第10話

街に帰って


「どうするかな。」


「何がです?」


「何って、この街には二つの街道しかない。」


「ですね。」


「もう片方にはワイバーン、もう片方にはキファを攫った盗賊がいるんだぞ。」


「なるほど、身動きがとれないんですね。」


「そういうことだ。ついでに金もないし。」


「稼げばいいのでは?」


「何で稼ごうかなと。悩んでいるんだ。」


「魔物討伐がいいんじゃないんですか?」


「ワイバーンが出るかもしれないから、外に出たくないんだよ。」


「驚くほど、臆病ですね。」


「冒険者の心得の一つだな。臆病であれ。」


「じゃあ、どうするんですか?」


「二つある。」


「二つ?」


「金を盗むか、売れるものを盗むかだ。」


「最低ですね。」


「多くの人から、少しずつ盗むんだ。そしたら、問題ないだろ?」


「あると思います。」


「じゃあ、ワイバーンが討伐されるまで、どうやって食い繋ぐんだ?」


「ダンジョンに潜ればいいでしょ。」


「やめとけ。あそこは集団で入る場所なんだ。俺達じゃあ人数が少なすぎる。」


「じゃあ、普通に働いたらいいでしょ。」


「嫌だ。せっかく冒険者になったんだ。」


「じゃあ、どうするんですか?」


「一つだけある。」


「それは?」


「商隊について行くんだ。」


「なるほど。それなら、お金ももらえて、安全に道を進めますね。」


「ああ。問題は俺が子連れだと言うことだな。」


ーーーーーーーーー

ワイバーンが出る道を進む予定の商隊があったので、それに護衛として、入れてもらった。

リルファがいたのと、俺が走り竜を持っていたからすんなり承諾された。


「いろんな人がいますね。」


「まあな。商隊は自分で護衛を雇えない奴らが、まとまって動くんだ。」


「だから、商人以外もいるんですね。」


「ああ。お前みたいな子供もいる。」


「ワイバーンが出たらどうするんですか?」


「こいつらを囮にして逃げる。」


「酷いですね。」


「それに関しては、こいつらに運がないとしか言えない。街の外に出るってことは常に魔物の脅威に晒されるってことだ。」


「護衛として雇われたのに?」


「もっと金を積んで、いい冒険者を雇えなかったこいつらが悪い。」


「薄情ですけど、一理ありますね。」


「俺が、ワイバーン倒せるぐらい強くなったら、いつかちゃんと護衛するさ。」


ーーーーーー

ワイバーンは出なかった。

代わりに数回、魔物の襲撃があっただけだ。


「出ませんでしたね。」


「賢いワイバーンなんだろ。少人数しか狙わない。」


「怖い魔物がいるんですね。」


「だな。」


それにしても、商隊に合わせて、進むのは疲れた。遅すぎるからな。お腹が減っても狩に行けないし。自由とは程遠い。

学べたことといえば、野営の料理ぐらいだな。


それから、俺は、酒場に行き情報収集だ。

ブトウの名産地が近いからか、酒が美味しくて安かった。


ーーーーー

翌日


「それで、全財産無くなったと。」


「全部ではないぞ、少し残ってる。」


「これからどうするんですか?」


「お金に関しては問題ない。稼げる話を聞いたんだ。」


「なんですか?」


「この街の近くに葡萄の名産地の村が近くにあるんだ。」


「それで。」


「その村から、街へと運ばれる間によく盗賊が出るんだ。」


「なるほど、護衛をするんですね。」


「盗賊を狩る。ついでに護衛する。」


「そうですか、、、。」


「不服か?」


「危ないじゃないですか。」


「そうでもない。俺は走り竜を持ってるんだぞ。」


「でも、自分達より足が速かったらどうするんですか?」


「弓矢とキファの魔法で邪魔する。」


「単純な作戦です。」


「冒険者なんだぞ。行き当たりばったりがいいんだ。」


「長生きしませんね。」


「長生きしたかったら、村から出ないだろ。」


「確かに、そうですね。」


ーーーーーーーーーーー

街から葡萄の名産地への村へ帰る商人の護衛を任された。


「ジンだ。よろしくな。」


「はい、ブンジュです。この度は護衛依頼を受けていただきありがとうございます。」


「そこまで畏まったことはいらない。」


「ありがとうございます。ジンさん達程の優秀ある護衛を雇えるなんて。」


「行きはともかく帰りの護衛代は安くしたいもんな。しょうがない。」


「それにしても、走り竜を持っている冒険者も珍しいですね。」


「まあな。走り竜は何かと金がかかるからな。一つの場所に長くいる冒険者には無用の長物だろうな。」


「ですね。そちらのフードの方は、娘さんですか?」


「いや、小人族の魔法使いだ。人見知りであまり喋らないんだ。」


「そうですか、数日間ですけどよろしくお願いします。」


ペコリとキーファは頭を下げる。

リンファと走り竜のボーがいることは、評価が高い。

5人分の護衛代を2人分に減らせるからな。


特に盗賊の襲われることなく村に着いた。



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