第23話 キドさん達を救え!

 「何悩ンデイルンデス?」

 

 僕が映像を見ながらどうしようと悩んでいると、キョトンとした顔のアルが僕に質問してきたんだ。


 「ええ!だって伝染病だよ!村に入れるわけにもいかないし、どうやって調べればいい⁉︎」

 「ゴ主人、ゴ主人。落チ着イテ下サイッテ。コンナ時ノ為ニチーム作成ヲ登録シタンデス」


 僕を落ち着かせて説明するアルによると、チーム作成の画面から確認出来るんだって。それを聞いてすぐキドさんの名前をダブルタップするとね……


 [32・キド 登録済み 健康状態 : 不調(瘴気痘罹患)]


 凄い!病名までわかるんだ!でも……


 「瘴気痘?」

 「コレモタップシテミテ下サイ」


 アルに言われてその通りにすると、詳しい症状が出てきたんだよ。


 [瘴気痘]

 症状 : 感染してから数時間で発病。高熱、倦怠感、頭痛、嘔吐などの全身症状有り。更に進行すると顔や四肢を中心に強い痛みを伴う斑状の皮疹(ひしん)が現れ、症状の悪化により死亡する事が多い。

 原因 : 突如現れる濃い瘴気ウィルス(ダンジョン発生前に生じる)を吸い込む事により発病。空気感染、飛沫感染によって拡散される。

 治療法 : 世界樹の葉・ヒール草・湯花を混ぜ合わせて作るポーションによって完治可能。


 「ねえ、アル!世界樹の葉と湯花ってどこで手に入るの⁉︎」

 「世界樹ノ葉ハ、畑の箱庭カラ入手可能デス。湯花ハ温泉ノ箱庭ノ扉カラ沢山採レマスヨ」


 やった!作れそう!


 早速僕は、畑の箱庭の代理管理者ファストさんに連絡したんだ。するとすぐに奥さんのクレアさんと調べてくれたよ。でも部屋でいるのもソワソワしちゃってね。


 僕も行こう!


 そう思ってすぐ部屋を出た僕。畑の箱庭に着いて、ようやくパジャマ姿のまま靴を履いてきた事に気づいたんだ。そんな僕の姿に苦笑いするファストさんやお母さん達。


 あっちゃー!やっちゃった!


 僕があわあわしていると、お母さんが「服持ってくるわ」って家に戻ってくれたんだ。おかげで僕は、笑うファストさんから報告を受けられたんだけど……


 見つかった事は見つかったんだって。でも確認したら、世界樹を入手するにはSP1000もかかるんだよ。僕はすぐ今のSP量を確認したんだ。


 うん、まだ大丈夫!


 それで世界樹の苗を手に入れたんだけどね。


 ……どうしよう?苗の状態だし、葉っぱが3枚しかない。まさか全部葉っぱ採るわけにもいかないし。それに成長促進は効かない木みたいだし……


 「大丈夫だ、クレイ!瘴気痘ポーションは一本作れるだけで良い」


 僕が悩んでいると、ファストさんは、丁度畑に野菜を取りに来ていたマーサさんを指差したんだ。


 「そっか!複製があったね!」


 指差されたマーサさんは、「なんだい、なんだい?」って不思議そうにしていたけど、状況を説明すると即座に理解してくれてね。


 「幸いにも、今日はまだ箱庭で魔力を使っちゃいない。キド達の分だけじゃなく、私達の分も作った方が良いね!ミーナ達も巻き込んだ方が効率が良い!ファストは全員にチームゲートホンでこの事を知らせておくれ!クレイはわかってるね?」

 「うん!温泉の箱庭の扉を出すよ!」


 流石、相談役ブラムさんの奥さん!マーサさんはすぐにみんなに指示を出してくれたんだ。そしてファストさんが全員にチームゲートホンで説明するとね……


 『クレイ!箱庭錬金なら俺達でも出来る!』

 『お前だけ抱え込むなよ!』


 海の箱庭のライル兄さんとジェイ兄さんがすぐ反応してくれたんだ。それに、布の箱庭の奥様達の力強い『任せて!』って嬉しい反応があったんだよ。


 えへへ、僕1人じゃないって嬉しいね。


 こんな事態なのに、笑顔が出てしまう僕。

 

 まずいまずい、キドさん達が村に着く前に作っておかなきゃ!


 僕はすぐに思いを切り替えて、温泉の箱庭の扉出現させて鍵を開けたんだ。


 すると扉の中には、男湯と女湯の暖簾がかけられた二つの引き戸があったんだよ。


 うわぁ!懐かしい日本式だ!


 ちょっとワクワクしながら男湯の引き戸を開けて入ると、そこは脱衣場。周りが気になりつつも、僕はファストさんと一緒に奥の引き戸に走って行ったんだ。


 ガララ……ッと開けた瞬間、ふわっと僕らを包み込む熱気と硫黄の匂い。その先には、お風呂と名のつく様々な種類のお風呂があったんだよ。


 「うわぁ!すっごいや!」

 「ほおお……!これは面白い!」


 僕もファストさんも思わず足が止まっちゃったけど、すぐに切り替えて湯花を探したんだ。


 ゲートキーパービューで探したら、奥の天然岩に囲まれた温泉や川のように流れる温泉の中にあったんだ。この世界の湯花は、温泉の中に咲く小さな花なんだって。


 「ファストさん、僕が採ってくるから待ってて!」


 僕はまだパジャマだったからね!天然岩に囲まれた温泉にザブンッと入って手探りで探してみたら、草の感触があってね。採ってみたらスミレのような小さな紫色の花を見つけたんだ。


 ゲートキーパービューで湯花だと確認した僕は、すぐお湯から出てファストさんに渡したんだよ。だってこのままじゃ出れないからね。


 「クレイ、ここからは俺達に任せろ。お前はゆっくり入っていても良いぞ。服も持ってきてやる」


 僕の頭を撫でた後、急いで扉の入り口に戻って行ったファストさん。


 確かにずぶ濡れだし……

 うん、脱いで入っちゃお!


 ビチャビチャのパジャマをなんとか脱いだ後、天然石の温泉の階段部分に腰かけて半身浴をする事にしたんだ。僕にはちょっと深かったからね。さて、と……


 「箱庭バーチャルキーオープン!」


 これってやっぱり便利だなぁ。みんなの動きがわかるもん。


 箱庭バーチャルキーの真ん中の画面では、ファストさんが畑の箱庭で待機していたライル兄さん達に湯花を渡していたよ。受け取ったライル兄さんが箱庭錬金をすると、見事に瘴気痘のポーションが完成!


 するとそのポーションを、布の箱庭で待機しているマーサさん達に走って持って行くライル兄さんとジェイ兄さん。


 布の箱庭では、受け取ってまずはマーサさんが複製をかけていたよ。複製は見事に成功!でも複製を複製すると、効力が落ちる事をファストさん達が発見。


 最初の瘴気痘ポーションの複製を、布の箱庭の代理管理者のみんなが1人ずつMPが切れるまでやって出来た本数は102本。


 うわぁ、マーサさん達頑張ってくれた!


 そのポーションが入った木箱を、牧場の箱庭の代理管理者キダル兄さんの相棒ミノタウロスのタロスが、畑の箱庭に持って行って最終確認。


 『良し!まずは村人達が全員飲むんだ!』


 ファストさん達の許可が出てからは、子供達も頑張ったよ。みんなに配って行ったからね。僕の元には幼馴染3人組の1人ジェフが持って来たよ。


 「すっげー良いな!俺もここで見るぞ!」


 大浴場まで入って来たジェフも、箱庭バーチャルキーの画面が見えるみたい。ポーションを飲んでから、2人で温泉に浸かりながら真ん中の画面を見てたんだ。すると、開拓村の入り口で動きがあってね。


 「クレイ!キドさん着いた!」

 「良かった!でも、キドさん具合悪そうだね……」


 そう、開拓村の入り口まで着いたキドさんは、もうグッタリして御者台になんとか乗っていた状態だったんだよ。


 すぐに瘴気痘ポーションを飲んだゼンさん達が駆けつけて、キドさんにポーションを飲ませるとキドさんの意識が戻ったんだ。


 一緒に駆けつけていたお母さんは、馬車の中にいるキドさんの奥様に飲ませたみたい。馬車の中からまだ少し怠そうな女性を支えながら、馬車の外に出てきたよ。


 「クレイ!キドさん達笑ってる!」

 「うん!間にあったんだね!」


 安心したジェフと僕は大喜びでハイタッチしたよ!そのままキドさん達を迎えに行こうって話になってね。脱衣場に向かったんだけど……


 「あ、服が無い……」


 持って来てくれる予定だったお母さんは、キドさんの奥さんの介助に行ったから、ナーシャが服と下着を持ってきてくれたよ。


 今日ようやく服に着替えられた僕だけど。この日、年少組はキドさん達会えなかったんだ。


 念の為だって……仕方ないか。


 だけどみんなでキドさんに『おかえり』ってチームゲートホンで伝える事にしたんだ。


 そしたら涙声で『ただいま!』って返事がかえってきたよ。

 

 うん、ホッとしたぁ。

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