第3話 もう少し探索とチーム作成

 僕は部屋に戻ったんだけど、みんなを連れて来ようにもまだ扉の外は真っ暗だったんだ。失敗失敗。そりゃそうだよね。僕は気を取り直して、もう少し海の箱庭の中を探索する事にしたんだ。


 「ねえ、アル。箱庭の中にあるものって鑑定みたいな事できるんだっけ?」

 「勿論デス。対象ニ向カッテ鑑定ゲートキーパービュート唱エテ下サイ。慣レレバ意識スルダケデ大丈夫デスヨ」


 うわぁ、厨二臭い事やっぱりあるんだね。助かるのは慣れたら言わなくて良い事かな。


 そう、僕が調べたいのは食材があるかどうかなんだ。今はSPが足りないから箱庭錬金で塩は作る事はできないけど、出来る様になったら調味料が手に入るかもしれないんだよ!僕あのうっすいスープも飲めるけど、やっぱり日本人の記憶が戻ったなら物足りないんだ。日本人の舌って贅沢だもん。


 その為には海辺の後ろに植生している物たちを把握しておきたかったんだ。なんか結構緑が沢山あって、と言うか1番気になっていたのはこれなんだけどね。


 「鑑定ゲートキーパービュー!」


 [サトーキ]

 地球で言うところのサトウキビ。良質。収穫可能。箱庭錬金にて良質の砂糖になる。そのまま齧る事も可。


 うわぁ、目の前に文字が浮かんできたよ!でもやっぱりそうだった!なんか似てるなぁって思ってたんだよね!砂糖も手に入るんだ!嬉しい!


でね、面白いのが結構広範囲にある植物の事も表示されているんだ。


 [コショの木]

 地球で言う胡椒の木。既に実がなり収穫期。箱庭錬金にて、ブラックペッパー、グリーンペッパー、ホワイトペッパーになる。


 [コナッツの木]

 地球で言うココナツヤシの木。実は硬く割にくい。箱庭錬金にて処理を推奨。コナッツミルク、コナッツオイル、コナッツ水など利用価値の高い植物。特にコナッツ水は美味。


 [パムの木]

 地球で言うパームヤシの木。実からパム油が錬成出来る。実を採っても1日すると次の実がなっている不思議植生。


 うわ、うわ!嬉しいなぁ!僕が欲しいものばっかり!塩に砂糖に胡椒に油まで手に入るんだよ!しかもコナッツ水は飲んでみたい!ナーシャも喜ぶだろうなぁ。


 あとね、海の中も鑑定してみたんだけど、食べられる物がいっぱいあったんだ。貝や小魚や昆布も見つけているし、沖に行けば魚も採れるって。うわぁ船欲しいなぁ。


 いっぱい調べていっぱい素材がある事はわかったけど、僕一人じゃどうにもならないなぁ……うん、もう一回ベッドに入ろうっと。


 全部一人で見て騒いでいるのもなんとなく寂しい気がして、僕は箱庭から自分の部屋に戻ったんだ。でもまだやっぱり暗いままだったから、クリーンをかけてもう一度ベッドに潜った僕。


 ふふっ、みんなどんな反応するかなぁ。あれ?アルは?僕の枕の横で毛繕い中か……アルも一緒に寝るんだね。あ、扉はどうなったんだろう?鍵閉めてない……けど……

 

 「……レイ……クレイ……クレイ起きて。朝よ」


 んー……お母さん?……あれぇ、もう朝になったの……?という事は、あれからすぐに寝ちゃったんだね。


 目を擦りながら起き上がる僕に、「おはよう、お寝坊さん」とお母さんがおでこにキスをしてくれた。ボー……としながら部屋を見ると海の箱庭の扉が開きっぱなしになっているのが見えたんだ。眠気が一気に冷めてお母さんの様子を見ても、「なあに?」といつもの笑顔。これって扉見えてないのかな?コソッとアルに聞いてみよう。


 「ねえ、アル?扉開いたままなのにお母さん見えてないみたいだよ?」

 「ゴ主人。チーム作成シナイト見エナイヨウニナッテイマス」

 

 お母さんが背を向けた時に聞いてみたら、アルが見えない理由を教えてくれた。


 そっか、よかったぁ。僕が寝てる間に見つからなくて……


 お母さんが着替えて台所に来るように言って出て行ったあと、僕も着替えて扉を閉めたんだけど、


 「アル?鍵を閉めた方が良いの?」

 「鍵ヲ閉ルト扉ト鍵ハ消エマスヨ。次ニ出ス時ニハ『ゲートオープン』ト言ウトマタ現レマス」


 アル曰く出しっぱなしでも良いんだって。扉が開いていても中にいる物は箱庭から外には出てこないって。それにチーム作成後は扉を出現させる場所を決めた方が良いって、アルがアドバイスくれたけど。……うん、ご飯食べてから話してみようかな。


 アルを連れて台所に行くと、お父さんとナーシャが既にご飯を食べていたんだ。あ、お父さんいるの珍しい。今日は仕事お休みなのかなぁ。


 「お、クレイ。おはよう」

 「おにーしゃん、おはよー」


 僕を挨拶で迎えてくれた二人に挨拶をして席に着くと、コトリとあったかいスープとパンをお母さんが準備してくれた。そういえばパン一個しか食べてなかったっけ。


 「クレイはゆっくり食べなさい。急いで食べると身体がびっくりするわよ」


 お母さんも席に着きながら優しい笑顔で言ってくれたんだ。スープの湯気と一緒に丁寧に処理された優しい野菜の匂いがして、僕のお腹を優しく刺激して来る。お腹が早く食べなさいって言ってるし、食べてから話そうっと。


 いつもだったらお父さんも忙しいし、ナーシャも動きたいからすぐ台所からいなくなるんだけど、今日は僕のスキルの事で話があるからってちょっと待っていてもらったんだ。アルが大人しく撫でさせてあげてくれているおかげで、ナーシャご機嫌だしね。お母さんはお父さん達にお茶を出しながら、僕が食べ終わるのを待っていてくれるけど……


 「ねえ、アル。僕が食べ終わるまで、お父さん達に僕のスキルを説明してくれないかなぁ?」

 「畏マリマシタ、ゴ主人」


 僕が説明するよりアルの方が詳しいし、説明をお願いしてみたんだ。箱庭ゲートキーパーの事、ゲートキーパーのスキル、海の箱庭の扉の事、チーム作成の事。お父さんもお母さんも一つ一つに驚きながら質問したり考え込んだりしてた。ナーシャは途中からアルにちょっかい出してたから、話に飽きてたんだろうね。


 「……ソシテ現在ゴ主人ノ部屋に扉が現レテイマス。是非皆サマチーム作成ノ登録をオ願イシマス」


 アルが話終える頃には僕も食べ終わっていて、お父さんお母さんの反応をみていたんだ。二人共ジッと僕を見てから顔を見合わせている。僕は言いたい事を我慢して二人の様子を黙ってみていると、お父さんが僕に話しかけてきた。


 「……クレイ。アルがいる事で本当の事だとはわかっているが、やはり信じがたい。まずはその扉とやらを見せてくれないか?」

 「そうね、聞いた事のないスキルだもの。まずは見てみたいわ」

 「ナーシャも!ナーシャもみたい!」


 僕も了解して全員で僕の部屋に移動したけど……


 「何もないぞ?」

 「え?クレイ?どう言う事?」

 「ないねぇー」


 あ、やっぱりみんなには見えてないんだ。じゃ、早速やってみよう。ステータス画面から箱庭ゲートキーパーをタップしてっと。


 『チーム作成をします。現在のレベルでは定員は4名。オーナーは除外した人数です。チーム名、名前、性別をステータス画面に登録後、一人ずつ鍵に魔力登録をお願いします』


 僕がステータスボードを操作している間に、アルがお父さん達に説明をしてくれた。ありがとう、アル!これで集中して作業出来るけど、チーム名どうしよう……いいか、これで。


 で、こんな感じ。

 

 『 チーム名:ファミリア  ゲートキーパー:クレイ・リーガン

     名前        性別

 → 1・グレイグ・リーガン   男  未登録

   2・シュナ・リーガン    女  未登録

   3・ナーシャ・リーガン   女  未登録

   4・ ーーーー            』


 ファミリアは家族って意味だけど、親しいって意味もあったと思うからチーム名をこれにしたんだ。もし、他の人が入っても大丈夫でしょ?で、1番がお父さん、2番がお母さんの名前だよ。


 アルによると、後は番号順に鍵に触ってもらうと良いんだって。1番はお父さんだね。扉についたままだった鍵をとって、お父さんの前に行く僕。いきなり鍵が現れたから、お父さんちょっと驚いたみたい。


 「お父さん、触ってみて」

 「……ああ」


 なんか覚悟を決めた表情のお父さん。僕が大丈夫だよ、といいながら差し出す鍵にお父さんの指が触れると、鍵がぽわっと青く光ったんだ。アル曰く「登録完了デス」だって。


 「うおっ!本当にあったのか!」

 「え?あなた見えたの?」

 「ナーシャもみるぅー」


 驚くお父さんに興味深々のお母さんとナーシャ。二人にも登録してもらったら「きゃっ!」と驚くお母さん。「みえたー!」ってナーシャに至っては喜んでいたけどね。ナーシャ大物になるなぁ。


 とにかく、これでみんな箱庭に入れるね!

 

 「じゃ、みんな!僕についてきて!」

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