第14話 村の防衛から始めよう!

 「それじゃ、皆さん!次来る時は家族を連れてきます!後、売り上げ期待してて下さいね!」

 《それじゃ、仲間を頼む》


 翌朝、元気に村を出発していった商人のキドさんとフォレストホースのアオ。


 大きな馬車をものともしないフォレストホースの力強さも去ることながら、あれだけいた魔物が出てこないアオの威圧感。だから護衛要らずで一匹と一人で旅立っていったんだ。


 念の為に言うけど、アオの命名は僕じゃなくてフォレストホース自身が名乗ったんだよ。仲間内でそう呼ばれていたんだって。


 そしてキドさんは馬車の荷台に、食料と布製品をいっぱい積んでいったんだ。「商売人の血が騒ぎます!この機会をモノにしないといけませんね!」って凄いヤル気になっていたよ。うん、キドさんらしいや。


 「さて!キドも出発したし、俺らも初巡回に行くか!」

 「「「おお!」」」


 キドさんを見送った後は、バースさんを始め自警団メンバーが声をあげたんだ。いつもよりヤル気になっている理由はね……


 《我らに乗れる事を主に感謝するんだな》

 《でもまぁ、僕らもいい気分転換になるよ》

 《ん“〜終わったらいっぱい食べるぞぉ〜》

 《……食べすぎるなよ》


 そう、フォレストホースのアカとミドリとキイロとクロが、自警団の大人達を乗せても良いって言ってくれたからなんだ!特に、村一番の体格のムーグさんは大喜び!


 「まさか俺を乗せられる馬がいるとは!」

 《僕は〜フォレストホースだってば〜》


 嬉しそうにキイロの身体を撫でるムーグさん。そう、フォレストホースにも大きさや個性があってね。キイロはとりわけ大きなフォレストホースだったんだ。性格はのんびりだったけど。

 

 面白い事にアオがキドさんについて行くと決めた後、フォレストホース達が大人の男性の中から自分の相棒を選びだしたんだ。お父さんも含め自警団のみんなは、自分専属の馬ならぬフォレストホースが出来たんだよ!選ばれてすっごい喜んでいたなぁ。


 でも畑のファストさん、建築関係のダウロさん、ペギーさんは乗る機会がないって事で自ら外れたから、9頭のうち一頭はフレック兄さんを選んでいたよ。フレック兄さん大喜びだった!良かった、良かった。


 あ、自警団のみんな上手くフォレストホースに乗れたみたいだね。


 因みに、ちゃんとフォレストホース達に鞍と鎧とハミつけたんだ。これも追加可能設備に入っていたんだよ。


 実は鞍とか鎧とか魔導具でね。各個体に合わせてフィットするらしく、フォレストホース自身にも負担にならない設計なんだよ。彼らからすると、むしろ飾り立てられた感じなんだって。うん、実際カッコいい!


 「じゃ、初巡回行ってくる。クレイも気をつけろよ」

 《主は大丈夫だろう》


 馬上から僕に声をかけるバースさんの気遣いを、即座に否定するアカ。……うん、バースさんにはブルルッてしか聞こえてないだろうから通訳しないでいいよね。


 「うん!行ってらっしゃーい!」


 僕に片手を上げて颯爽と巡回に向かう自警団のみんな。


 さあ、僕も動き出そうっと。


 ところでみんな気づいてる?キドさんに1頭、自警団に7頭、フレック兄さんに1頭で9頭。あと1頭の黄金のアバルテケはどうしたかというとね……


 《この後、主は何をするのだ?》

 「あのね、お父さん達に許可を貰ったから、村を柵で囲ってしまおうと思って!」

 「[ゲートインアウェイ]モ、既ニ習得シマシタカラネ!」


 村の外れをテクテク歩く僕の横にいるんだよ。


 アバルテケ改めバルは、僕以外乗せるつもりは無いんだって。とか言って頭にアルは乗っているけどね。アルは同志扱いらしいよ。


 僕にとっては、バルは護衛みたいな感じかな。え?乗らないのかって?まだ小さいから僕一人じゃ乗り降り出来ないんだもん。だからバルは、僕の隣でペースを合わせて歩いてくれているよ。


 バルが僕の側に居てくれるおかげで、大人達も安心して僕を開拓村を歩かせてくれるからね。バル様々だよ。


 「ええと、この辺だね」


 目標地点まで歩いた僕は、大まかにダウロさんが書いた地図を確認。目印は村の外れの1番背の高い木。うん、これだ。


 此処から横12km、縦10kmの長方形の集落柵を作るんだ。いずれ開拓村の箱庭化を目指しているから、僕の意見で長方形にしてもらったんだよ。


 さて……と。スキルの[ゲートインアウェイ]をタップして……


 『箱庭の動作を指定して下さい。

   取り出す   →取り入れる  』


 まず、[取り入れる]をタップ。すると、ステータスボードに周囲マップが表示されたんだ。[ゲートインアウェイ]を入手したら、僕が歩いたところがステータスボードにマッピングされるようになったんだよ。便利でしょう!


 おっと、それよりもマップを上空視点に切り替えて……直線上に村の外壁にかかる木をマーキングして、二回タップで決定。


 『マーキング素材をどの箱庭に取り入れますか?

   ・海の箱庭の扉 砂浜地帯

   ・布の箱庭の扉 (拡張必須 SP10)

  →・畑の箱庭の扉 未開地

   ・牧場の箱庭の扉 草原(フォレストホースの庭) 』


 これで決定っと。

 ん?何で畑の箱庭かって?


 畑の代理管理者が、乾燥と簡易錬成使えるからね。ファストさんや母さん達にお願いしているんだ。簡易錬成で切断までしてくれるからね。


 それを知って、建築担当のダウロさんとペギーさんが大喜びしていたよ。そんな二人に、畑の箱庭内で村の内側につける城柵の作成をお願いしているんだ。ダウロさん達、囲いは二重にしておきたいみたいだからね。


 さて、僕も作業に戻ろ。もう一度始めの画面に戻って、今度は箱庭から取り出し作業。牧場の箱庭の扉を指定して……

 

 『牧場の箱庭の扉[取り出し可能リスト]

   ・ホース種 フォレストホース×4

   ・コッコ種 ボーリッシュ×10

   ・ホルスター種 ジャージィー×5

          ブラースイ×5

  〜〜〜〜〜

  →・有刺鉄線付き金属柵(魔導電熱線付き)10km 』


 箱庭内に出していた金属柵を選択して、決定!


 すると半透明の金属柵が僕の前に現れたんだ。ステータスボード上ではマップと『取り出し場所を指定して下さい』指示が出ていてね。


 マップ上で、木を取り除いた場所に真っ直ぐ嵌めて決定すると、垂直に設置された金属柵が出現!


 よし!いい感じ!後は……


 僕は魔導具がちゃんと働いているか、葉っぱを丸めて投げてみたんだけど……触れた瞬間、一瞬の内に葉っぱがボッと燃えて消えたんだ!


 うわぁ!威力強すぎぃ……!


 危ないから近くに立て看板でも建てようかなぁ、って考えていたらバルが魔導部分に近づいて見ていたんだよね。


 「ん?バル、どうしたの?」

 《主、この魔導具に我の力を流してみても良いか?》


 バルが聞いて来るもんだから、壊さない事を念を押した上で許可を出したんだ。そしたらね……バルが魔力を流した途端に金属柵がバリバリッて電気が常に帯びるようになったんだ!余りの威力に呆然としたよ。


 ……うん、看板要らないね。コリャ、誰も近づかないよ。


 自慢顔のバルを褒めまくっているアルを横目で見ながら、まいっかと考えを放棄する僕。


 魔導具についている魔石五個でどのくらい持続するかなぁ。


 この時はすぐに効果消えるだろうと予測してたんだけどね。後日、この数でさっきの威力が一週間持つ事がわかった時は、本気で驚いたよ。


 その後しばらく設置状況を確認して、満足した僕が帰った頃……丁度一回りした自警団員とフォレストホース達が帰って来ていたんだよ。村の外れから歩いて来る僕を見つけて、わざわざ駆けつけてくれたみんな。


 「クレイ!この魔導鞍と鎧が凄えよ!どれだけ早くクロ達が走っても落ちる事ねえんだ!」

 「むしろ、あれだけ速さを上げても息が出来るのも驚きだったな」


 僕を乗せて興奮気味に話すディランさんと、冷静に分析するバースさん。それに被せるようにゼンさんも教えてくれたんだけど……


 「俺達が戦うまでもねえんだ!ミドリ達が強えったら!」

 「確かに助かるが……動き足りん」


 体育会系のムーグさんはちょっと残念そうだったよ。それにはリーダーのバースさんも同意して、ゼンさん達を呆れさせてたけどね。


 《なかなか良い気晴らしだった》

 《もうちょっと手強いのいてもよかったよねー》

 《ちょっとお腹空いた……》

 《ん?もう終わりか?》


 フォレストホースのアカ達は、これぐらいじゃ疲れもしないのかマイペースにそれぞれ感想言ってたなぁ。流石だよね。


 そして無事扉の中に戻った僕達。


 その日の食事時は、更に賑やかだったよ。自警団のそれぞれの相棒自慢は面白かったなぁ。登録したばかりの子供達は色々な箱庭の扉の事で盛り上がっていたし。


 僕は小さい子達から「いつ登録出来そう?」って何度も聞かれてね。……ちょっとだけ困ったけどね。


 そんな感じで過ごした数日。もうパートナーのフォレストホースと息をピッタリに合わせてきた自警団員達。


 僕も負けてられないと思って、四日がかりで集落柵作ったよ。最終設置日に金属柵を箱庭錬金して、観音開きの金属扉(魔導具オンオフスイッチ付き)をつけて完成させたんだけどね。


 ……まるで収容所だなぁ。


 外から集落柵を見てそう感じちゃったのは、前世の記憶があるからだね。村のみんなの評価は凄く高かったからなぁ。


 それに内側にも城柵作ったし!最後は僕も錬金で少し手伝ったけど、ダウロさん達頑張ってくれたんだ。


 これで防衛の面では、今までより強固になったよ!二重の囲いが出来たからね!


 それに村の中をフォレストホース達やアバルテケのバルが、交代で巡回してくれる事にもなったんだ。勿論、外の巡回も1日3回、自警団のその日の担当二人と二頭がしてくれるんだよ!


 うん、これで安心だね!

 ようやく本格的な村作りに移れるよ!

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