第18話 コモンルームの箱庭の扉ー内部ー
入ってみると、箱庭の内部は白い大理石の立派な回廊だったんだよ。その回廊には燦々と光が入り込み、白い大理石が更に雰囲気を明るくしてくれているんだ。
回廊の中庭は緑の芝生が敷き詰められていて、芝生の上で横になったら気持ち良さそう!後でやってみよっと。
それで庭の真ん中には、大きな噴水があってね。その隣には白く綺麗なガセポが設置されていたよ。更に周囲には、ゆったりしたベンチが一定の間隔で配置されているから、いい休憩場所になりそうだね!
ん?他の箱庭の扉は何処にあるのかって?
回廊の壁に一定の間隔で設置されているよ。此処は安全だからね、常に扉は開かれた状態なんだ。
面白いのは一つ一つの扉の大きさが変わった事かな。今までは二人通り抜ける事が出来る扉の大きさが、観音開きに変わって5人は余裕で同時に入れる位になってたよ。
勿論扉が開いていてもコモンルームの箱庭まで、匂いや気温や音が漏れてくる事はないんだ。
それに、扉の間に男女別トイレも一定の間隔であったなぁ。これって便利だよね。
僕、結構扉出したと思ってたんだげどね。数えてみたら、まだ7ゲート。一階の回廊の半分も埋まってないんだ。ゲートってどれだけあるんだろうね……
それに気になるのは、反対側の回廊に閉ざされた扉があるんだよ。生体認証とカード認証で開く扉みたいなんだけど……いずれわかるかな?
そして二階もあるんだけど、此処は嬉しい保管倉庫付きなんだ!結構入りそう……ん?何、アル?時間劣化無しの保管庫?それは良いね!用途はいっぱいありそう!
更にね、二階には広ーい多目的スペースがあるの!この多目的スペースは何が凄いかって言うとね!本来それぞれの箱庭でしか使えなかった代理管理者の能力が、このスペースでなら使えるって事だよ!同じ部屋で協力作業ができるんだ!作業効率が更に上がるね!
何より回廊の幅が広いんだ!多分大きめの馬車二台分くらいかなぁ。高さもあるし、開放感が凄いんだ。
あ、コッコ達こっちまで様子見に来てる。フォレストホース達もいる。行き来自由になったからね。ん?バルはって?さっきから僕の側にいるよ。
《我らの行き来もラクになった。主感謝する》
「ふふっ、みんながラクになったならそれが一番だね」
「ゴ主人、今日ハコレカラドウスルンデス?」
もはや指定席となったバルの頭の上から、僕に予定を聞いくるアル。
「今日はね、相談役のブラムさんのところに呼ばれているんだ」
バルはそれを聞くと《ならば我は中庭で休んでいよう》って言ってカポカポ歩いて行ったよ。「ジャ僕モ」ってアルも一緒に行っちゃった。まあ、良いけどね。
『クレイ。聞こえているか?』
あ、ブラムさんから念話が届いた。
『はーい!聞こえているよー』
『そうか。今、出来たばかりの塔の集会所にいるんだが、こっちに来てくれるか?』
『あ、うん。わかった今向かうね』
僕はくるっと回って元来た道を戻って行ったんだ。ゲートを潜って右の塔の扉を開けると……丸いテーブルに椅子が4脚ついているテーブルセットが10セット配置された部屋だったんだ。
うわぁ、木の温もりが感じられる空間だぁ。
でもまだ飾りがないから、なんとなく寂しいけどね。そこの一席にブラムさんは座って待ってくれてたんだ。
「ブラムさん!お待たせ!」
「いや、急ぎじゃないから良いさ。それよりも此処の展望室はまだ行ってないだろう?そこに行ってみないか?」
「うん、いいよ!」
まだこの塔は探検してなかったからね。
ブラムさんは既に一回行ってたんだね。奥のエレベーターに歩いて行って、慣れた様にドアを開けたんだ。
へえ、此処エレベーター二機あるんだね。
僕もタタッとエレベーターの中に入ると、ブラムさんは5階のボタンを押して笑いながら教えてくれたんだけどね。
ブラムさんは集会所から確認しようと思って、先にこっちに一人で来てたんだって。その時エレベーターを見つけて適当に押したら、閉じ込められて動き出すものだから、もうびっくりしたんだって。
慌ててエレベーターの扉をドンドン叩いていたら、最初に着いたのが展望室。
「あの時ほど一人でよかったと思った事はない。年甲斐もなく無様に展望室に倒れ込んだからな。でもその後は言葉が出なかったさ」
「え?どうして?」
「それを言ったら面白くないだろう?……ホラ着いた」
ポーンと言う音と共に開いた展望室は……
「え?眩しい!」
そう、扉を開けると目に入って来たのは、陽の光。ようやく目が慣れた頃見えて来た展望室は、床以外は全面ガラス張りのサンルームだったんだ。勿論防護柵もちゃんとついていたよ。
他に高い建物がないこの辺境地、周りがよく見える見える。
あ、フォレストホースかな?誰かが乗って村を巡回してる!へえ、あんな遠くまで巡回しているんだ。
「今日の巡回はディランとゼンだったかな」
僕はいつのまにか窓辺まで来ていたんだね。ブラムさんが隣に来て教えてくれたんだよ。
そうそう、窓辺には座り心地の良さそうな三人掛けソファーも配置されていたんだ。僕達は丁度良いから、そこに座って話し始めたんだ。
「そっかぁ。でも此処って凄い!遠くまで見れるんだもん!」
僕が両手をあげて感動していると、そんな僕の様子に目を細めて笑うダウロさん。
そして、窓の外を指差しながらこの近辺の地形を改めて教えてくれたんだ。僕達の開拓村の周りは大半が森。でも少し遠いところに空白地帯があって、そこが隣の領地との境目なんだって。
「じゃあ、この森がお父さんの領地?」
「ああ、そうだ」
それからダウロさんは、少し昔語りを始めたんだ。
「最初はスタンピードで活躍したグレイグに、なぜこんな場所を領地に与えたんだと憤りを覚えたものだが……」
ダウロさんによるとね、お父さん達が開拓する前は本当に森しかなかったんだって。でも、お父さんは文句も言わずにみんなと協力しながら、森を更地にして前の村の状態まで作り上げたんだ。森も自然の産物が豊かだったからね。
でもそれもゴブリン達の襲撃で壊滅状態になった時、ブラムさんは、また最初からかと脱力感も襲って来ていたんだって。
「そこに、クレイお前がいてくれた。俺達がどれだけ助かったかは計り知れない。実はあの時、ダウロもこんな事を言っていたんだぞ。
『クレイに俺達は開拓民だって強がったが、結局アイツの力に頼ってしまっているんだよなぁ。だからこそ今、こうやって戦える』
ってな。俺もそう思った。だからこそクレイ、改めてお礼を言わせてくれ。俺達の為に力を使ってくれてありがとう」
ブラムさんは僕の頭を撫でながら、笑顔でお礼を言ってくれたんだ。
「えへへ。だって僕、村のみんなが大好きなんだもん!当然だよ!」
「そうか……当然か。本当にありがとうな、クレイ」
ブラムさんと僕が笑いあって穏やかな時間が流れた後、ブラムさんは此処に僕を連れ出した理由を話し出したんだ。
「実は、ちょっと試して貰いたい事があってな。見たところお前のゲートインアウェイは、ステータスボードに映っている物が移動出来るだろう?取り込んだらすぐに箱庭に移動になるのか?」
どうやらブラムさん、この場所からこの村の瓦礫となった家を一度に取り込んで、箱庭錬金出来ないか?って提案してきたんだ。
そういえば、此処ってゲートの中って事になるんだった。僕それ気づいてなかったなぁ。っていうか、扉の中にいながら開拓村が見えるなんて思って無かったし。
「じゃ、試してみる?」
「やって見てもらえるか?」
ブラムさんにお願いされて、僕はゲートインアウェイを立ち上げて見たんだけど……
『箱庭の動作を指定して下さい。
取り出す →取り入れる』
これは変わらないんだよね。マップも出て来たし、とりあえず見えるところをマーキングしてっと。
『マーキング素材をどの箱庭に取り入れますか?
・海の箱庭の扉 砂浜地帯
・布の箱庭の扉 (拡張必須 SP10)
・畑の箱庭の扉 未開地
・牧場の箱庭の扉 草原(フォレストホースの庭)
・コモンルームの箱庭の扉 2F 多目的ルーム
→・箱庭錬金ボックス
・元に戻す 』
って!出来るじゃん!
僕は一緒に見ているブラムさんと思わず「やったあ!」ってハイタッチしたよ!
だって、村人のみんな箱庭の中の仕事についちゃっていたから、開拓村まで手が回らなかったからね。
これで開拓村を復興が出来る!
って思ったけど、今回はブラムさんに言われた事もあって、一旦元に戻す事にしたんだ。もしかしたら、まだ家から持ち出したいものがあるかもしれないからだって。
うん、その方がいいよねって僕も思ったし。
「これなら村の再編計画も伝えておこう」
ブラムさん、出来る事がわかったからか、以前にお父さん達と話合った村の計画書を僕に見せてくれたんだ。
見たところ、今増えた施設や僕の箱庭の扉を利用しながらだから、かなり簡素化が可能だね!これならすぐ出来そう!
そうは思ったんだけど、やっぱりみんなに相談が必要だからね。チームゲートホンで確認を取りながら予定を決めたんだ。
そしたら、村の復興は明後日になったよ!今日は荷物の持ち出しや整理。明日は各扉から村の資材の調達だって!
楽しみだなぁ。
『おい!クレイ!やるならやるってコッチに伝えてくれ!』
『全くだ!いきなり建物が消えたら驚くだろうが!』
あ、巡回していたディランさんとゼンさんの事忘れてた……
ごめんなさーい!
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