第3話:精鋭対精鋭 ~魔導隊の初陣~
共和国精鋭師団についてだが・・・。
どの部隊も、大盾兵と魔導士の混合部隊だ。
だが、彼らの年齢は皆34以上である。
そう、長年の戦争を経験し、生き残ってきた猛者たちだ。
指揮官も上級将校と、かなり階級の高い者が執っている。
王獣魔導隊も経歴的には同等だったが、索敵戦で勝ったのは共和国軍だった。
まあ、王獣魔導隊が空を飛んで移動していたのも、先に発見された原因の一つではある。
と言っても、発見の差はたった7秒、大きな差はない。
しかし、その7秒の間に共和国精鋭師団は陣形を整え始めていた。
「騎馬魔導戦車隊は分散、行進間射撃を行え・・・それ以外は、いつも通り防衛魔導師と
大盾重装歩兵師団を前方に、主力魔導師団を絶対に守れ、騎兵師団はいつでも動けるように
準備をしておけ」
的確で素早い指示、そして素早い行動によって完成される陣形は見事なものである。
そんな共和国精鋭師団を他所眼(よそめ)に、王獣魔導隊は飛行速度を落とし、金獅子の文様の入った
旗を掲げ 『我らが大帝国』 国歌を合唱しながら共和国精鋭師団にゆっくりと近づく。
共和国精鋭師団はこれを挑発行為と受け取り、直ちに攻撃を開始した。
しかし、王獣魔導隊の第三小隊が張った結界を破壊することは叶わず
ただただ・・・王獣魔導隊を見上げることしかできない状況になってしまった。
そして、国歌を歌いを終わった王獣魔導隊は、第二小隊の連携の取れた大魔法によって
敵騎馬魔導戦車隊を一瞬にして壊滅させた。
「なっ、密集陣形、大盾重装歩兵師団をさらにバックアップしろ、敵は生半可な魔導師では
ないぞ」
流石の上級将校と言うべきか、的確で正しい判断を行う。
しかし、それもティナの計算の内であった。
ティナたちは地上に降り、迅速に予定通りの作戦行動を行った。
第一小隊と第二小隊は、魔法弾(初級魔術)による制圧射撃を開始する。
初級魔術とは言え、帝国最強の魔導士たちが放つ物は、並みの魔導師が行使する中級魔法の
威力を軽く凌駕する。
彼らの在り得ない威力の弾幕に、共和国精鋭師団は結界を張って凌ぐことしかできなかった。
そして、王獣魔導隊第一・第二小隊の制圧射撃が終了すると・・・共和国精鋭師団の目の前
信じがたい光景が広がっていた。
石材を積み上げ、固定しただけの物だが・・・確かにそこには、小さな要塞があった。
小さいと言っても、直径20mのそれなりの規模である。
第三小隊によって、石材には魔力防護効果が付与され、並の魔導師の攻撃では微動だに
しない。
さらに、第三小隊のバフを受けた第二小隊が、要塞砲撃魔導隊として布陣し
又、第三小隊のバフを受けた第一小隊は、蒼白色の魔導武装(自身の魔力で、魔結晶
媒体にして作り上げた、質量のある鎧と剣、盾など)を纏い、まるで神話に出てくる騎士の
如く共和国精鋭師団の前に立ちはだかる。
まさに・・・天使、空から到来し、圧倒的な力で騎馬魔導戦車隊を撃滅・・・その後
圧倒的な弾幕を張り、共和国精鋭師団を圧倒、今は・・・神話に出てくる最強の騎士団の
如く、共和国精鋭師団の前に立ちはだかっている。
彼らは、迅速に行動を開始した。
恐怖、それを真に感じた戦士は、信じられないほどに素早く行動を開始する。
「騎兵師団は突撃、敵先頭集団を押さえるんだ。大盾重装歩兵師団は全力で攻撃を防げ
でないと死ぬぞ、魔導師団は支援魔導師は最大のバフを主力魔導士師に、分かってるな
殲滅魔法を使え、奴らは本当にやばい」
指揮官の命令に、一人一人が迅速に行動する。
それに合わせて、王獣魔導隊も攻撃を開始する。
第二小隊は、精密魔法弾を絶え間なく打ち続け、敵の大盾重装歩兵師団の行動を大幅に
抑え込む。
魔導師の援護も、大盾重装歩兵師団の援護もない騎兵師団は、それでも一直線に
ティナたち第一小隊に目掛けて突撃する。
彼らは恐れているが、騎士としての誇りを忘れたわけではないのだ。
雄たけびを上げて、ティナ達第一小隊を撃滅せんと、味方同士で鼓舞し合っているのだ。
「・・・白兵戦用意」
ティナのその一言に、第一小隊の皆は剣を構える。
さあ、大帝国内で最も強い 魔導白兵戦隊 のお披露目だ。
巨大な何かで風を切り裂く音が聞こえた次の瞬間、数人の騎兵が真っ二つに斬られていた。
ティナの一撃である。
他の隊員の2倍以上はある大剣、無論盾は持っていない。
しかし、その大剣は盾としての役割も十二分に担ってくれるだろう。
ティナのありえないほどの、馬鹿力に騎兵師団は恐怖してしまった。
ここは戦場だ。
動きを止めた騎兵はいい的、王獣魔導隊第二小隊の良い的となった。
無論彼らも無能ではない。
右翼と左翼に別れ、要塞とティナ達を取り囲むように布陣していく。
集中砲火の分散と、包囲殲滅を狙った戦術行動だろう。
ティナたち王獣魔導隊は人数が少ない。
包囲せんとする敵騎兵師団を食い止めることは不可能だ。
しかし、彼らは自分たちの判断が間違っていたことにすぐ気が付く。
円形に布陣した騎兵師団、大盾重装歩兵師団や精鋭魔導士団が布陣している本陣側の
守りが薄くなってしまった。
無論、彼ら王獣魔導隊がその薄くなった部分を見逃すはずもなく、第一小隊は
ティナの突撃の命令と共に、一挙に敵本陣に向けて突撃を開始する。
敵騎兵師団も、後方の大盾重装歩兵師団と精鋭魔導師団を信じて、シェルたち守る要塞に
突撃を開始する。
圧倒的な機動力と数を誇る敵騎兵師団、更には包囲されているこの状況、明らかに敵騎兵師団が
優位なように思えるだろう。
だが・・・周りに味方がいなくなったシェルたちは、遠慮する必要がなくなった。
要するに、中級魔法や上級魔法、なんなら小規模殲滅魔法を行使してもなんら問題ないと言う
ことだ。
「多段式貫通魔法用意」
シェルのその一言を聞き、即座に要塞各方面に第二小隊は移動する。
第三小隊は、ミラ以外は第二小隊への強化魔法準備の行動を開始する。
一方ミラは、要塞にかけられた防御魔法の維持及び強化をたった一人で行う。
この王獣魔導隊の唯一の欠点は、その数にある。
30名程度のこの小規模部隊、一名でも戦死者が出れば、今後の作戦行動に大きな支障が
発生する。
各小隊長の能力が異常に高いのも、部隊全体の柱として活躍してもうらうためだ。
そう、その中でも 何がこの部隊にとって一番有益になるか を誰よりも理解できるのは
参謀である・・・ミラなのだ。
そうこうしている内に、敵騎兵師団は要塞に攻撃を開始していた。
しっかりとした固定もしておらず、柱などの支えもないこの要塞は、長時間の防衛には
向いていない。
だから、一番の防衛方法は・・・
「攻撃開始」
敵を寄せ付けないことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます