第27話 『箱庭ゲートコネクト』実行!

 『みんな!コモンルーム、パニックルームから一旦離れて!』


 僕は念の為、両方の箱庭の扉の中に居る人達の避難を優先したんだ。


 すると、チームゲートホンから聞こえるうちの開拓村の人達の声。うちの開拓村のみんな、疑問はあっただろうけど僕が関わっているせいか、すんなり了解の声が多かったなぁ。


 そんな中、チームゲートホンの声に驚いたのは、ドボルグさんの開拓村の村人達。頭の中にいきなり声が聞こえるもんね。でも事前説明に入ってたのかなぁ?なんか「これか!」って声が多かったよ。


 そして全員が箱庭から出た事が確認取れたら、『箱庭コネクト』を取得した僕。そして、早速コモンルームの箱庭の扉とパニックルームの箱庭の扉を、同時タップしたんだ!


 すると出て来た指示は……


 『コモンルームの箱庭の扉にパニックルームの箱庭の扉を、統合しますか?   →許可    キャンセル 』


 あ、コネクトって統合の意味で使われるんだね。しかもコモンルームにパニックルームが統合される感じなんだ!うわぁ、どうなるんだろう!


 僕はワクワクしながら許可を押すと、画面上では文字が光り出したんだ!しばらくして、光が収まった時に表示されたのは……


 「『コモンスペース・シェニの箱庭の扉』……?」


 『おいおいおい!どうなってんだコレ!』


 僕が首を傾げていると、ダウロさんから驚きの声のチームゲートホンが来たんだ。


 うーん、気になる。これは確認しに行かないと!


 ドボルグさんには状況を説明して、ブラムさんやフレック兄さん達に一旦戻る事を伝えた僕。すると、みんなも行くと言うから、念の為ジニー兄さんには残って貰ったんだ。


 そして、ドボルグさん宅のリビングにある扉から戻って見るとね……


 目の前には、中心部で噴水のように水が噴き上がる巨大な湖。その湖の周りには鮮やかな色彩の花達が景色を彩っていたんだ。


 そして前よりも広がった芝生庭園。様々な種類の木々やアーチ状の緑のトンネルが配置されていて、すっごく空気が澄んでいるんだ!


 「綺麗……」


 カレン姉さんがうっとりするのもわかるなぁ。


 それで、回廊はどうなったかと言うとね。左右に広がる直線状の柱廊になっていたんだ。勿論、真ん中は通路になっていたよ。


 庭に出て確認したら、二階建ては変わらなかったけど。ゲートキーパービューで確認したらこんな感じになっていたんだ。


 2F 閉ざされた扉×5 監視室 魔導倉庫    

 1F 開放済みの扉 通路 多目的ホール オープンラウンジ


 因みにこれが箱庭の中の事。ダウロさん達大人も続々確認に入って来てるね。


 『クレイ!ここ凄え!』


 唖然とする僕らに、今度は僕の幼馴染のジェフから声が聞こえて来たんだ。フレック兄さん達はもうちょっと中を確認するらしいから、僕とブラムさんで外側の確認に向かったらね……


 「これは……王宮か?」


 うん、ブラムさんがそう言うのわかるなぁ……


 左右に建物があって真ん中が通路になっているのは同じなんだけど、左右の塔がお城みたいに立派になっているんだ!


 これもゲートキーパービューで内部を見てみるとね。


  左の塔 1F エントランスロビー

      2F〜4F 一般客室・連絡通路(4F)

      5、6F 貴族用客室・連絡通路(6F)

      7F 箱庭風呂(貴族専用)


  右の塔 1F 大浴場

      2F オープンラウンジ

      3F 図書館

      4F 集会所・連絡通路

      5F 自警団室

      6F 応接・会議室・連絡通路

      7F 領主室

      8F 展望室


 ……うん、これ村が使うレベルじゃないね……


 因みにジェフは展望室にいたよ。僕も気になっていたから行ってみたんだけどね。また一層遠くまで見える様になっていたんだ!


 下を見ると、どうやら僕達が作った居住区も商業区も無事みたい。扉だから空間ごと広がった感じなのかなぁ。


 「クレイ、そろそろドボルグ達に説明に行かないか?」


 僕が考え込んでいると、ブラムさんが提案してくれたんだけどね。


 ……説明より、実際に見て欲しいなぁ。


 「ン?出来マスヨ?ゴ主人」

 「あれ?僕、口に出してた?……って言うか本当!アル!」

 「勿論!ジャ、下ニ戻リマショウ!」


 驚く僕に、相変わらずマイペースなアル。


 僕らの会話を聞いたブラムさんを始め、展望室にいた人達でゾロゾロと移動したんだけどね。


 アルが向かった先は、コモンスペース・シェニの箱庭の通路。その中央にある、非常口の案内が付いた扉。


 「これってパニックルームの箱庭の扉じゃないの?」

 「普通ハソウデスヨ。デモ、ゲートキーパーガマスターキーヲ使ウト変ワリマス」


 そう僕に教えながらアルの翼が示す先は、パニックルームの箱庭の扉の取手部分。取手の横に、マスターキーを差し込む場所があってね。そこにはマスターキーを差し込むと……


 『現在、外界と繋がっているのは温泉の箱庭の扉です。温泉の箱庭の扉と同期しますか?

     →同期  キャンセル 』


 マスターキーを差し込んだ隣がモニター画面になっていてね。指示の通り同期をタップしたら、カチャッと音がして扉が開いたんだよ。開いてみると、そこはドボルグ村長さんのお宅のリビング。


 「ハーイ!コレデ、チーム作成登録シタ人ナラ誰デモ通レマスヨ!時間モ気ニシナクテモ良イデスカラネ!」


 ええ!それって凄い!


 アルの言葉に驚きながら僕とブラムさんが通った後、試しにジェフに通って貰うと……


 「……ドボルグ村長の家ってこうだったっけ?」


 ジェフはあんまり他の村に来た事なかったから、わかんないのも当然だけど……うん、通れるんだね!


 とりあえず一旦ジェフには出て貰って、みんなが居る広場に向かう僕とブラムさん。


 全員がまだ広場にいてくれたみたいで、ジニー兄さんが村人達に囲まれていたんだ。


 「クレイ〜!助かったぜ!」


 僕らが戻ったのを見つけた兄さんは、素早く僕らの側に駆け寄って来たんだよ。兄さん、村人達から質問が集中して、答えるのに忙しかったみたい。そりゃそうだよね。ごめん、ジニー兄さん。


 「ブラム、クレイ!戻ったか!」

 「ドボルグさん!急に居なくなってごめんなさい!」

 「ドボルグ。面白い事になったぞ」


 ドボルグ村長さんも僕らの姿を見て駆け寄って来たんだ。ドボルグさんに謝る僕と、珍しくニヤニヤするブラムさん。


 「ん?なんだ?ブラムがそんな表情しているとは……?」


 そんなブラムさんの表情に少し不安になったのか、ピタッと止まるドボルグ村長。


 「ドボルグさん、大丈夫だよ!それよりまずは僕らの村を下見に来ない?」


 安心させようとして、僕はドボルグさんを村に誘ってみたんだけど……


 「は?いや、それは見たい事は山々だが……まずは出発の準備がだな」

 「……クレイ。順番が違うだろう。ちゃんと説明してあげないとな」


 訳がわからない表情のドボルグ村長に、僕にツッコミを入れるブラムさん。あ、いけね。つい思いが先走っちゃった。

 

 そんな僕の頭を撫でながら、ブラムさんが村長さんや村人達に説明してくれたんだ。まあ、ドボルグさんの村人達すぐには理解できなかったみたいで、お互いに目を合わせたり、頭を傾げていたんだよね。


 うん、じゃあ扉を広場に召喚しちゃおう!マスターキーで同期した扉は、僕が操作出来るようになるみたいだしね。


 そう考えた僕は早速実行したんだ。


 「パニックルームの箱庭の扉、大きくなって召喚!」


 これもマスターキーを入れてからわかった事なんだけど、ゲートの大きさを変えられるんだって。


 でも扉が現れると……僕、ちょっと大きくしすぎたみたい。城壁の門サイズで出しちゃった。


 ドボルグさんや村人達が驚いて腰抜かしちゃってる。ありゃ。ジニー兄さんやブラムさんは「あーあ……」って呆れてたけど。


 とりあえず気を取り直して扉をあけると、そこはちゃんと僕らの村に繋がっていたんだ。


 うん、確認よし!


 一足先に扉を潜って、ドボルグさん達を招待する僕。


 「さあ、みんな!ここが僕らの開拓村だよ!」

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