第14話

「ワン!!」


俺は、リンファの叫びで目覚めた。

どうやら、襲撃を受けているらしい。


「起きろ、キファ。」


キファを起こして、用意させる。

その時、闇からさっきを感じる。感じた方へ剣を振る。感触はない。

大急ぎで、ボォーにまたがり出発する。

追ってくる、足跡は聞こえない。


「ワン。」


「分かった。このまま進む。」


少し距離をあけて、


「どうだ?」


「ワン。」


「そうか、追ってきてないか。」


「襲撃を受けたんですか?」


「受けそうだった。リンファが気が付かなかったら死んでた。」


「このまま逃げるんですか?」


「いや、戻って殺す。」


「えっ?なぜですか?」


「相手は俺たちを襲わなかったのは相手に決め手がなかったからか、人数が少なかったからだ。」


「はい。」


「しかも、ここで逃したら明日も襲撃されるかもしれない。」


「なるほど、それで殺すんですね。」


「こっちにはリンファがいる。夜に人間はウルフには不利なんだ。リンファは夜目が効くからな。」


「私はどうすっるんですか?」


「俺と一緒に、ボォーに乗って魔法で撹乱すればいい。」


「分かりました。」


「火魔法は使うなよ。相手にバレるからな。」


ーーーーーーーー

さっき、襲われた場所にリンファの指示に従って近づく。今度は俺たちが襲う形になる。

相手は、武器を持っておらず3人。さっきの殺気からある程度の実力者だと思う。


ボーが走って近づき、キファが魔法を打って相手が動揺したところに俺は竜上から切り付ける。

これでは殺せない。が体勢を崩せた。その隙に暗闇からリンファが相手の首を噛みちぎる。


これを後、2回繰り返して相手を殺しきった。


「何も持ってないな。それに服も布切れ一枚だ。これじゃあ、まるで______」


「____脱獄囚ですね。」


「ああ。今から村に戻ろう。どうやら、脱獄囚はかなり切羽詰まってるらしい。」


「ですね。戻りましょう。」


代替わりした領主とやらが他の脱獄囚を殺しにくるはずだ。それまでおとなしくしておこう。


夜通しボーを走らせた。

勇者の丘の近くの村に戻ったら休ませてやろう。

ーーーーーー

村で、脱獄した兵士たちについて聞き込みすると。

脱獄した兵士は100人を超えているらしい。どういうことだ。


「多すぎだろ。そりゃ脱獄されるわ。」


「なんでそんなに大勢を一気に投獄したんですかね?」


「何か外からの圧力があったのかもしれんな。」


「確かに、それなら分かります。」


「とにかく、少し時間がいるな。」


「そうですね。おそらく、相手は奪えるものがあったらなんでも奪いそうですから。」


「ちょうどいいし、キファに護身術でも教えるか。」


「はい、お願いします。」


俺も、身体能力と剣術の鍛錬でも真面目にするか。

村のガキどもが寄ってきたので、ついでに教えてやった。


ーーーーーーー

2週間が経過し、この事態を収集すべく、脱獄囚には懸賞金がかけられ、王都からは兵士が派遣されることになった。


「くそ、あいつらの首をとっとけばよかった。」


「ワン!」


「なるほど、自分達から狩りに行くのかそれもいいかもな。でも、懸賞金は本当に払われるのか?」


「ワン?」


「いちいち一人一人の顔なんて把握してないだろ。だから、今回は冒険者狙いだ。」


「ワン、ワン。」


「そうだ。脱獄囚を襲う冒険者と兵士を殺して漁夫の利を得る。」


懸賞金をもらえなかったらそれでいいし、もらえたら運がいい。


ーーーーーーー


「作戦は簡単。リンファに頼る。」


「いつものことですよね。」


「一刻も早く、冒険者と兵士を見つけなければいけないからな。」


「なんとなくの位置は、分かってるんでしたっけ?」


「ああ。聞いた話ではな。ついでに獲物と薬草でも採取して、キファの鍛錬の成果でも見せてもらおう。」


「やることが多いですね。」


「まあ、港町に行くついでに金儲けできたらいいだけだからな。」


「この前みたいな襲撃はないんですか?」


「安心しろ。街道に出てきた奴らはほとんど死んだらしい。今、生き残ってるのは森で隠れてるやつか、すでに他の職業に偽装したやつだよ。」


「みんなが狙ってるのは森で隠れている人たちなんですね。」


「ああ。だから、基本的に襲われる心配はない。あったとしても、いつも通りだな。」


「ですね。村や街の外で安全な場所なんてありませんから。」


港町へと歩みを進めた。

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