第24話 隣の開拓村を助けよう!

 「キドさん!大丈夫?」


 次の日の朝、起きてすぐにコモンルームの宿舎棟に向かった僕。お母さんから許可も出たし、ちゃんと箱庭バーチャルキーで状態確認して大丈夫だったからね!


 「クレイ!ありがとう!おかげで僕も妻も助かりました!」


 キドさん夫婦は一階に泊まっていたんだね。僕の声だとわかると、すぐに扉を開けて感謝してくれたんだ。


 「あなたがクレイ?初めまして。私はキドの妻のポーラです。助けてくれて本当にありがとう!」


 そんなキドさんの後ろから、僕に声をかけてきたキドさんの奥さんのポーラさん。優しそうな綺麗な女性だったんだよ。


 勿論一緒に来ていたお母さんにも、またお礼を伝えていたみたい。ナーシャなんか、アルを僕より先にポーラさんに紹介しているんだからなぁ。最近はナーシャの側にアルがよくいるから、別に良いけどね。


 そうそう。この後は、集会所で相談役のブラムさんやファストさん達がキドさんを待っているんだ。今回の詳しい事情を聞く為にね。


 因みに、ポーラさんには村の事を知ってもらう為、既にチーム作成登録をしたんだよ。これからお母さんが色々教えてあげるんだって。


 既に準備が出来ていたキドさんと僕は集会所へ、お母さん達は村の案内へと分かれて宿舎棟から移動。ナーシャはお母さんの方についていったよ。アルは珍しく僕の肩にいるけどね。


 「キド無事で良かった!」


 キドさんと僕が村の集会所に入ると、心配していたブラムさんがキドさんとハグをしていたんだ。念の為、村の代理代表者のブラムさんも昨日はキドさんに会わなかったんだって。


 「すみませんでした!村に迷惑をかけて!でも、もう助かる希望はここしか思いつかなくて……」


 改めてみんなに謝るキドさん。そんなキドさんを慰めながら詳しく話を聞いてみたらね。


 「いつもは賑やかなドボルグの村が、門番もいない状態でおかしいと思って様子を見に行ったんです」


 あ、ドボルグって、隣の開拓村の村長さんの名前だよ。お父さんの領地と隣の領地の境目にある村なんだ。


 僕らより二年は先に村造りを始めていてね。僕の箱庭ゲートキーパーの能力が出る前は、結構お世話にもなっていたんだ。


 「ドボルグの村も多少ゴブリンの被害が出ていたけど、問題はそこじゃなくて。……村の自警団から始まっていたんだ」


 キドさんが言うには、ドボルグ村長さんの所に顔を出し時点で、一家が熱にうなされていたんだって。うなされながらも、すぐにここを出ろ、と村長に言われたキドさん。


 僕のポーション持っていたからね。すぐに治るだろうと思って飲ませたらしいんだけど……状態は変化無し。


 少しでも状況を把握しようと、キドさん達村の人達に聞いて回っていたんだって。出てきた村人達の様子もおかしいと思っていたら、ポーラさんの体調に異変が出たみたいなんだ。


 この時に、初めて伝染病の疑いを抱いたキドさん。


 ドボルグ村長には必ず助けにくると言い残して、僕らの開拓村に向かったそうだよ。正直戻ってこれないかもと、思っていたんだって。でも諦めたくなくて、一筋の希望を抱いて帰って来たみたい。


 「僕ら夫婦はまだ軽いから治りは早かった。だが、ドボルグの事を思うと……」


 結果的にキドさんのその判断が正解だったんだけどね。自分達が助かっても、と責めるキドさんにおや?と思う僕。


 「あれ?ブラムさん、キドさんにまだ伝えていないの?」

 「ああ、まずはしっかり回復してもらいたかったからな」


 ブラムさんの言葉に、ニヤっとしながらキドさんの肩に手を置いたファストさん。キドさんに、僕達が知っている事を教えてあげたんだ。


 「ええ!既に薬がドボルグ達に届いている⁉︎」


 すると、思わず立ち上がって僕達を見るキドさん。僕は丁度良いから、みんなに箱庭バーチャルキー起動をさせて見せたんだ。


 これにはブラムさん達も「おお!」って驚いていたよ。


 そして、僕は右側のチーム作成画面からジニー兄さん(15)をタップしたんだ。すると出てきた映像に叫び出すキドさん。


 「ジニーにカレン⁉︎……ドボルグの家に居るんですか⁉︎」


 ジニー兄さんとカレン姉さんが、ドボルグ村長一家の介助をしている映像が映し出されたんだ。


 「なぜあの子達が……⁉︎いえ、それよりもあの場所に居てはいけない!すぐに戻らせないと!」


 そう、キドさんにはまだ伝えてなかったからね。ジニー兄さんとカレン姉さんの相棒の存在と既に対処済みの事も。


 「キドさん、大丈夫だよ。この箱庭バーチャルキーは、チーム作成登録した村人の健康状態がわかるようになっていてね。ほら、健康状態は良好になっているでしょ?それに……『ジニー兄さん、カレン姉さんそっちはどう?』」


 『クレイか?こっちはだいぶ落ち着いたぞ』

 『ドボルグさん達も熱が下がって寝ている所よ。それより、村の人達が殆どかかっていたわ。重症者から飲ませたから、瘴気痘ポーションが足りないの。フレックはもう出た?』


 「『うん。フレック兄さんはチャーに乗って移動中だよ。もうすぐ着くと思う』」


 『わかった!こっちは一先ず俺達が見ているけど、できるだけ早く来てくれよ!』

 『なんとか持たせるわ』

 

 事前にチームゲートホンでの会話を、みんなが聞けるようにスピーカーにしといた僕。同時に様子が聞けたら、状況把握は早いからね。


 でも、訳がわからない顔をしているキドさん。苦笑いしながらブラムさんが説明した全体の概要はね……


 実は、ジニー兄さん達がドボルグ村長の村に出発したのは、キドさん達が村についてお母さん達が介助していた時。


 事前に、ブラムさんが瘴気痘ポーションを届ける依頼を、グリフォンを相棒に持つジニー兄さん達に打診にいってたんだ。その時、既に準備を終えていた兄さん達。


 「俺達にしか出来ない事だからな!」

 「任せて!」


 自分達で出来る事を考えて行動していた、牧場の箱庭の兄さん姉さん達。


 その時既に、エイミ姉さん(13)とケットシーのミケは作物の収穫に素早く動き、ミキダル兄さん(14)とミノタウロスのタロスは、薬が出来るまで各扉から救援物資を集めていたんだって。


 ジニー兄さんとカレン姉さんは、出来たばかりの瘴気痘ポーションを飲めば出発出来るように準備を整えていたし。


 それに、フレック兄さんに至っては……


 「あの数じゃ足りない!第二弾が必要になる!」


 そう言ってマーサさん達にお願いして、魔力が復活したら複製をお願いしていたんだよ。自分はいつでも動けるように、準備して仮眠をとりながら。


 魔力の回復は人によって違うからね。でも、マーサさん達も頑張ったんだよ。陽が登る頃には、また同じ本数を揃えたんだから。


 僕も複製は手伝えるんだけど、何かあったらって事でみんながさせてくれなかったんだ。


 ドボルグさん達の村は100人以上村人がいるからね。でも、これで足りる筈!


 フレック兄さんは、僕が起きる前にはもう出発していたんだよ。また新たな救援物資を持ってね。


 その中には鉱山の箱庭担当のダウロさんが開発した、瘴気痘除菌魔導具も入っていたんだ。ダウロさん曰く……


 「瘴気痘ポーションさえ出来れば、応用は効く!」


 なんて言ってね。


 瘴気痘ポーションを魔導具にセットしてから、魔導具の光を当てたら物質についた瘴気痘も除菌出来るようにしたんだって。


 これも、マーサさん達布の箱庭の女性陣が複製していたから、それなりに数はあるんだよ。


 おかげで今、布の箱庭の代理管理者の女性陣とダウロさん夫婦は、回復ポーション飲んでぐっすりお休み中。


 更に畑の箱庭のファストさんも、回復を高めるポーションを制作していたんだから凄いよね。因みに魔力回復ポーションも作っていたんだけど……


 「まだ効果が低くてな。完成してからじゃないと渡せない」


 って今説明していたよ。でもファストさんの事だもん。多分もう少しで出来るだろうね!


 ここまで話して安心したのか、倒れ込むように椅子に腰掛けたキドさん。


 「……そうか……良かった!ドボルグ……!」


 キドさんの緊張した雰囲気はなくなり、僕らの前で嬉し泣きをし始めたキドさん。


 うん、間に合って良かったよね。


 「ア!ヤッパリ使エル様ニナッテマシタネ!」


 そんなほんわか空気を遮るように騒ぐアル。


 「ん?どうしたのアル?」

 「見テ下サイ、ゴ主人!『箱庭バーチャル錠』ガ使エルヨウニナッテマス!」


 アルが翼を開いて示していたのは、チーム作成登録画面の右下。光る文字で『箱庭バーチャル錠 SP200』って表示があったんだ。


 んん?これって何だろうね?

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