第29話 またもや問題発生!

 お父さんとのチームゲートホンが終わってすぐに、今度はブラムさんに連絡を取った僕。


 『どうした?クレイ』

 『ブラムさん!お父さんから緊急のチームゲートホンが届いたんだ!今から僕の家に来れる?』

 『……!わかった、すぐに向かう!』


 僕が呼び出した時、ブラムさんは丁度寝る前だったみたい。すぐに着替えて僕の家に来てくれるんだって!勿論お母さんも一緒に起きてくれているよ。ナーシャとアルは熟睡中だけどね。


 リビングでブラムさんを待っていると、コンコンッと玄関のノックが聞こえて来たんだ。


 『クレイ、ブラムだ。ついでにゼンとベルグも連れて来た』


 あ、ブラムさんだ!ゼンさんベルグさんは、今日の夜の見回りかな?大人が増えるのは有難いや。


 お母さんが扉を開けて3人を中に入れると、ブラムさんは僕の顔を見て早々にこう言ったんだ。


 「クレイ!もしかして隣国グロッシーが動いたのか⁉︎」


 ブラムさんの言葉を聞いて、一気に真剣な表情に変わったベルグさんとゼンさん。


 「うん!お父さんの話だと、開戦宣言が通達されたんだって!」

 「くそっ!やはりか!」

 

 当たってほしくない報告だったのか、悔しそうな顔をするブラムさん。因みにグロッシー国って、この開拓村の森を挟んだ隣の国なんだ。位置的にこんな感じだよ(携帯で見る人は横の画面にしてみてね!)

     

        ↑

     辺境の街・王都方向     隣の領地

             森森 ・ドボルグさん    

             森森森森 の開拓村  

 森森森  ・お父さん  森森森森森森     森森

 森森森   の開拓村  森森森森森森森森森森森森森

 森森森         森森森森森森森森森森森森森

 森森森森       森森森森森森森森森森森森森森

 森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森

   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森

 

        グロッシー国


 あ、縮尺は気にしないで!大体こんな感じってわかってくれたらいいんだ!


 でも、お父さんの領地の森を隔ててすぐがグロッシー国なんだよ……!


 森は結構深いんだけど……開戦したら、僕らの村が1番に被害を受ける事間違い無しだよ……!


 「クレイ!国はなんて言ってたんだ?グレイグはなんと伝えて来た?」

 

 状況を理解したゼンさんは、僕に聞いてきたけど……


 「あのね……お父さん言ってたんだ。『国は俺たちを見捨てた!辺境の街には応援は頼んだが、期待は出来ない』って…… 」

 

 僕がお父さんの言葉を伝えたら、とても重い沈黙が流れたんだ。そしてため息を吐いたブラムさんが、僕にもわかるようにこの国の事を教えてくれたんだけどね……


 現在僕らが住んでいる国は、ヘーベル国っていう王政の国なんだよ。現在の王は、穏やかな王として知られているんだけど……でも裏を返せば優柔不断なんだって。


 争い事は極力避けたい王らしくって、強い領主達を王都周りに集めて自分の身だけは守る保身の王って裏では言われてる。


 そんな王だからこそ、いざ戦いになったら自分の領地は自分で守る様に言ったんだろうだって。


 それに対して、敵国のグロッシー国は同じ王政だけど、現在の王は賢王っていわれているんだって。その賢王が、何故このヘーベル国に開戦宣言したのかって不思議だよね?


 どうやら不可侵協定を破った事が原因だって。

 

 え?もしかして僕らが開拓した事?


 「いや、森の開拓の件は関係無い筈だ。不安要素ではあるけどな。だが、決定的なのはグロッシー国の辺境の港街を落とした事だろう。塩の利権問題で前回も争ったところだが、何故今頃になってそんな行動を取ったのか……⁉︎」


 僕が呟いた事を否定しながらも、頭を抱えるブラムさん。


 実は、僕らには言わなかったけど、今回お父さん達は開拓報告というより、王都に陳情を伝えに行ったんだって。それが最早切り捨て宣言されるとは思ってなかったけど。


 でもそっか……!この村では僕の海の箱庭の扉があるから、僕自身塩の事情は知らなかったんだよね。


 更にブラムさんに聞いてみると、うちの国は周りを他の国に囲まれた内陸の国なんだって。特に何か特色があるわけでもない通過点の国。


 ただでさえ弱い立場なのに、通行料の値上げが最近頻繁になってね。商人がうちの国に寄り付かなくなって、塩も手に入り辛くなっていたんだって。


 ……うん、僕が聞いても詰んでるよ。この国。でも、それなら尚更どうすれば良いんだろ。


 ……悪いのはこの国。グロッシーは当然の権利として報復に来ている。でも被害を受けるのは僕らだ……!


 最悪僕らは箱庭に避難すれば良い……でも、その分他の街が襲われるし、助かったとしてもその後はどうなる?


 既に、この国からは切られた。

 

 隣の国と話し合いってできないのかな?って思った事を言ってみたんだけどね。


 「クレイ……そうすると、俺達を人質にお前が使い潰される。俺達がそんな事で生き残って嬉しいと思うか⁉︎」


 真剣な表情で僕の事も考えてくれているベルグさん達。お母さんもベルグさんの言葉を聞いて、僕の事をぎゅっと抱きしめてきたんだ。


 ……そうだよね。この村の人達は誰一人だって見捨てない!

 だったら……


 「ねえ、ブラムさん。予想でいいんだ。グロッシー国がこの村を攻めて来るのは後何日後?」

 「……宣言をした後で準備したとしても、おそらく二週間以内。早ければ一週間以内だろう……」

 

 思ったより早い……!


 僕はすぐに箱庭バーチャルビューを出したんだ。いきなり僕の目の前に、三枚のスクリーンが出てきた事に驚くベルグさんとゼンさん。二人にはまだ見せてなかったからね。


 現在の僕のステータスは……


 クレイ・リーガン 5 男

 HP 450

 MP 800/800

 SP 4130

 スキル 箱庭ゲートキーパー〈レベル8.5〉 

     生活魔法 箱庭錬金 ゲートインアウェイ

 称号  異世界転生者 時空神の祝福


 うん!やっぱりSP増えてる!ドボルグさん達123人分もちゃんと加わっているから、1日の増加SPは1720になる筈!って事は……


 「ブラムさん、みんな!箱庭化に賭けてみない⁉︎」

 

 僕の発言に、バッと顔を上げるブラムさん達。


 僕は箱庭化についてもう一度説明したんだ。そして、もしかしたらレベルアップで何かが変わるかもしれない事も。


 「箱庭化にSPは1万必要だけど、残りは約6千!後4日で貯まるんだ!正直、僕にはこれしか思いつかないけど……でもみんなで力を合わせればなんとかなるかもしれない!ねえ、みんなで最後まで足掻いてみようよ!」


 僕の思いが伝わったのか、お互いに目を合わせるブラムさん達。誰よりも先に僕に応えてくれたのは、やっぱりお母さん。


 「ええ、勿論よ。もう国に踊らされるのは沢山!私達の手で、私達の未来を掴みましょ!」


 ぎゅっと僕を抱きしめながら、同意してくれたんだ。すると、ポンッと僕の頭に手を置くブラムさん。上を見上げると、少し申し訳なさそうな表情だったけどね。


 「……済まないな、クレイ。俺達はやっぱりお前の力に頼ってしまう……だがな!俺達だってやれる事はある!何よりまだ時間はある!」

 「だな!戦いなら任せろ!それにもうすぐグレイグ達も戻って来るんだろ!」

 「おい、ゼン!エースの俺がいるから大丈夫だっての!」


 ブラムさんの言葉に共感したゼンさんやベルグさんにも、やる気に火がついたみたい!


 それにお父さん達の現在地を確認すると、村まであと数時間の所まで来ていたんだ。


 馬車じゃなくて、3人共フォレストホースに乗ってきていたんだ!かなり急いで来てくれたんだね!


 その事を伝えると、俄然やる気になったブラムさん達。緊急開拓村集会を開くって言って、みんなを起こしに行ったんだ!


 そうだよね!僕らが作った村だ!

 僕らで守らなきゃ!

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