第8話:これから ~作戦~

内容は、これからの作戦行動であった。

物資の補給は乏しく、兵士たちの消耗も激しい。

長期戦にも短期戦にも向いていない最悪の状況である。

だが・・・答えは決まっていた。

ミラは参謀で前線に赴くのに向いていない、シェルは後方からの魔法支援攻撃が得意である。

ティナとガルベル提督は前線で戦ってこそ輝く人物たちだ。

そう、要塞防衛の指揮はミラとシェルに任せ、ティナとガルベル提督は打って出る。

まあ、誰も反論はしなかった。

無茶ではあると思う、しかし無茶なしに戦争に勝てるほど、大帝国に余裕はない。

そして、迅速に行動は開始された。

ヴィヴィ中佐とフィーナ少佐は本国に物資の支援要請を行いに向かうと共に

捕虜を輸送しに、即座に出立した。

ティナ中将、ミラ少将、シェル少将、ガルベル提督は作戦会議の為に、要塞内部の会議室に

その間の要塞防衛指揮官代理は、ガルベル提督の副官であり要塞防衛副指揮官でもある

モットー・フォン・ランデル中将と、第三小隊副隊長であり

王獣魔導隊の副参謀でもある 大梟のシーシャ・メメント大佐 に一任された。

超重装粉砕突撃騎兵師団と王獣魔導隊の隊員は、1週間以内には確実に実行されるでろう

作戦行動の為に、体力を残しておけ・・・つまり、休息を取っておけとの命令が下された。

王獣魔導隊の到着に、兵士たちは歓喜に沸いている・・・これで、鉄壁要塞が堕ちる可能性は殆ど

ないと言えるだろう。

さて、ガルベル提督たちの作戦会議だが・・・難航していた。

まず、敵の総数は約32万・・・こちらは、要塞防衛隊含め10万だ。

まあ、数は問題ではない。

王獣魔導隊がいる限り、幾ら数だけ揃えようと意味はない。

問題は、敵の特殊専門工作部隊にある。

味方の諜報員の情報によると、敵の工作部隊は7つ、それぞれの練度も高く難敵である。

超重装特別攻撃隊、超機動弓兵隊、小規模殲滅特化魔導騎馬隊、超重装殲滅魔導騎馬戦車隊

超広範囲支援魔法隊、攻城魔法特化隊、そして暗夜鋭刃暗殺隊である。

超重装特別攻撃隊は、王獣魔導隊も戦った大盾重装歩兵師団の上位互換である。

数こそ2百人程度だが、部隊構成は全員が身長2m、体重130㎏以上、巨漢のみで構成されている。

通常の何倍も厚い装甲服に、大盾重装歩兵師団と同じ大盾を 片手 で持ち上げ、もう片方の

手では、通常の2,5倍の大きさの大剣を振り回す。

その一撃は、岩すらも粉砕するほどだ。

欠点としては、一切の機動戦に参加できないことだ。

整備や輸送もかなりの負担となるが、前線に立ち、先陣を切ることと

味方の盾になることに関しては、最強の部隊と言っても過言ではないだろう。

更には、装甲服のせいで魔法も効きにくくなっている点も、かなり厄介である。

超機動弓兵隊、正に狩人の称号に相応しい。

百名の部隊員は皆が軽装であるが、踊り子の様に軽やかに戦場を駆け巡り、狩人の如く

獲物を狩る時は一瞬であり、判断も早い。

実際、彼らに殺された味方の魔導師の数は計り知れない。

欠点としては、近接戦が不得意なのと、重装歩兵、結界を張った魔導師への攻撃が

一切通じないことだ。

小規模殲滅特化魔導騎馬隊、その名の通り小規模殲滅魔法に特化した魔導師が、騎馬に乗り

機動力と殲滅力を有する魔導騎馬隊となった訳である。

数は2百そこそこだが、それでも厄介な敵だ。

機動性と殲滅力を保有したこの魔導隊は、王獣魔導隊程ではないが、恐れるに足る敵ではある。

欠点としては、馬上からによる魔法の行使により精密性が低下することと、重装備を纏うことが

出来ないため、些か防御面に不安を覚えること・・・なにより、機動性を生かすため

味方の支援魔法を受けることが出来ないのが、殲滅魔導師達からすれば問題である。

超重装殲滅魔導騎馬戦車隊・・・数は80程度、しかしその重装はある程度の魔法なら

防いでしまう。

更には、騎馬戦車隊の名の通り、重装甲・高火力・高機動、相手にしたくない要素が全て

含まれている。

敵の特殊専門工作部隊の中では最も数は少ないが、その分とても強力な部隊となっているのだ。

実際、防衛だけでは埒が明かないと言って出撃した鉄壁要塞駐屯軍は、その殆どが

超重装殲滅魔導騎馬戦車隊にやられている。

欠点は、高機動と言っても直線に限る所だ。

急な右左折や停止は不可能、無理に実行すれば転倒して自らが戦車の下敷きになって

死んでしまう。

それに、騎馬自体にはそこまで重厚な鎧は纏わせられない。

騎馬を狙うのも、一つの手段となるであろう。

超広範囲支援魔法隊は、その名の通り超広範囲に支援魔法(バフ)を掛ける。

具体的には、200人の部隊で約4万人程度に支援魔法(バフ)を掛けることが可能だ。

質も高く、彼らの支援魔法(バフ)を受けた者達は、鬼人がごとき闘い振りに豹変する。

欠点としては、支援魔法に特化した彼らには 自衛 の手段が一切なことだ。

攻城魔法特化隊は、攻城魔法・・・要するに、威力が高く範囲の広い攻撃魔法に特化した

者達だ。

数は精々百程度である。

欠点としては、機動力も有さなければ防御力も有さない。

魔法の精度も低く、対人用には適さない。

しかし、攻城においては類を見ないほどの働きを見せる。

最後に、もう捕縛され事実上なくなった部隊だが、暗夜鋭刃暗殺隊についてだ。

先程のことでもあるが、10万の守備兵の目を搔い潜り要塞の指令室まで侵入した

見事な手際、自殺も恐れない強い意志、洗練された連携行動。

恐ろしい暗殺部隊だ。

ヴィヴィ中佐やフィーナ少佐が遅れていれば、死んでいたとまでは言わないが、ガルベル提督も重傷を

負っていただだろう。

まあ、暗夜鋭刃暗殺隊のことは抜きとして、敵の特殊専門工作隊と敵本隊の32万をどう

相手するかだ。

特に、特殊専門工作隊を野放しにしていると、何を仕出かされるか分かったものではない。

しかし、ここでガルベル提督から意外・・・無謀な提案がされる。

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