第9話
「エルフの隠れ里ね。どこにあるんだ?」
「分かりません。なんとなくの場所なら分かりますが。」
「それは大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思います。」
「まあ、急ぎの旅じゃないしいいけどな。水の属性魔法も使えるみたいだし。」
「逆に旅しててなんで使えないんですか?」
「属性魔法の才能はからっきしなんだ。それに、使えなくても生きていけるしな。」
「才能ないんですね。」
「まあな。」
「あれ?言い返さないんですか?」
「言い返しても魔法が使えるわけじゃないしな。」
「どうやら理性的な変態のようですね。」
この生意気なエルフの名前はキファ。子供だから生意気なのか、それともそう言う性格なのか。
「顔の傷はどうだ?」
「治ってきてます。」
「そうか。」
キファを前に俺が手綱を持って、走り竜のボーに乗っている。
「臭いです。あまり近寄らないでください。」
「服に匂いが染みついちゃってるのか。新しいの買わないとな。」
「私の分も買ってくださいよ。」
「ああ。その耳が見えないようにしないとな。」
「当たり前です。耳が見えたらまた、襲われます。」
「ワン。」
「そうか、もうそろそろ街に着くのか。」
ーーーーーーーー
「やめとけよ坊主。ダンジョンなんて死にたがりのいくところだぜ。」
「危ないんですか?」
「ああ。昨日英雄だったやつが次の日には死んでいる。それがダンジョン。
成功すれば、一攫千金かもしれんがほとんどの冒険者は失敗する。」
「それは、なぜ?」
「足を引っ張り合うからだ。かといって、少人数でいったら養分になるだけだ。」
この街にあるダンジョンについて酒場で情報収集していると、十中八九こう言う答えに行き着く。
聞けば聞くほど、自分達には早い世界なのだと。
「お酒臭いです。」
「情報収集のためだ、しょうがない。」
「本当ですか?」
「本当、本当。というか子供なんだからもう寝とけ。」
ーーーーーーーーーー
紙と鉛筆を買った。
冒険を記録しないといけないからな。
「字、書けるんですか?」
「書けないし、読めない。けど、絵が描けるからな。」
「教えてあげましょうか?」
「いいのか?」
「いいです。今の私には対価がありませんから。」
「子供らしくない答えだ。お菓子でもあげよう。」
俺は屋台で売っていたアップルパイをキファに渡す。
「なんですかこれは?」
「食べてみろよ。」
キファは恐る恐るアップルバイを食べる
「っ!?」
「どうだ?」
「まあまあですね。」
そう言って、キファはアップルパイを丸々一つ食べ切った。
「お菓子は1日ひとつだからな。」
ーーーーーー
特に街でやることもないので(ダンジョンが怖い)、街を出て、キファの指示に従って、道を進んでいた。
「ワン。」
「そうか、尾行されていないのか。」
キファを取り返そうと盗賊が追いかけてくると思ったんだが、そんな奴らでもなかったようだ。
「ワン。」
「用心のしすぎってほどでもない。事情が分からんからな。」
「ワン。」
「相手は子供だぞ。俺に捨てられないように必死なのさ。」
「ワン。」
「だな。」
「あの、何を話しているのか、大体わかるのですが、それは私のいないところでやるべきでは。」
「別に聞かれても問題ないからな。」
「ムカつきます。」
「そうか。じゃあ、一人で家まで帰れるのか?」
「それは、難しいですが、、、。」
「ところで、キファは何で捕まってたんだ?隠れ里に住んでるんだろ?」
「外の世界が見たくて。つい。」
「じゃあ、帰っていいのか?」
「いいんです。私にはまだ早いと思いましたから。」
「確かに。後、5年はいるな。」
「そんなにいりません。後、3年で十分です。」
「何でだ?」
「私の職業は上級魔法使いですから。」
「エルフで上級魔法使いか。才能だな。」
「同年代で負けなしです。」
「じゃあ、今回はいい経験になったな。」
「そうですね。具体的に何が必要か分かりましたから。」
「そうか。それはすごいな。」
キファは話していて分かるが、頭のいい子だ。
才能もある。俺が、でかい顔できるのは、今くらいだろうな。
「ワン!!」
「マジか。ボー、全力で逃げるぞ。」
「ボォー!!」
リルファが言うには、この道の先にワイバーンがいるらしい。
早く逃げて、街に帰らねば。
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