第13話 『牧場の箱庭の扉』を開けたよ

 ねえ?みんなは牧場って聞くと何が思い浮かぶ?


 僕は、長閑な草原風景が広がり、羊達が遠くで群れを作り、自由に馬が走り回るって感じかなぁ。


 でも、今回の牧場の箱庭の扉を実際に開けてみたらね……


 「すっげえ!アバルテケがいる!」

 「うっわ!フォレストホースもいる⁉︎」


 ……うん、驚くよね。開けていきなり獣舎だったら。


 それで、僕同様驚いているのが、新しく登録者になった自警団見習いのフレック兄さん達。他にも、新しくチーム作成登録したメンバーも勿論いるよ。


 そうそう、獣舎の内部は種別ごとに区画整理されていたんだよ。それも、各種族結構広々使っているの。でね、各区画の間に人が3人は通れる幅の通路があってね。その通路に扉が繋がっていたんだ。


 えーとそれで……今確認出来る生き物は3種類かな。


 「なんと……!ホース種にコッコ種、ホルスター種がそれぞれ10頭ずつですか……!」


 僕が言うより先に、商人のキドさんが説明してくれたけどね。順に、馬の魔物と鶏に似た魔物、乳牛に似た魔物の事で、こっちではちょっと飼育が難しいとされている魔物なんだ。


 因みにホース種の中でも珍しいアバルテケは、いわば黄金の馬の魔物。サラサラした長いタテガミがすっごくかっこよくてね!ゲートキーパービューでみたらAAランクの魔物なの!雷撃特性なんだって!


 フォレストホースは、競走馬の魔物って感じ。でもこの魔物もAランク。だって土魔法使って攻撃してくる上に、動きが速いんだよ!あ、これはアル情報。


 ホルスター種のジャージィーとブラースイは、ミルクを水魔法のように攻撃に使ってくるから大変!ランクはCだけど、気性は荒いし死ぬとミルクは出てこないしで、ミルクを取る依頼は冒険者の間で人気ないんだって。需要は高いのにね。


 コッコ種は、鶏を大きく嘴を鋭くした鳥型の魔物。これは単体はランクDだけど、卵を守るために集団で襲ってくるんだ。集団ランクはCで卵が絶品だから、危険を冒して取りに行く人多数。出回る卵は高級品だよ!


 でもそんな魔物達が、こんなにも大人しく共存しているんだよ!それに……


 「うわぁ!お前撫でさせてくれるのか?」

 「ええ!お前のミルク取っても良いの?」


 あ、良いなぁ。兄さん達懐かれている。


 僕も触りたいけど、さっきから目の前に指示が浮かんでいるんだよね……


 『牧場の箱庭の代理管理者を入力して下さい』


 その指示の下には数字が1〜5まであって、横に名前が入力されるようになってるんだ。因みにこの箱庭の代理管理者の権限はこんな感じ。


 [牧場の箱庭 代理管理者権限]

 ・箱庭から特定の魔物を出し入れ可能。

 ・各区画扉の鍵。

 ・ゲートキーパービュー(魔物限定)

 ・箱庭魔導具使用権限。

 ・箱庭一括清掃(MP10)

 ・畑の箱庭直通扉使用可能。(畑の箱庭の代理管理者も可)

 ・飼料配合錬成


 っていう感じかな。人数は規模によって増えるみたいだね。


 あ、それにこの獣舎魔導具付きでね。例えばホース種は丸洗いして乾燥する魔導具があったり、コッコ種は保温魔導具、ホルスター種は搾乳魔導具があってね。触ると理解出来る仕組みになってるよ。


 それに、各種族専用の庭があるんだよ。それぞれ別の空間がつながっているみたい。ホース種は草原地帯、コッコ種、ホルスター種は各牧草地帯に繋がっているんだ。ストレス発散にいい場所があるし、箱庭特性なのかなぁ。此処にいると穏やかな気持ちになるんだ。


 そんな感じで、みんなに代理管理者の説明したんだけどね。


 「「「「「「やりたい!」」」」」って即答だったのが、年長組の兄さん姉さん達。だけどとりあえず5人だからって言ったら、ジャンケン大会勃発。一戦毎に歓喜の叫び声が上がって、最後の1人の時は大盛り上がり。


 でも魔物達はそんなの関係なしにまったりしているの。あ、柵に消音効果ついてた。へえー、便利。


 そして熱戦の末決まった5人は、フレック兄さん(15)、カレン姉さん(15)、ジニー兄さん(15)、キダル兄さん(14)、エイミ姉さん(13)。


 フレック兄さんやジニー兄さんは多分ホース種目当て。カレン姉さんは、元々魔物好きだから嬉しいのはわかるけど……大人しめのキダル兄さんとエイミ姉さんが意外だったなぁ。


 まぁ、ともかく登録完了させたんだけどね。そしたら直後にその5人が「え?」「誰?」とか言い出したんだよ。そして僕にも……


 《そろそろ出して欲しいのだが……》

 《出してー!》

 《もう乳が張って痛いのよ。何とかしてくれない?》


 ……まさかの魔物からの念話が聞こえてきたんだ。でも聞こえているのは代理管理者の5人と僕だけ。まさか直接意思の疎通出来るとは思わなくて、みんなで叫んじゃったよ。


 でも慣れたらこんな楽な事はないよね!だって自分から色々指示出してくるんだもん。最初はちょっと言いなりになった5人と僕だけど、管理者権限が聞いているのか、お願いすると聞いてくれるの。


 《何?外の世界の移動だと?ならば私が行こう!》


 当初の目的のキドさんの馬車馬役に、フォレストホースの青立髪の子が立候補してくれたんだ。キドさんと意思の疎通はできなくとも、言葉は理解出来るからって。


 「フォレストホースさんが来てくれるのなら、こんなに頼もしい事はないですよ!」


 キドさんはキドさんで、怖がるどころか上機嫌だったなぁ。一頭と一人、文字通り馬が合うのか、あっという間に馴染んじゃった。ジニー兄さんを通訳に、もう出発の日時とか必要な世話とか食事の件で話し込んでるの。


 まぁ、これでキドさんの件は大丈夫かな。


 箱庭に一緒に入って来た他のみんなも、フレック兄さん姉さん達と牧場見学に行っている間に……僕は僕で確認する事が増えたんだ。


 ・【牧場の箱庭】追加可能設備 

  獣舎・作業小屋・納屋一覧 柵一覧 作業魔導具一覧・・


 これゲートキーパーの僕だけが追加出来るみたいなんだけどね。

 

 なんと!確認してみたら作業魔導具一覧の中に、箱庭間の物の運搬で有用なコレを見つけたんだ!


 ・マジックボックス(容量特大) SP30


 これは、みんなの為にも絶対取るべきでしょう!それにね、更に注目すべきは柵(フェンス)一覧であったコレ!


 ・有刺鉄線付き金属柵(魔導電熱線付き)1km SP50

  (約1km追加毎にSP10追加)


 物理柵と心理柵の合わせ技とも言うべきこの柵!箱庭には必要ないでしょうって思っていたんだけどさ。


 「ねえ、アル?これって[ゲートインアウェイ]で開拓村の方に出せる?」

 「ハイ、勿論可能デスヨ。タダ、箱庭ト違ッテ柵ノ方ハ魔石ノ交換ガ必要ニナリマスケドネ」


 魔石かぁ。でもゴブリン魔石はいっぱい手に入っているし、他の魔石もあるし、大丈夫だよね……うん!出来そう!


 えへへ。実は僕、此処に来る前にお父さんがこう言っているの聞いてたんだ!


 「俺も一旦領主として王都に行かなきゃいけない時期だし、何とか集落柵だけでも完成させていきたいと思っていたんだが……」


 建築関係のダウロさんとペギーさんに、お父さんお願いしていたんだ。ダウロさん達は「時間がなぁ……」って悩んでいたし。


 多分当座の柵としていいと思うんだ!

 まずは相談してみよっと。

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