第11話:王獣魔導隊 ~一部経歴~

ティナは、与えられた自室でこれからの王獣魔導隊について考えていた。

即興で編成された王獣魔導隊、運用法も的確だし戦力も十分だ。

だが・・・人数が問題なのである。

中央大陸は他の大陸と比べても屈指の軍事大陸である。

実際、国力も軍事力も中央大陸内ではかなり低い共和国にすら、この有様だ・・・。

無論、大帝国には王獣魔導隊以外にも優秀な部隊や師団は存在している。

それに、現在は各国に諜報員を忍ばせ、情報操作や他国の色々な技術を盗んでいる上

軍隊の再編及び拡張を行っている。

結局、この大陸大戦は長きに渡って続くか、第二次、第三次と連続的に続くかするのだろう。

現大総統は歴代の大総統の中でも頭一つ抜けて優秀なお方だ。

人を見る目も、運も、実力も、人望もあるのに・・・全てを知っている。

欠点という欠点がないのだ。

私たち軍人が成すべきことは、大総統の成すことを大いに助け、少しでも楽にすることにある。

だが私は・・・国家とは一つの道具に過ぎないと思っている。

私は人々を守るために軍人となった・・・。

現大総統はとても優秀なお方だ。

それに、無闇に戦争をしたり、国民を苦しめたりしないお方だ・・・だから、今は・・今は

私は大総統に忠実な一軍人としてあろうと思う。

だからこそ、今は私の指揮する王獣魔導隊の隊員たちの安全を考慮した上で、敵に大打撃を

与えることだけを考えればよいのだ。

ガルベル提督の立案した作戦は今から4日後に実行される・・・時間がある、有効活用しなければな。

そう言えば、王獣魔導隊が編成されてから、一度しか隊員たちの資料に

目を通していなかったな・・・。

この4日間の間に、隊員たちのことをより深く理解するのも、これからの作戦行動などに置いて

役に立つかもしれない。

隊員32名・・・時間はかかるだろうが、何もしないよりはましだろう。

シェルやミラとは昔から知り合いだったからいいかな・・・否、軍に置いて私情は禁止だな。

最初に、シェル・メーメルズ少将についてだ。

18歳の時に士官学校に入学、魔導学、戦術学、戦略学、魔道武装、全て優良の優秀な生徒。

22歳で軍に入隊した時には、異例の少尉の階級が授けられた。

帝国との国境の間で発生したグリュンベル大河戦にて、敵将校7名の首と帝国前線司令官

オスマン・フォン・ライデリック中将の首を見事に討ち取った。

彼女の奮戦に大総統は、大帝国8色8役聖騎士の中の 白(万能) の称号を授けられた。

それ以降、彼女は大帝国の中でも精鋭と言われる第六機動魔導師団の第二大隊隊長として

その力を大いに発揮した。

そして現在、25歳という若さで少将にまで昇進し、王獣魔導隊の副隊長をやっている。

ティナはシェルの経歴を見終わると、溜息を吐いた。

自分より3歳年下の彼女がここまで優秀なのは素晴らしいことなのだが・・・性格が少しな。

そしてもう一度ため息を吐いたティナは、続いてミラ・エルヴァン少将の経歴を見る。

彼女も18歳で士官学校に入学、ミラは殆どの授業が優良だったが、魔導武装だけは全く

出来なかった。

しかし、戦略・戦術研究に置いては歴代で最も優秀な生徒と言われている。

それに、支援魔法に関しても歴代の優秀な生徒たちの成績を凌駕している。

彼女は士官学校卒業の後4年間、軍部の戦略・戦術研究科に准尉階級で配属

戦略・戦術研究科に大きな影響を与えることとなる。

しかし支援魔導師不足と、ミラの類稀なる支援魔導師の才を放って置くのは勿体ないという

ことで、大尉にまで特進・・・第三六〇支援魔導師小隊の小隊長となった。

主な戦果として、民主平等国と大帝国の戦争・・・魔導要塞の攻防戦にて、小隊という

極めて小さな規模の支援魔導隊で、2か月に渡って戦闘が発生するたびに、戦闘が終わるまで

要塞防衛魔法を掛け続けたと言う偉業及び、彼女の提出した作戦案によって、味方の損害2割

敵の損害9割という大戦果を挙げたことである。

そしてミラも、大帝国8色8役聖騎士の 黄(支援) の称号を大総統から与えられたのだ。

その後、幾度かの昇進及び特進を得て、現在は24歳という若さで少将になっている。

参謀としてこれ以上に心強い人物もいなければ、彼女以上の支援魔導師も存在しないだろう。

ミラはとても真面目な子だ・・・自分よりも仲間のことを優先して考えてしまう。

だからこそ、王獣魔導隊の皆は彼女のことを慕っているのだ。

その他、アアメル・ヴィクトス大佐は大帝国最精鋭の魔導武装白兵戦隊の副隊長で

名だたる敵の猛将との戦いに勝っており、一番の功名は世界有数の猛将である王国軍

オスウェル・フォン・モットー少将率いる超重装鉄槌撃滅中隊を、彼女率いる

大帝国魔導武装白兵戦小隊で壊滅させ、彼女自らオスウェル少将との一騎討ちにて

その首を血祭りにあげたことだ・・・。

そんな恐ろしい彼女だが、意外と器用で裁縫や料理といったことが得意なのだ。

と、王獣魔導隊の各構成員たちの資料を見ていたティナに、思わぬ来客があった。

ミラだ。ノックの音と共に入室してきたのはミラだった。


「ティナちゃ・・隊長、急いで作戦会議室に来てください」


ミラは走ってきたのか、息を切らしていた。

元々体力はない方だったが、それでもある程度の運動は出来る。

そんなミラが息を切らしていると言うことは、何か大きな問題が起きかなり急いで来たのだろう。

ティナは頷き、一瞬で身支度を整えてミラと共に急いで会議室に向かった。

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