第4話 箱庭の使い方
僕が先頭に立って扉に入ると、お父さんとお母さんは慎重にゆっくり辺りを見廻しながら入ってきたんだ。ナーシャは警戒心がないから喜んで入って来たけどね。
「凄いな……」
「気温まで違うのね……」
大人組は状況を受け入れるので精一杯の様子なのに、ナーシャは浜辺に走っていって海の波で遊んでる。ナーシャ海見るの初めて見るはずなのに怖がらないなぁ。あ、ナーシャ!それ以上入ったら危ないよ!
「ナーシャ!戻っておいでー」
「きゃははは!はーい!」
子供は馴染むの早いなぁ。って今は僕も子供だけどさ。お父さんは海を確かめているし、お母さんは「あら木ノ実?」ってコショの実触ってるし。いろいろ確かめているみたい。あ、そうだ。
「アル、この箱庭に人間を襲う動物っているの?」
「存在スル箱庭モアリマスガ、ゲートキーパーヤチーム作成シタメンバーニハ襲イカカリマセンヨ」
「そうなんだ。いる事にはいるんだね」
安全は確認できたから、僕はみんなが落ち着くまで浜辺に座ってのんびりしてよっと。
しばらく僕が日光浴していると、お父さんもお母さんも確認が終わったのか僕のところに戻って来たんだけど……
「クレイ、これはいつでもここに来て魚が取れると言う事かい?」
「クレイ?あの木ノ実ってまさかコショの実って言わないわよね」
二人共近い近い!一旦離れてもらって、アルが丁寧に質問に答えながら説明し終わると……
「凄いぞ!まさか魚や貝まで手に入るとは!」
「ええ!コショの実なの⁉︎あんなに沢山あるのよ!嘘みたい!」
「なぁーに?どうしたの?」
二人共すっごい喜んじゃってね、波打ち際で遊んでいたナーシャも駆け寄って来たんだ。僕も嬉しくなって「そうでしょ、そうでしょ!」って一緒になって喜んでいたんだ。
でもね、すぐにお父さんがちょっと難しい顔をして言い出したんだ。
「なあ、クレイ。この事はとりあえず家族だけで様子を見させてもらえるか?ちょっと色々確かめたい」
お父さんの提案は勿論最初のうちはそうだろうなぁって思ってたから、当然僕も了解したよ。そしたらお母さんも、
「そうね。確認は必要ね。ナーシャもいい?しばらくこの事は家族だけの秘密に出来る?」
「ナーシャできるよ!」
って言う事になったんだ。お母さんは僕を抱きしめながら、お父さんはナーシャを抱き上げて僕の頭を優しく撫でながら僕とナーシャに言い聞かせたんだ。
……ってそう言ったのは良いけど。それからの家族の行動がね……
「クレイ!あの岩場穴場だな!魚がバンバン釣れるぞ!」
お父さんに釣りを教えたら、お父さん暇を見つけては魚釣りに来るんだもん。最近は魚取りすぎて処理が大変だって言っているのに。流石に近所の人に配るわけにはいかないんだから!って言ったら「……そうか。そうだよな……」ってちょっと寂しそうだったけど。お父さん村のみんなの分つい釣っちゃうんだって。気持ちわかるけどさ。
「クレイ貝取って来て〜。スープのダシにするわ。あとコナッツもね」
その点お母さんは料理と言う武器があるからね。お母さん村1番の料理上手だから食材が増えて色々チャレンジしているんだ。あと、僕の知識も伝えているしね。今はスープが凄い美味しくなってきたんだ。この匂いに惹かれて我が家に来る奥さん達の対応も、今のところ上手くかわしながらみんなにお裾分けしてるよ。すっごい美味しいからリピーターが毎日来るんだ。一品料理を持って交換にね。
「おにいしゃん!アルかしてくだしゃい!」
ナーシャは遊びながら色々学んでいるんだ。教師役?うーん遊び役かなぁ、アルは。でも色々興味があるナーシャの「なんで?どうして?」にアルは上手く答えるんだよなぁ。最近のアルはナーシャの肩にいる事が多いくらいだよ。
で、僕?僕といえば……
「おい、クレイ。いい加減教えろよ!お前の家で何やっているんだ?」
「そうだよ!何か面白い事隠しているだろ?」
久しぶりに村の中で遊ぼうとした僕は、友達のジェフ(5)とケイル(5)に問い詰められている最中。僕もうかれてたんだよなぁ。楽しくてここ数日箱庭の中入ってたんだもん。そりゃ毎日朝から晩まで一緒に遊んでいた3人組の一人が家からずっと出てこなくなって不思議に思われるよね。しかもいきなり味が変わったスープのお裾分けが僕の家から来るんだもん。子供だって何かあるって思うよね……
「あーうー……まぁそう思うよねぇ……」
僕はちょっと遠い目をしてしまったよ。
僕達家族隠す気ないなぁって……
とりあえず二人には「明日から絶対一緒に遊ぶから」って言って逃げてきたけど。後ろから「後で教えろよー!」って二人の声聞こえてきたのをどうしようかなぁって思いながら家に戻ってきたんだ。
「あらクレイ?早かったわね?」
玄関でいたお母さんも近所のマーサさんとミーナさんに捕まっているみたい。「で、どうやって作るの?」「あの不思議な食感は何かしら?」って聞かれてるよ。うーん、ここでもかぁ……
とりあえずお母さんは僕にクリーンかけてくれて、僕は家に入る事は出来たけど、お母さんは話好きのあの二人にしばらく捕まって逃げれなそうだなぁ。
そう考えながらトコトコと部屋に向かい、僕は僕の部屋に出しっぱなしの海の箱庭の扉を開く。
「あ!おにいしゃん!おかえりー!」
「ゴ主人オ帰リナサイ」
丁度砂遊びをしていたナーシャが砂だらけの格好のまま僕に飛び込んできた。その後をアルも飛んで迎えてくれる。
「お!クレイも来たか!」
あ、お父さんも来ていたんだ。……魚いっぱい釣ってきてるなぁ。また干物にするんだね。
今箱庭の中で魚の干物作りをしているお父さん。お父さんに作り方簡単に教えたら、魚を捌くのは上手くなったんだ。で、お父さんが試行錯誤しながら出来上がった干物が結構溜まってきているんだ。
「もう〜!お父さんどうするの?そんないっぱい作って」
「いざと言う時の食料になるだろう?」
「箱庭あるから大丈夫じゃん」
「まぁな。だがクレイ、父さんな……やっぱり村の人達にもこの食料をお裾分けしたいと考えているんだ。それでアルに聞いてみたんだがな。アル、説明お願いして良いか?」
「当然デス!ゴ主人、先程マタレベルアップシマシタ。ステータス開イテクレマスカ?」
「ええ!もう?」
だってチーム作成してからまだ四日しか経ってないんだよ?と驚きながらステータス開いてみた僕。
クレイ・リーガン 5 男
HP 450
MP 500
SP 460
スキル 箱庭ゲートキーパー〈レベル3〉 生活魔法
称号 異世界転生者 時空神の祝福
「あ!凄い!SPの量が増えているよ?」
「レベルアップニヨリSPノ数ガ300ポイントニ戻リ、更ニココ数日ノチーム作成ニヨル毎日ノSPノ増加分160ポイントノ合計トナリマス」
「ん?1日SP40ポイントずつ増えたの?」
「ハイ。僕ガ出テイル事デ毎日SP10ポイントハ追加サレマスシ、更ニ毎日一人10ポイントチームノ人数分増マスカラ」
「そっかぁ!やったね!」
「ゴ主人、スキルモ開イテ下サイ」
「うん、そうだね」
【箱庭ゲートキーパー】レベル3
[箱庭]
・海の箱庭の扉 開放済み
・布の箱庭の扉 SP200
・畑の箱庭の扉 SP300←NEW!
[ゲートキーパー]扉管理者の能力
・箱庭錬金 SP150
・チーム作成 SP40(登録上限8名)←NEW!
・箱庭化 SP10,000←NEW!
「うわぁ!また増えているね!今度の扉は畑だ!と言うかチーム作成の上限が増えてるし、箱庭化?」
「ゴ主人、箱庭化ヲタップシテ見テ下サイ」
「う、うん」
・箱庭化 SP10,000←NEW!
新たに縦100m横100mの正方形の範囲を箱庭化可能。箱庭化するとその範囲の空間、天候、気温の調整可能。箱庭錬金も使用出来る。チーム作成登録済みのメンバーのみ扉が見え出入り可能。
「え?これって僕も箱庭作れるの?」
「勿論デス!開拓村ヲ箱庭化モ出来マスヨ」
アルの言葉にお父さんの顔を見る僕。お父さんは頷き、お父さんは僕に考えを伝えてくれた。
「今日アルが教えてくれてから考えていたんだが、やはりこのクレイの力を守る為には村のみんなを巻き込んで守って行きたいと思ってな。
いや、むしろクレイにお父さん達が守られるかもしれないが……。
クレイも知っての通りこの領地に来てくれたのは、お父さんの古い知り合い達だけだ。お父さんを慕ってその後に続いてくれた村人家族もいる。……お父さんだけいい思いはしたくないんだ」
お父さん気持ちを僕に伝えたら、申し訳ない顔をして苦笑いしてる。これ以上は僕の意見を聞く為に頼み込んでこないけど、お父さんの気持ちはすごくわかる。
だって此処、辺境の辺境だよ。開拓されてないと言う事は危険とも隣り合わせだし、農業しようにも地面は硬い。今は山の恵みがあるからいいけど、これから初めての冬が来る。生活は厳しいのが現状なんだ。今は街から仕入れたものがあるからなんとかなっているけど、お父さんが悩んでいるのも知ってる。
そんな中でも僕ら家族の力になる、と言って付いてきてくれた人達は子供を合わせて43人。10組の家族が一緒に開拓しているんだ。
今日もお肉を持って来てくれたり、きのこや木ノ実を分けてくれているんだもん。
僕もお父さんと同じ気持ち。
この力、村のみんなに役立つなら使いたい!
「お父さん。僕もね、今日久しぶりにジェフとケイルと会ったんだけど、ここしばらく箱庭に篭っていたのやっぱり不思議に思われたんだよ。それでどうしようって思って帰ってきたんだけど……レベルアップして尚更思ったよ。みんなにも伝えたいって。お母さんだってマーサさんとミーナさんに捕まってたし、スープの具だってそのうちバレちゃうし。協力してもらおうよ!ううん、みんなと一緒に幸せになりたい!」
するとお父さん、言い切った僕を持ちあげてクルクル回り出したんだ。
「そうか、そうか!クレイ!ありがとう!ありがとう!」
お父さんの満面の笑顔に僕も嬉しくなったよ!それに久しぶりに高い高いして貰って面白かったしね。ナーシャもそれを見て、「あーじゅるいー!ナーシャもー!」って言って僕の後にお父さんに回されて満足したみたい。
それでね、お母さんもそろそろマーサさん達の話から抜け出しただろうし、家族会議をしようってお父さんが提案したんだ。村のみんなに話すにしてもどこまで話すか、誰を先にチームに入れるか話しあわないと、だって。
うわぁ!なんかワクワクして来た!
僕の力がみんなの役に立つんだね!
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