第28話 村の案内をしよう!

 あれから、恐る恐る扉を潜るドボルグさん達。


 あちらに残っていたジニー兄さんやブラムさん、フォレストホースのチャーや、グリフォンのイーグやフォンも扉を通って戻って来たよ。


 すると、ドボルグさん達の目の前には、更に広くバージョンアップした中庭の景色が広がっていたからね。


 「なんて綺麗なところなんだ……」

 「こんな事が本当にあるなんて……」


 箱庭の景観に感動して、なかなか動き出そうとしないドボルグさん達。そんなみんなを動かす為に、僕はチームゲートホンで協力要請を出したんだ。協力要請を出したのは……


 「クレイ?呼んだか?」

 「どうしたの?」


 僕の幼馴染のジェフとケインを始めとする、うちの村の年少組の子供達。


 大概の開拓村ってね、子供を本当に大事にしてくれるんだ。子供達が一生懸命案内するなら、肩の力も抜けるだろうし、質問しやすいかなぁって思ったんだよ。


 だから僕、年少組のみんなにうちの村の案内をお願いしたんだ。そしたらみんなが快諾。日頃から仕事手伝う事が当たり前だし、頼られるのってやっぱり嬉しいからね!みんなやる気になってくれてよかったぁ。


 その一方で、うちの開拓村の全員には、チームゲートホンでこう伝えていたんだ。


 『みんな!それぞれの箱庭の代理管理者の人数が増えたよ!新しい戦力やお店の店員を捕まえるチャンスだよ!しっかり自分達の仕事売り込んでね!』


 これにはうちの村人全員から『任せなさい!』って返答が来たんだ。僕の方がびっくりしちゃったよ。いきなり頼んだから困るかなって思ってたんだけど、みんなノリが良くて助かっちゃった。


 そしてドボルグさんの村人達の方は、ドボルグさんに班分けをして貰ったんだ。ドボルグさんも自分の村人達を乗せるのが上手くってね。


 「良し、みんな班分け決まったな!これから俺達の村にもなる村だ!全体を見て、働きたい場所を見つけて、自分を売り込んで行くぞ!」


 大人の村人達はその言葉で気合い十分!

 子供達も元気な声をあげていたよ。


 そうして、それぞれの班が出発していく中、僕の担当はね……


 「はーい!僕のところには、お店をやりたい人達集まって下さーい!」


 そう、僕はドボルグさん達の村でお店をやっていた家族や夫婦の案内役なんだ。因みに、新たに増えるお店はこちら!


 ・宿屋 ゴブさん(38)一家

 ・酒場 グリーさん(25)、カラさん(23)夫婦

 ・食堂 ロックさん(32)一家


 なんか本格的な村になって来たよねぇ。

 感慨深いけど、それぞれの場所に案内しなきゃね!


 「まずはお連れしたのは、皆さんに関係のあるこちらの扉!」


 僕達の班が1番に移動して来たのは、ファストさん達がいる畑の箱庭の扉。宿も酒場も食堂も食材を扱うからね。それに……


 「この箱庭では、グリーさんとカラさんに代理管理者登録をしてもらいたいんだ」

 「は?」「え?」


 いきなり僕に言われて、戸惑う酒場希望のグリーさんとカラさん。でも、2人に代理管理者の内容を伝えたらね。


 「カラ!ここに俺の求めているものがあったぞ!」

 「ええ!この村独自のお酒を作り出しましょう!」


 すっかりやる気になった2人。早速登録してファストさんに紹介したら、3人意気投合したのか真剣に話し合いし始めちゃった。


 ……うん、2人はファストさんに任せよう。


 酒談義に花が咲く畑の箱庭を後にして、次に向かったのは海の箱庭の扉。


 「よく来てくれました!ここは調味料の宝庫ですよ!新鮮な海の幸もあります!」


 商人のキドさん夫婦が他の班も案内している中、こっちにも声をかけてくれたんだ。その声に反応したのは、食堂希望のロックさん。ロックさんが料理長なんだって。


 「新鮮な海の幸まで料理できるのか?え?胡椒や砂糖が使い放題?しかも食堂に必要な物まで自分達で作れる⁉︎」

 「まあ!夢の私達の食堂が作れるの?」

 

 あ、奥さんのココア(32)さんも釣れたね。うん、ここはやっぱりこの一家が良いかな。


 キドさんやライル兄さん達に、ロックさん一家を代理管理者登録に推薦したんだ。そしたら即OK!その理由は……


 「調味料を自分で調達できるのもそうだけど、料理人なら箱庭錬金使えた方が良いだろうからな。何より試作品にありつけそうだし」


 そういうのは、海の箱庭の先輩のライル兄さん(13)。食べ盛りだし、美味しい物には目がないからね。かなりロックさん達に期待しているんだろうなぁ。


 そんな事を考えながら、しっかりロックさんとココアさんを代理管理者に登録。因みにロックさんの息子のグース兄さん(15)は料理人見習い。ヴェラ姉さん(13)はウェイトレス兼雑用なんだって。


 流石にこの一家で、海の箱庭の代理管理者枠使いきる訳にはいかないからね。だって海の箱庭に追加出来るの6枠なんだもん。とりあえず兄さん姉さんは様子見って事で了承もらったよ。


 登録し終わった後は、ライル兄さん達がロックさん達に教えていたんだ。ライル兄さん達とロックさん一家も、食堂計画で話が盛りあがっちゃってね。


 うん、ロックさん達も兄さん達に任せようっと。


 「それじゃ、お待たせ!ゴブさん達!実は、ゴブさん達はもう4人共、代理管理者になって貰う事決定なんだ」


 振り返っていきなり爆弾発言をする僕に、驚くゴブさん一家。だって、宿屋希望ならこの箱庭しかないでしょ!


 そう、僕がつれて行ったのは『コモンスペース・シェニの箱庭の扉』宿舎棟。

 

 「ちょ、ちょっと待ってくれ!クレイ君、本当にここを使って商売して良いのかい?」

 

 まだ外側しか見ていないのに、慌てるゴブさん一家。あ、長男のベン兄さん(16)は思いっきり口開いているし、唖然とする奥さんのテルさん(36)に青い顔したミン姉さん(15)が抱きついてる……


 あ、やっぱり……?


 なんたって白い大理石の外壁に、西洋風な城の造りだもんね。僕の予想だと、中も凄い事になっていそうだけど。


 恐る恐るついてくるゴブさん達をつれて、宿泊棟の中に入ったらやっぱり腰を抜かした4人。


 ……うわぁ、エントランスからこれかぁ。


 宿泊棟のエントランスから豪華だったんだよねぇ。白を基調とした壁に、天井が吹き抜けで大きなシャンデリアが各階層を照らす豪華ホテルそのもの。


 床は焦茶のチェック模様がついた大理石で、ロビー受付は温かいオレンジ色の壁付き照明がシックな茶色の受付を照らしていてね。雰囲気はあったかいんだけど……


 うん、これ宿屋レベルじゃないや。だからこれあるんだろうなぁ。


 [コモンスペース・シェニの箱庭の扉 宿舎棟代理管理者権限]

 ・王宮作法取得

 ・職員制服・備品召喚

 ・宿舎棟管理魔導具使用可能

 ・世界言語取得

 ・鑑定能力取得

 ・コミュニケーション能力向上


 うわ!これ凄い!


 興奮した僕は腰が引けていたゴブさんに、代理管理者の権限を熱弁してみたんだ。すると、まずは一家の頭であるゴブさんが登録を承諾。そして登録してみたらね。


 「え?お父さん……?」

 「まあ!貴方格好良いわ!」

 「は?なんだその変わり様……⁉︎」


 登録した途端に、立ち振る舞いが変わったゴブさん。


 制服召喚も瞬時に行い、着替えて髪をオールバックにしたゴブさんは、立派な執事になったんだ!


 これを見た残りの3人も、すぐに代理管理者登録したんだよ。そして、ゴブさんと同じ様に着替え終わった3人はね……


 洗練されたメイド長の奥さんと綺麗系メイドのミン姉さん、執事兼ボーイの格好良いベン兄さんに早変わり。


 「うわぁ!4人共凄い格好いい!」


 僕の賛辞にしっかりとした礼で応える4人は、もはやプロレベル。因みに扉の外に出て貰ったら、代理管理者権限の効果は無くなったんだって。


 それでも凄いよね!あ、宿の名前は高級旅館シェニに決まったよ!


 それにその日いっぱい時間をかけて、村のあちこちを見学したドボルグさん達の1番人気の職場は、高級旅館シェニだったよ。やっぱり格好良いもんね!


 でも他のみんなはそれなりに散らばってくれて、各箱庭も戦力増強されたんだ。


 そして今日は、早速始動したばかりの高級旅館シェニに泊まる事になったドボルグさん達。


 大浴場に驚き、高級旅館に驚き……流石に驚く事に慣れてきたのか、その日の夜にはうちの村人達と普通に笑いあっていたよ。


 僕らも慣れた頃に泊まりに行こうって話しているんだ!

 楽しみだなぁ!





 ……でもね。和やかな雰囲気は、その日の夜遅くお父さんからの連絡で急変したんだ。


 『すまない、クレイ!ブラムに伝えてくれ!まずい事になった!』


 焦っているお父さんの声⁉︎

 一体どうしたの⁉︎

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