第10話:共和国軍 ~ただの敵ではない~

「なに、それは真か」


共和国対大帝国の最前線司令本部は混乱していた。

それは、暗夜鋭刃暗殺隊の敵要塞防衛司令官暗殺失敗の報と同時に

敵が暗夜鋭刃暗殺隊以上の暗殺部隊を動かし、前線司令官であるビルスク・オリヴァ大将の

命を狙っているという情報が入ったからである。

共和国内でも屈指の暗殺部隊である暗夜鋭刃暗殺隊の任務失敗も、十分共和国軍には

衝撃的だった・・・しかし、それ以上に優秀な暗殺部隊が敵にいることが、共和国に

とっては予想外であり、最悪な情報である。

だが、大帝国に優秀な指揮官がいるのも然り、共和国にもかなりの曲者がいた。


「提督・・・この情報、少々不審な点があります」


ビルスク提督の副官である フィース・メーメル少将 であった。

前線の作戦参謀でもあり、ティナやシェル、ミラ達と比べると多少劣るかもしれないが

26という若さで少将の階級にまで上り詰めている実力家だ。

それも在ってか、ビルスク提督は彼女の意見を聞くことにする。

彼女の意見を要約すると

敵に暗夜鋭刃暗殺隊よりも優秀な暗殺部隊がいるならば、その者らをとっくに動かしている。

数的不利もあることだし、即座にビルスク提督を暗殺し、指揮系統が崩れた共和国軍を

名だたるローディッヒ提督率いる超重装粉砕突撃騎兵師団で、我々前線の上級将校を全て

殺し、自軍の被害を少なく、敵軍の被害を大きくすることによって、大勝することが

可能だったでしょう。

それに、暗夜鋭刃暗殺隊は敵に気付かれることなく要塞内に侵入できています。

それなのに、それ以上に優秀な敵の暗殺部隊が行動することを敵に悟らせるわけがない。

要するに、これは数的不利を少しでもなくしたいと考えた敵軍が流した、欺瞞情報の可能性が

高いというわけです。

ビルスク提督含め、将校らはフィース少将の意見にある程度賛同した。

無論、だからと言ってビルスク提督の身辺警護を増員しない理由にはならない。

しかし、この情報の出所を調べることによって、無駄に人員を割く必要がなくなるかもしれないし

更には、この敵の欺瞞情報を利用して、逆に敵に罠を仕掛けることも可能かもしれない。

無論、フィース少将のこの意見に反対する者はいなかった。

そして、即座にこの情報についての捜査が始まったのだ。

結局、兵士たちの間で広まったこの情報の発生源を特定することは不可能だったのだが

これにより、兵士たちの間でも単なる噂を流すことは禁忌とされ、これ以降大帝国が

共和国軍に欺瞞情報を流すことは困難なこととなった。

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