第6話 今後の打ち合わせと海の箱庭の扉へご招待

 次の日、村中の人が押し寄せてくるのかと思った僕。でも、予想外にも、窓の外の村はいつも通りの風景。


 「ねぇ、お父さん?昨日みんなに僕のスキルの事って伝わったんだよね?」

 

 モグモグ朝食を食べながらお父さんに聞くと、お父さんはにっこり笑って教えてくれた。どうやら、昨日の参加者全員に、きっちり家族の頭として家族を統制してくれるように釘をさしたらしい。


 ……家族思いのお父さんらしいなぁ。


 それでいて、それができるのもお父さんとこの村の人達だからなんだよね。お父さんだけじゃなく、村人全員が仲間思いだし、村の子は自分の子のように見てくれているから出来る芸当だと思う。後は仲間としての信頼かな。うん、凄いよね。


 でもその分家族の頭は質問攻めにあったみたい。朝、それぞれ仕事に行く前に「今日もう一度教えてくれ」って頼み込んできたくらいだからね。ちょっとげっそりしていたもん。


 それで考えたお父さんは、家族の頭達に昼過ぎにまた集まるように伝えたんだ。実際に箱庭に入って貰ったり、アルに詳しく説明をさせる機会を作った方が良いと思ったんだって。


 だから午前中僕達家族は、確認の為にも箱庭に行ったんだ。


 「あれ?お父さん。確かこの木だよね?木箱にした筈の木」

 「ああ、間違いない。父さんもここ最近地形の確認しながら魚を獲っていたからな……」


 アルとナーシャとが浜辺で遊ぶ中、僕とお父さんはコナッツの木をペタペタ触って確認中。お母さんはナーシャを見守りながら、貝を採っていたよ。


 「昨日は、確かにこの木を僕が収納して木箱にした筈だから……もしかして、採取しても一晩経ったら復元するって事?」

 「……だろうな。それに貝だって減らずに同じ場所採れるのも不思議だったんだ」


 僕が出した結論に同意するお父さん。で、思わず2人で顔を見合わせちゃったよ。これって無限採取できるって事だもん。凄い事だけど、村人以外には絶対知られちゃいけないよね……


 考え込んでいたお父さんが、ナーシャと遊んでいたアルを呼んだんだ。そしたらナーシャもお母さんも集まって来たけどね。


 「アル、教えて欲しい。この箱庭の資源は一晩経ったらまた復元するのか?」

 「ハイ、ソノ通リデス。アレ?教エマセンデシタッケ?」


 お父さんの真剣な質問に、軽く答えるアル。……力抜けるなぁ。お母さんは納得した表情をしてたけどね。


 「皆サン、コレダケデ驚イテモラッチャ困リマスヨ!ゴ主人ノ力ハマダマダ伸ビマス!ダッテ、ゲートマダ一ツシカ出シテマセンシ」

 「……そういえばそうだな。クレイ、今何種類の箱庭の扉が出せそうなんだ?」

 「えーと待ってね……」


 お父さんに聞かれて、僕はステータス画面を改めて確認したんだ。


 クレイ・リーガン 5 男

 HP 450

 MP 500

 SP 400

 スキル 箱庭ゲートキーパー〈レベル3〉 

     生活魔法 箱庭錬金

 称号  異世界転生者 時空神の祝福


 あ、SPがまた増えてる!昨日チーム編成したからだね。で、今開けるゲートは……


 【箱庭ゲートキーパー】レベル3

 [箱庭]

 ・海の箱庭の扉 開放済み

 ・布の箱庭の扉 SP200

 ・畑の箱庭の扉 SP300

 [ゲートキーパー]扉管理者の能力

 ・箱庭錬金 取得済み

 ・チーム作成(登録上限8名) 取得済み

 ・箱庭化 SP10,000

 

 布に畑の扉はすぐに出せそうだね!箱庭化はしばらくかかりそうだし、何より村人全員チーム作成でメンバー登録しないと意味ないしって、僕がお父さんに伝えたら、お母さんが僕に確認をして来たんだ。


 「ねぇ、クレイ。クレイは最終的にどうしたいと思ってるの?」

 「ん?村人全員がいい暮らしが出来る様にしたいだけだよ?」

 「そう……。ね、グレイグ。こんないい子をどうすれば守れるかしら?」

 「そうだな。……クレイ、賢いお前ならわかる筈だ。お前の力について野心家や強欲な貴族や商人に知られたらどうなるのか」

 「……うん。多分、僕自身捕まって都合よく使われるだろうね。例え僕が逃げれても、家族や村人達が人質に取られたら僕は逃げられないだろうし……」

 

 僕の答えにお母さんはぎゅっと抱きしめてくれるし、お父さんも頭を撫でてくれた。そしてお父さんは僕の目線まで屈み、まっすぐ目を見て言ったんだ。


 「やはりウチの子は優しい子だ。だからこそ覚悟を決めて欲しい。お前の力はもしかすると国をも動かす。お前は国のために働きたいか?」

 「ううん。だって自由が無くなるんでしょう?僕は家族と村の人達と楽しく生きたいんだ」


 即答した僕の答えに納得したお父さんは、今度はアルを見て質問したんだ。


 「よし、わかった。アル!どれくらいレベルが上がると村人全員入るかわかるか?」

 「レベルアップ毎二倍二ナリマスカラ、レベル4ガオソラク16人、レベル5ガ32人、レベル6デ64人、ココマデレベルヲアゲル必要ガアリマス」

 

 そっか!僕のためにも村人全員の保護が優先されるんだ!うん、僕だって1人も欠けて欲しくないもんね!だったらやる事は一つ!


 「アル!どうすればレベルアップが早くなる?」

 「トニカク、ゲートキーパートシテ扉ヲ多ク開放シテ下サイ。更二箱庭錬金ヲ、毎日MPガナクナル手前マデ使イコンデ下サイ」


 アルの言葉を聞いてやり方がわかった僕は、家族全員と目を合わせて宣言したんだ。


 「僕は、僕の為にもみんなの為にも、まずはレベルアップを頑張るよ!そして村人全員をチーム作成出来る様にして、村を箱庭化する!」


 僕が明確な指針を口に出した事で、家族も決意してくれたみたい。お父さんお母さんは勿論、ナーシャまで真面目な顔をしているんだもん。


 「よし!早速昼にもう一度その事について話し合うか!なぁに、クレイが頑張ってくれるなら、対外的な事はお父さん達の出番だ!」

 「あら、お母さん達だって労力になるわ。女達がまとまると凄いんだから」

 「ナーシャも!ナーシャだって頑張るもん!」


 目標が決まった事で更に家族が一丸となって動き出したんだ。まずはお母さんがナーシャを連れて、奥様会議を開いてくるわって家を出ていったんだ。お父さんは「シュナ、俺らの昼飯は?」って言ってたけど、僕らで男飯作ればいいじゃないって事で、海岸でバーベキューした物を出す事にしたよ。


 そして、僕らが準備しているとあっという間にお昼になって、各家族の頭が集まって来たんだ。全員が揃ったところで、豪快な料理が並ぶ中話し合いが始まった。


 そして食べながら、お父さんが話し始めたんだ。改めて僕の力は規格外という事、そして、僕が目指す先と僕の力が他に漏れた場合の影響力について。


 僕の力については、まだ全員が実感していないから何とも言えない雰囲気だったけど、僕の願いを聞いてみんなが褒めてくれた。そして全員が協力を惜しまない事を宣言してくれたんだよ!嬉しかったし、誇らしかったなぁ。


 それで食事もあらかた済んだところで、二組のグループに分かれたんだ。海の箱庭の扉に入る組と、アルから詳しく話を聞く組にね。


 扉組の僕とお父さん、ブラムさん、バースさん、ファストさん、ゼンさん、ディランさんで移動して、開放された海の箱庭の扉をみた時……僕ら以外みんな驚いてたなぁ。


 「聞いてはいたが……扉が本当にあるんだな……」


 ブラムさんの呟きに同意しながらも、バースさんは片手だけ扉の内側に手を入れて確認してたんだ。


 「気温の差が凄い……!扉の中は夏か!」


 僕とお父さんはみんなの様子に笑って、先に扉の中に入って安全だという事を証明したんだ。するとようやく、扉の中に入って来るブラムさん達。


 「確かに別世界だ……!」

 「凄え……!これが海か……!」


 立ち止まって辺りを見渡すディランさんに、波打ち際まで歩いて行くゼンさん。ファストさんは奥のコナッツの木を叩いて確かめているし、バースさんはどうやら危険がないか周囲を見定めていたみたい。流石、自警団リーダーのバースさん。


 みんながそれぞれ動き出す中、最年長のブラムさんは僕のところに来て、箱庭錬金をみたいって言ってきたんだ。僕はすぐに頷いたよ。


 そうだ!お母さんに言われていたコショの実を錬成しよう。ついでにコナッツの木も収納して、コショの粉を入れる容器も作ろうかな。


 そう思って僕がステータス画面上で作業していると、僕の後ろにいつの間にか5人集まってきてたんだ。全員興味深そうにステータス画面を覗きこみ、出来たコショをコショの容器に入れて各家族分出したら「おおお‼︎」って5人分の驚嘆の声を貰ったよ。


 「おいおいおい……コショの実だぞ。こんな簡単に手に入って良いのか……?」

 「しかもクレイ、この形なんだ?」


 コショの実の価値を考えると信じられない様子のバースさんに、早速出て来たコショの容器を手に取って不思議そうにしているブラムさん。


 あ、コショの容器は、僕の前世の記憶にあった容器にしてみたんだ。上の部分に小さな穴をいっぱい開けて、持ち手を持って逆さにすると中身が出るようにね!


 「すっげー便利じゃん」と自分も料理をするファストさんが関心している横で、コショの品質を確かめるブラムさん。品質も最高だって感動してた。


 ゼンさんやディランさんからは「塩も作ってみてくれ!」って頼まれたからまた作ってみたよ。塩はいっぱいあっても良いもんね。


 で、作成した物を次々出していたんだけど、僕の一回の錬成にかかるMPは10だったんだ。だからまだまだ作れそう。それで全員に集まって貰って、必要な家具はないか聞いて机や椅子や棚も作ってみたよ。家具を作ってもかかったMPは一律10だったね。


 そうそう、コナッツの実もいっぱい収穫出来て、コナッツオイルとコナッツミルク、コナッツパウダーも出来たんだ。これは我が家で使い方を研究してから、各家庭に渡す事にしたよ。


 そして後の時間は、全員採取に精を出してたなぁ。お父さんと一緒に魚を釣りあげたり、貝を採ったりしているバースさんにディランさんにゼンさん。


 最年長のブラムさんと畑が得意なファストさんは、他の野菜も採取してたよ。浜大根に似た物や豆類があったんだって。見落としてたなぁ。


 あとね、サトウキビに似たサトーキもあったんだよね。これは早速錬成したよ!砂糖があるって大事だよね!


 しばらくすると、流石に収穫物がいっぱいになったんだ。それで収穫物を持って全員箱庭から出ると、アルに話を聞いていた4人が「遅い!」って仁王立ちしていたけど。どうやらもう一組も聞けば聞くほど見てみたくて、僕の部屋まで移動して来てたみたい。


 そして成果を見せると、余計に行きたい気持ちが勝ったのか、僕に「早くレベルアップしてくれ!」と頼みこんで来たんだ。4人の迫力がすごくて僕も苦笑い。でも頑張るね!って言ったら宜しく頼むなって言って、4人共バシバシ背中叩いて来るんだもん。痛いって〜。


 でね、台所は台所で、お母さん主催の奥様会議が開かれていたんだ。やっぱり僕ん家が1番広いからね。料理や雑事は任せなって言うマーサさんや奥様達が頼もしいったら。


 とりあえず話し合いはそれぞれ終わっていたみたいだし、今日の収穫物を各家庭に渡して今日は一旦解散。塩、胡椒、砂糖を渡した時の奥様達の喜び様は凄かったなぁ……魚や貝も喜んでくれたけどね。


 でも次の日に新たな扉を開けた時、レベルアップした事を伝えた時の反応が1番凄かったなぁ。だってチーム作成16人だよ!更に8人って事で奥様達も入れる様になったんだ。入る順番はもうじゃんけんで決まっていたんだって。流石だね。


 え?何の箱庭の扉を開けたのかって?

 僕が開けたかった扉なんだ!

 さて何だと思う?

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