第8話 『コモンルームの箱庭の扉』って?

 「これは上質な塩……これはコショですか!この容器もまた珍しい!それに……砂糖⁉︎どうなっているんです?この開拓地であるはずの無い物だらけじゃないですか!」


 興奮気味のキドさんが、置いていた錬成品達を次々と品定めし始めたんだ。今更隠すわけにもいかず、顔を見合わせる村人達の所にようやくお父さんが戻って来てくれたんだ。


 「キド……!来てくれるのは、今日だったのか……!」

 「グレイグさん!これはどういう事ですか!まさか他の商会から購入するなんて!かなりぼったくられたでしょうに!」


 お父さんに近づき問い詰めるキドさん。


 あ、そっか。普通に考えれば商隊が来たって考えるのか!……まさかここで作っているなんて思わないもんね。


 それにしてもキドさん、心配してくれたのかぁ。とことんいい人だなぁ。僕らから仕入れるのだって、僅かな稼ぎにしかならないのに買い取ってくれるんだよ。


 「あー、わかったわかった。キド、ちょっと外に出よう」


 こうなったら止まらないキドさんを、困ったお父さんは背中を押して外に出したんだ。外からはキドさんの興奮した声と落ち着かせようとするお父さんの声がする。


 しまったなぁ。見られないように、ちゃんと物を貯めておく場所って必要だよね。


 ……あれ?そういえば……


 大人達が外のお父さんに加勢に行く中、僕はアルに確かめる事にしたんだ。


 「ねえ、アル?レベル4になった時に現れた箱庭って何の箱庭?」

 「コモンルームノ箱庭ノ事デスカ?」


 そういえば、まだ見せてなかったよね。今レベル4はこんな感じになったんだ。


  【箱庭ゲートキーパー】レベル4

 [箱庭]

 ・海の箱庭の扉 開放済み

 ・布の箱庭の扉 開放済み

 ・畑の箱庭の扉 SP300

 ・コモンルームの箱庭の扉 SP400←NEW

 [ゲートキーパー]扉管理者の能力

 ・箱庭錬金 取得済み

 ・チーム作成(登録上限16名) 取得済み

 ・チームゲートホン SP250←NEW

 ・箱庭化 SP10,000

 

 コモンルームの箱庭と、チームゲートホンっていうのが新しく来たんだよ。


 「コモンルームノ箱庭ノ扉ハデスネ……」


 アルによると、コモンって共通って意味があるんだって。これから増えていく扉の共通待機所兼休憩所になるみたい、え?簡易保管庫付きなの⁉︎


 「えええ!それって今必要なものじゃん!」

 「デスガ今日ハ無理デショウネ」


 ウッ、流石アル。……だって今の僕のステータスってこれだもんなぁ。


 クレイ・リーガン 5 男

 HP 450

 MP 10/500

 SP 200

 スキル 箱庭ゲートキーパー〈レベル4〉 

     生活魔法 箱庭錬金

 称号  異世界転生者 時空神の祝福


 うーん足りない……。ええと確か、1日過ぎれば溜まるSPは、通常の増加分の+50とアルが出ている事で更に+10。で、今は16人チーム作成に登録しているから+160だから、増えるのは+220。


 明日SPは420になるからコモンルームも開けるけど、ファストさんと約束したしなぁ……


 「ったく、商売人は厄介だよなぁ」

 「商売人を相手に口で勝とうなんて、脳筋のムーグさんには100年早いですよ」

 「おまっ!それひどくね?なぁ、グレイグ!」

 「あー……キドに勝たなくてもいいんじゃないか?」

 「そうだなぁ、ムーグにゃ無理だ」

 「ダウロまで……」


 僕が悩んでいると、ガヤガヤと戻って来た大人組。大きな身体のムーグさんがちょっぴり小さくなって見えるけど。また、口で負けたんだろうな。


 そんな事を考えている僕にお父さんが「ちょっといいか?」って、外での話を教えてくれたんだけどね。


 「クレイ。キドはどうやらこの村に定住すると言っているんだ。住民になるならお前の事を教えない訳にはいかない。話してもいいか?」


 ええ!キドさんこの村に住むの?


 驚いてキドさんの顔を見上げると、キドさんも僕に話してくれたんだ。


 「そろそろブレア商会から独立しようと思って。だいたいうちの商会長ったら、この村に行くよりもっと稼げる場所に行けってうるさいんだよ!命をかけて開拓する人達の苦労も知らないで!

 という事で、どこかに引越ししようか考えていたら、まさかのグレイグさんの領地に良いものを見つけちゃったからね。商人の勘がここだ!って強く働いてね。僕の勘はよく当たるんだよ」


 ニコッと笑っていうキドさん。


 ……商人の勘って凄いなぁ。でも、キドさんなら信頼出来るし優しいからね。お店があると、村のみんなも嬉しいだろうし!


 「うん!キドさんこれからよろしくね!」

 「こちらこそ!クレイ君」


 僕とキドさんが握手していると、お父さんが僕の許可がでたからって、扉の開いている僕の部屋にキドさんを連れて行ったんだ。まあ、扉は見えなくても人が消えたり、中から海の幸や綿花を持って出てくれば信じるだろうし。で、実際説明を聞いたキドさんは……


 「やはり今日決めて正解だったよ!まさかこんな商機が眠っていたなんて!」


 って、すっごく興奮してたなぁ。でもね、ちゃんと考えてくれているみたいで、この村の物は布製品にするんだって。確かに野生の綿花がこの近くであるからね。でもちゃっかり仕入れ先は秘密にして、塩と胡椒と砂糖も売る気だね。「がっぽり稼いで来ますよ」だって。頼もしいなぁ。


 そういえばお父さんもこう言ってたよ。


 「いずれ外貨を稼ぐ方法を考えなきゃ行けなかったからな。キドが来てくれて助かる」


 それは村のみんなも同じ事。村にお店が出来るんだもん。やっぱり気兼ねなく買える方がいいもんね。


 それからは勿論、キドさんの簡易歓迎会という名の宴会だよ。それを聞いた大人のみんなが、海の幸を採って来たり、自警団リーダーのベルグさんがお肉を仕留めて来てくれたし!


 料理はお母さんとルアラさんの料理上手の女性達が、調味料をしっかり使って作ったからね!キドさん、美味い美味いって涙流してバクバク食べてたよ。この村に来る為には携帯食しか食べてなかったから余計に美味しかったんだろうね。


 そうそう。キドさん以外に一緒に人は来なかったの?って思うでしょう?


 キドさん結界スキル持ちなんだよね。移動する時は馬車ごと結界を張って移動するし、自衛も出来るくらいの腕はあるから一人でくるんだって。というか、キドさんの強行軍について来れる人が居ないっていってたなぁ。うん、僕は無理。


 昨日と同じように、お酒が入って賑やかな食堂を早々にお暇した僕。自分のベッドに入ってすぐ寝たんだ。えへへ、実は1番に作った布団僕が貰えたんだもん。柔らかくって肌触り良くってね。はやくみんなに渡さないとね……そう考えて、その日はすぐに眠りに入った僕。

 

 そして次の日……


 お母さん達が起きる前に目がパチっと覚めたんだ。


 んー!スッキリ爽快!


 もう起きちゃえって思って、クリーンをかけて服を着ていたらアルも起きて来たんだ。


 「ゴ主人、オハヨウゴザイマス!早イデスネ?」

 「アル!おはよ!うん、なんか目目が覚めちゃった」

 「ゴ主人、グッスリネテマシタカラネ。……モシカシテ新シイ扉ヲ開ケルツモリデスネ?」

 「うん、確かめたくってね。ファストさん達との約束通り「畑の箱庭の扉」を開けるつもり」

 

 この通りステータスも回復したし。


クレイ・リーガン 5 男

 HP 450

 MP 500/500

 SP 420

 スキル 箱庭ゲートキーパー〈レベル4〉 

     生活魔法 箱庭錬金

 称号  異世界転生者 時空神の祝福


 よし!開けれるね!

 

 「じゃ、アル「畑の箱庭の扉」を開けるよ!」

 

 気合いを入れてタップすると、新たな木のドアが現れたんだ。ドアの上には「畑の箱庭」ってネームプレートも出るから、どの扉かわかりやすいんだ。


 それにしても……


 「僕の部屋、扉だらけになっちゃった……」

 

 四方の壁に扉が一つずつあるんだもん。これじゃちょっと落ち着かないよ。


 「ゴ主人、ダカラ『コモンルームノ箱庭ノ扉』ガアルンデスヨ」


 あそっか。明日になれば『コモンルームの箱庭の扉』が開けるんだもんね。どうなるかわからないけど、それも楽しみだね。


 でも、まずは畑の箱庭の扉を確認してみよう!


 ……ちょっとだけ先に教えてあげよっか?


 畑ってつくものって結構あるんだね。中に入ったらすっごい広大な畑の箱庭だったんだ!入った途端に指示が来たり、僕が欲しかったものまで畑に入っていたんだよ!何だと思う?


 答えとファストさんやクエラさんが大喜びの様子は、明日伝えるね!

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