第30話 広がる開拓村の輪
「くああ……眠い……」
翌朝、僕が起きたらリビングテーブルでうつ伏せになっていたお父さん。
あ、お父さん帰ってきてたんだね!
「おとーさん!おかえりなさい!」
「オ帰リナサイ!」
後から起きてきたナーシャとアルが、僕より先にお父さんに駆け寄って行ったんだ。あ、先越されちゃった。
「お!ナーシャ、アル、ただいま!」
ナーシャとアルを抱き上げて返事をするお父さん。僕も遅れたけど、お父さんに抱きついてお迎えしたよ。
「おかえり!お父さん!」
「お!クレイ、ただいま!クレイ、俺がいない間頑張ったなぁ」
お父さんに頭を撫でられながら褒められちゃった!
えへへ頑張ったもん!
僕がニコニコしていると、ナーシャもお父さんに嬉しそうに報告し始めたんだ。
「おにいちゃんすごいんだよ!」
「ゴ主人ノ成果ヲ是非見テ下サイ!」
アルからも言われたお父さんはナーシャを片手抱っこしたまま、僕の頭をわしゃわしゃしながら褒めてくれたんだよ。
「おう!あらかた見てきたぞ!凄い村になってきたなぁ!」
「お父さんの為に頑張ったんだもん!」
「ありがとうな、クレイ」
そう言って、お父さんは僕まで片手で抱き上げてくれたんだよ。僕とナーシャは、お父さんが無事に帰って来た事も含めて嬉しくてね。笑い声を上げながらまたお父さんに抱きついたんだ。
そんな僕らの様子を笑って見ていたお母さん。朝食が出来た事を教えてくれたよ。
僕らを優しく降ろした後、一緒にご飯を食べるお父さん。朝食を僕らと一緒に食べてから、ひと寝するんだって。
でも、食事が始まったら、お父さんの表情は真剣でね。僕らに夜中の集会で決まった事を教えてくれたんだ。だから僕らも静かに聞いていたんだ。
お父さんの話によると、どうやら安全の為にまた集まって生活する事になったんだって。でも、パニックルームの箱庭じゃなくて、今度は高級旅館シェニにしたんだって!
「正直あそこは凄いな……うちの村とドボルグの村の全員が入ってもまだ余ってるぞ」
少し呆れながらも言うお父さん。僕とナーシャは思わずハイタッチしたよ。やった!泊まってみたかったんだよね!
そんなお父さんが僕らに釘をさしたのは、女子供はコモンスペースシェニと各箱庭の扉以外はしばらく外出禁止だって言う事。
これに関してはすんなり受け入れたよ。だって普段と変わらないんだもん。それに、ドボルグさん達に色々教えなきゃいけないからね!
そして各箱庭で引き続き作業はするけど……とりわけ僕と海の箱庭の扉の代理管理者は、しばらく村の防衛力を上げる事をお願いされたんだ。
「今出来ている二重囲いは魔物対策だろう?今度は人対策だ。出来たら城壁の作成を頼む」
ゲートインアウェイの存在も知った事で、お父さん達自警団から依頼が出たんだって。うん、僕も頑張るよ!
そしてね……
「他の領地ではあるが、サッドの開拓村も助けたい」
お父さんが真剣な表情で言うサッドさんってね。お父さんが領地をもらって開拓村を作るにあたって、色々教えてくれた村でね。
村というより、町に近いくらい大きい村。ドボルグさん達の村と反対方向にある村だよ。サッドさん盗賊か?って見た目だけど豪快な人でね。僕も大好きなんだ!
でも3百人以上の村人達が、小さな僕らの村に来たがるかな?
「サッドの村に関しては、既にベルグが伝令に走ってくれている。箱庭バーチャル錠だったか?あいつさえ着けば、扉で行き来出来るようになるんだろ?」
そっか、お父さんはまだみた事なかったっけ?ん?ドボルグさんの村に繋がっているパニックルームの箱庭の扉はみたんだね。うん、わかった。マスターキーで繋げてみるよ。
ここまで話たら、流石に限界が来たお父さん。「サッドが来たら起こしてくれ」って部屋に向かって行ったんだ。お母さんもお父さんの付き添いで一緒について行ったよ。
「ナーシャ。お父さんを少しでもゆっくり眠らせたいから、僕らはすぐに箱庭の扉に向かおうね」
「うん!わかった!」
元気に返事してくれたけど……声大きいんだよね、ナーシャ。
お皿を片付けて、しっかり歯を磨いて箱庭に向かった僕ら。そんな僕らの目の前には……ガーデニングの箱庭の仲良し四人組が飾った、花と緑で溢れる村の居住区。
すっかり村らしくなったなぁ。
感慨深く思うと同時に、より一層守る決意を固めた僕。
ナーシャとアルを先にコモンスペース・シェニの箱庭の中に入らせて、僕はドボルグさん達の様子を見に行ったんだ。
あ、ちょっと覗くだけだよ。
パニックルームの箱庭の扉は、ずっとドボルグさん達の村に繋げたままだったからね。チラッと覗いてみたら、広場の奥の村の方では既に動き出している村人達。
昨日ブラムさんに言われて、マジックボックス10個出したんだよね。実は家ごと持って来てもらうんだって。だから、当座の用意をして、準備が出来た家から収納しているみたい。
うわぁ、家が無くなって行くのって不思議……
最初は壊す案が出ていたドボルグさんの村。残しておくと盗賊の棲家にも活用されちゃうからだって。
でも、やっぱり自分の住んでいた家が壊されるのって辛いからね。うん、これはマジックボックス様様だね!
「お!クレイか。おはよう」
覗いていた僕の姿が見えたのか、広場で統括していたドボルグさんが声をかけて来てくれたんだ。ドボルグさんが一緒なら良いよね、と思って僕も扉を潜って挨拶しに行ったんだよ。
そんな僕に「仕方ねえな」と笑いながら見守る許可をくれたドボルグさん。村人達も気付いてくれて、みんな僕に挨拶したり、高級旅館シェニの凄さを語ってくれたりしてね。僕の周りにはあっという間に人だかりが出来ちゃった。
うんうん、シェニすっごい綺麗だよね!あ、温泉も入った?気持ち良かったでしょう!え、ベッドがフカフカだった?うん、アレと同じの作るからね!
ドボルグさんの村人達と楽しく話をしていると、急に僕の目線が高くなったんだ。
「こーら、クレイ!早速言われた事破ってどうする?」
どうや僕はブラムさんに抱き上げられたみたい。ごめんなさい、と謝る僕を見て、苦笑いしながら軽くデコピンをするブラムさん。
「全く迎えに行って姿が見えないと思ったら、こんなところにいるんだもんな」
どうやらブラムさん僕を結構探したみたい。いつベルグさんから連絡がきても良いように、シェニで待機していて欲しいんだって。
それもそっか、と思っていたら……
『クレイ〜!この頑固親父にわからせるから、許可くれ〜!』
あ、噂のベルグさんから連絡来た!
早速鉱山の箱庭の中にいるダウロさん達に許可を貰って、ドボルグさん達も一旦僕らの開拓村に帰って来てもらう事にしたんだ。
全てを確認し終えた後、箱庭バーチャルキーを出して許可を出す僕。するとすぐに鉱山の箱庭の扉とサッドさんの村が繋がったんだ。
そして、パニックルームの箱庭の扉と鉱山の箱庭の扉を同期させる僕。同期が終わりガチャッと開くと……
「な!なんだこの扉⁉︎って言うかクレイにブラム⁉︎」
ほらな、と言う自慢気な顔のベルグさんと、驚いて腰を抜かしているサッドさんの姿があったんだ。でもね、他にも驚きの声や悲鳴も聞こえたんだ。
え?此処って……
「どーよ!みんな!俺が嘘つきじゃない事がわかったろ?」
ベルグさんが壇上でサッドさんの村人達に大声で伝えていたんだよ⁉︎
えええ!此処ってサッドさんの村の広場のステージじゃん!ベルグさん、いきなりみんなに披露って聞いてないよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。