二章 新たな村作り
第12話 再開拓は村の掃除から
昨日は、お風呂から上がって来た英雄達を囲んで大宴会!
お父さん達の話に興奮しながら過ごした僕達。食事は困らないし、快適だしで、さっきまでの緊迫感はどこへやら。子供も大人も一緒になって騒いだんだ。楽しかったなぁ。
でも、一難去ってまた一難……
「うわぁ、居る居る……」
今、僕が居るのは、パニックルームの箱庭の一室。監視室っていう外を見ることが出来る部屋で、ゲートキーパーの権限で外を見ていたんだけどね……
「夜ノ内ニ来タンデショウネ。全テヲ焼キ払ウ事ハ無理デシタカラ」
器用に足でボタンを押しながら、監視カメラ視点を変えているのはアル。僕の他にこの部屋に入れるのは、ナビゲーターのアルだけなんだ。
っていうか、そもそも昨日の時点でこの部屋がある事教えてくれたら良かったのに、アルったら「ア!忘レテマシタ!」って今日言うんだもん。マイペースなんだから。
でも、そもそもこの部屋があるってわかった発端は、戦闘終了後の翌朝の出来事なんだ……
*********
「外の様子を見に行くのは駄目だぞ」
朝、食堂で一緒にご飯を食べていた幼馴染3人組の僕達。朝から友達と一緒に過ごせるのって新鮮で、今日の予定を話している時に出た、外に出てみたい発言。
言ったのはジェフだけどね。お父さん達がどれくらいのゴブリンを倒したのか、軽い気持ちで見たいって言ったんだ。そしたらそれを聞いたファストさんが、真剣な表情で駄目出ししたんだ。理由を聞くとね……
「全ての倒したゴブリンを焼き尽くすのは無理だったんだ。そもそも、倒した魔物はすぐ焼くか埋めるかしないといけないのに、そんな暇もなかったからな」
そう、戦いには勝ったけど、開拓村としての結論からすると残念ながら負け。また一から始めなきゃいけない状況なんだって。ゴブリン達が大暴れしたみたいだからね。
それに倒したゴブリンの血の匂いに、他の魔物が寄ってきている可能性が100%なんだって。ファストさん達も確認に行きたい気持ちはあるものの、何せ昨日大活躍した我が村の精鋭4人は未だ爆睡中。
せっかく僕の箱庭ゲートキーパーの力で全員安全にすごせるわけだし、無駄に危険を犯す必要はないだろうってブラムさんが言ってたみたいだよ。村の相談役にそう言われると、仕方ないよね。
でも、安全に確かめる方法ないかなってボソっと僕が言ったら、アルが簡単に「アリマスヨ」って言うんだよ?そこから発展して、今監視室にいる訳なんだけど……
『それじゃ、映すよー!』
監視室の映像をエントランスの大画面モニターに映す事が出来るってアルが説明したら、大人達に頼むって言われちゃってね。今僕らが見ている映像を見れるように接続したんだ。
すると、エントランスホールに響く村のみんなの悲痛な声。
家は瓦礫の状態だし、勿論中はめちゃくちゃ。ゴブリンの死骸があちこちにあって、そのゴブリンを食べに来ている魔物達の姿があったんだ。
母親達は、凄惨な映像に怖がる子供達を抱き抱え食堂に戻り、エントランスホールにいるのはブラムさん達大人男性7人と、フレック兄さんと年の近い見習い自警団の3人。
「やっぱりか……」
ファストさんがため息と共に呟いた後は、その場で今後の話し合いが始まったんだ。って僕居てもいいの?って聞いたら、クレイには悪いがいてくれってブラムさんに言われちゃった。
だって、今後このパニックルームの箱庭が起点となるからね。でも此処を拠点にするって考えは、誰1人持ってなかったよ。
「俺達は開拓民だ。クレイの力にだけ頼るのは違うからな」
格好良い事を言い切るのは、建築担当のダウロさん。その場に居るみんなも、その意見に同意してたよ。
うん。だから僕、この村のみんなの役に立ちたいんだよね。
僕が村のみんなを誇りに感じていると、相談役のブラムさんが話し始めたんだ。
「まずは、あの4人が起きないと話にならないな。だが、どうあっても外の片付けが優先される。不幸中の幸いってとこだが、魔物がゴブリンを片付けてくれている。あの4人が起きたら、少しずつでも駆除と後処理をしていかないとな」
そう言い切るブラムさんとは対照的に、悔しそうな顔表情の見習いのみんな。その様子を見て、大人達は「命がある事を喜べ」と笑顔で励ましていたんだ。
……辺境の開拓って前向きじゃないといけないんだなぁ。
なんか大人の強さをみたって感じだったよ。
それで今日動ける大人達は、海の箱庭や畑の箱庭で採取や収穫、種蒔きをする事に。とりわけハイポーション(高品質)は必要だってお母さん達も駆り出されていたなぁ。
残りの子供達の様子を見るのは、自警団見習いのフレック兄さん達やまだチーム作成に入っていないお母さん達。
で、僕はといえば……
「うーん……?」
「……」
監視室の椅子でアルと一緒に考え中。理由はコレ。
クレイ・リーガン 5 男
HP 450
MP 500/500
SP 720
スキル 箱庭ゲートキーパー〈レベル4.5〉
生活魔法 箱庭錬金
称号 異世界転生者 時空神の祝福
「箱庭レベル上がった訳じゃないのに、なんでSPこんなに増えてるんだろ?」
そう言ったら「ソッチデシタカ」と驚くアル。アルは僕がSPをどう使うか迷っていたと思っていたみたい。
いや、それもそうだけどさ。
アルの説明によると、パニックルームの箱庭の扉を出した時点で残りのSPは240だったんだって。で、1日過ぎたから増えるSPの量は220。此処までは良いんだけど、今回パニックルームの箱庭に村人全員入った事により、残りの26人分のSPが追加されたみたい。
「うえ?チーム作成登録しなくてもSP入るの?」
「非常事態用ノ箱庭デスカラ。但シ、一週間限定デスヨ」
あ、特別SPが入るのが一週間だけって事だよ。念の為。パニックルームの箱庭の扉自体が使えなくなる訳じゃないんだって。ちょっとホッとしたよ。でもそうすると……
「アル。そういえばチームゲートホンだけど……」
「ン?ソレモタップシタラ詳シイ事見レマスヨ?」
[チームゲートホン]SP250
チーム作成登録済みのメンバーと念話可能。箱庭内は登録者同士であれば念話は可能。ゲートキーパーとのみ箱庭外でも念話は可能。
「うわ!コレ良いじゃん!アル!伝令で飛び回らなくても済むよ!」
「イエ、僕ハ楽シンデヤッテマスカラ気ニシナクテモ……」
まぁ、アルがなんか残念そうだけど、コレは是非やってみよう!早速タップして……と。
『チームゲートホンが使用可能になりました。箱庭内はチーム作成登録者同士でも念話が可能です。伝えたい相手を思い浮かべるだけで繋がります。但し、箱庭の外からはゲートキーパーにのみ念話が可能です』
すると、頭の中でいきなり声がしたんだ!あ、もしかして登録者全員の頭の中にアナウンス流れたかな……?
僕の予想通り、16人全員に同時に流れたみたい。寝ていたお父さん達まで驚いて起きたみたいなんだ。みんな一斉に僕に話しかけてくるから参ったよ。でも、やり方がわかったらね……
『クレイ!コレは助かる!やりとりが楽になった!』
ブラムさんを始めみんなから感謝されたよ。ナーシャなんか『ただおにいちゃんをよびたかっただけー』って遊んでくるんだよ。お母さんに後で使い方の事で注意してもらわないと!
そうそうお父さん達だけど、やっぱりまだ眠いって事で、もう一度寝たらしいんだ。昨日かなり身体動かしたからね。それでわかったのが、ハイポーション一本飲み干した副作用は丸二日爆睡するって事かな。お父さん達本人が「そんなに寝たのか!」ってびっくりしていたけどね。
その間、僕は一から揃えるために、色んな箱庭で錬金したよ。特に女性チームから服と下着をお願いされたんだ。今回は道具がないから全部僕の箱庭錬金で作ったんだ。下着は大事だからね。
それに、商人のキドさん覚えてる?実はキドさんも一緒に戦ってくれたんだよ。でも残念ながら、馬車や馬、商品まで駄目になったんだ。それでもキドさん明るくてね。
「駄目になった分は、この村ならすぐ取り返す事が出来ますよ!僕はまず街に戻って家族を連れてくる事にします!」
この村に引っ越しするの中止になるんじゃないかなぁって心配していたけど、キドさん前向きだったよ。早速起きてきたムーグさんやベルグさんに街までの護衛をお願いしてたからね。
そして起きてきたお父さんと自警団リーダーのバースさんが加わって、村の片付けが本格的にやれるようになったんだ。そしたら早い早い。魔物の処理は、大人の男性達と見習いの兄さん達だけで一週間くらいで終わったよ。
それで僕も一生懸命錬金していたら、箱庭ゲートキーパーがレベル5.5になってね!
【箱庭ゲートキーパー】レベル5.5
[箱庭]
・海の箱庭の扉 開放済み
・布の箱庭の扉 開放済み
・畑の箱庭の扉 開放済み
・コモンルームの箱庭の扉 SP400
・パニックルームの箱庭の扉 開放済み(1/2)
・牧場の箱庭の扉 SP300←NEW!
[ゲートキーパー]扉管理者の能力
・箱庭錬金 取得済み
・チーム作成(登録上限32名) SP40←NEW!
・チームゲートホン 取得済み
・ゲートインアウェイ SP250←NEW!
・箱庭化 SP10,000
ね!増えたでしょう!牧場も嬉しいけど、何よりチーム作成の人数が増えた事が嬉しい!箱庭で作業出来る人が増えるからね!因みにゲートインアウェイはね……
[ゲートインアウェイ]SP250
箱庭で錬金した物や箱庭の素材等、ゲートキーパーが望む場所に移動出来る。箱庭外にも素材等の移動が可能。また箱庭外の素材を特定の箱庭へ移動も可能。
コレも助かるんだ!僕やチーム作成登録者が、わざわざ箱庭から物を運び出さなくても良くなるんだよ!おかげでキドさんの馬車を箱庭から出せるからね!
へへっ!建築得意なダウロさんやペギーさんと協力して作ってあったんだ。
でもキドさんの出発は明日。そう、明日起きて牧場の箱庭の扉を開けてからの予定になったんだよ。
もしかしたら、馬がいるかも知れないでしょ?
だから明日が楽しみなんだ!
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