提督と超重装粉砕突撃騎兵師団を犠牲にするだけで味方全体を救える

ことにもなる。

無論、犠牲になりに行ってもらうのではない。

そういった可能性もあるというだけで、ただの可能性論でしかない。

ただ・・・そうなる可能性が高いというだけだ。

他の将校らも、この考えに賛成せざるを得なかった。

しかし、要塞砲撃魔導隊を援護に付けることをガルベル提督に約束させた。

そして、戦略の大幅変更を行った後、再び戦術について皆が話し合った。

ガルベル提督率いる超重装粉砕突撃騎兵師団は、騎兵の機動性を生かして

戦っては引き、戦っては引き、という戦術を使用したかったが、相手は遠距離攻撃用の魔道具を保有

している。

距離を置くのは愚策となるだろう。

そこで、機動力と突破力の高い超重装粉砕突撃騎兵師団の長所を利用し、敵の中央を突破

その後急速反転、分断された敵を各個撃破。

中央突破が不可能だった場合、足を止めることなく騎兵の機動力を生かしながら戦う。

超重装粉砕突撃騎兵師団の基本戦術はこうだ。

続いて王獣魔導隊だが、第一小隊は魔導武装で地上から敵本陣に侵攻、それを空中から第二、第三小隊が

援護、出来るだけ敵兵を無視し本陣に向かう。

空中からの戦闘支援と、強力な魔導武装隊による中央突破・・・速攻作戦とでも言うべきか。

まあ、王獣魔導隊は空中からの離脱も可能だ。

いざとなれば、第一小隊も空中から離脱できるだろうし・・・この速攻作戦は十分に意味と効果がある

ものだろう。

いよいよ明日が決戦だ。

要塞防衛の指揮を、防衛副指揮官に要塞司令官代理という形で委任してから

ガルベル提督らは休息に入った。

しかし、ミラ、シェル、ティナは違っていた。

確かに・・・大帝国は五つの強力な国の同盟を相手にしている。

楽な戦いなわけがない。

だが・・・これは予想以上だった。

王獣魔導隊は大帝国内は言わずもがな、各国にも名を轟かせている者もいる。

そんな部隊でも・・・戦況を好転させることが出来ないどころか、死ぬ可能性のある

博打の様な作戦を行わなければならない。

この事実に・・・一抹の不安を覚えていた。

自分が死ぬことはどうでもいい・・・しかし、ティナたちは大勢の仲間が死ぬことを恐れていた。

だからこそ、皆が休んでいる内にも・・・彼女らは戦術の見直しと、緊急時における対処について

話し合うのだ。



翌日、日も出ぬうちに王獣魔導隊と重装粉砕突撃騎兵師団は行動を開始していた。

奇襲と言う形で敵陣に乗り込むのだ。

超人兵隊は遅れを取らないように即座に行動を開始するだろう・・・他の特殊専門工作部隊もそうだ。

しかし、一般兵たちは寝起きを襲われ・・・混乱状態となるだろう。

優秀な指揮官が相手にいる以上、混乱している時間はさほど長くはないだろうが、0よりはましだ。

ティナ達第一小隊も騎馬に乗り、準備は万端だ。

ガルベル提督が要塞司令官代理に目配せをすると、司令官代理は軽く頷き兵に命令して開門する。

敵に見つからないように、裏門からの出撃である。

騎兵がギリギリ出られる高さまで上げる。

最初に門から出てきたのは、ティナ率いる第一小隊だ。

続いて、超重装粉砕突撃騎兵師団が門から出てくる。

本来奇襲を行うならば、風が強い日や雨の日が好ましい。

騎兵の立てる騒音が、風音や雨音でかき消されるからだ。

しかし・・・王獣魔導隊には重力魔法を得意とするものと、長けた者がいる。

アメリ大佐ともう二人、ソルシャ・ゾディアックとフィア・アルヴァンの二名である。

鉄針鼠のソルシャ中佐と岩打漁のフィア大尉である。

それぞれ、第一小隊と第二小隊に属している。

ソルシャ中佐は別名『重力剣士』と呼ばれており、アメリ大佐程の容量はないが、同じ

異空間保存魔法(アイテムボックス)を扱える。

そして異空間保存魔法(アイテムボックス)から取り出した 10武器 を扱って戦うのだ。

10武器、自ら振るう武器ではなく重力魔法で空中に浮かせて戦う、ソルシャ中佐愛用の武器。

ティナやアアメル大佐などの化けも・・・・強力な戦士ほどではないが、第三の強力な戦士と言っても

過言ではない。

フィア大尉、別名『人間投石器』で知られている。

本来、重力魔法というのは、工事や運搬に使う初歩的で庶民的な魔法である。

しかし、加速や強化、同時使用などによって、幾らでも化けることが出来る魔法でもあるのだ。

それはさて置き、その重力魔法を現在、奇襲に用いている。

王獣魔導隊第三小隊のバフをアメリ大佐、ソルシャ中佐、フィア大尉の三名に掛けて

重装粉砕突撃騎兵師団を騎馬ごと浮かせて運んでいる。

ティナ達第一小隊は、自らの騎馬は自らが浮かせている。

これによって、風音や雨音がなくとも奇襲の成功率が高くなるのだ。

しかし・・・ガルベル提督やティナ達は、敵が奇襲を簡単に受ける存在ではないことを理解している。

恐らく、斥候などを正門と裏門の両方に配置し、我々の動きを監視しているだろう。

だが、騎馬と人の足なら・・・騎馬の方が早いはずだ。

ヴィヴィ中佐やフィーナ少佐の様な者が、敵にいないことを祈るのみだ。

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