第2話 『海の箱庭の扉』開いたよ
「で、どういう状況なんだ?これ?」
「えーとね……」
家族の賑やかな声に、お父さんも僕の部屋に様子を見に来たんだ。僕はベッドに寝たままだけど、ナーシャがアルを追いかけ回しているの。お母さんは笑顔でその様子を見ているんだけど。
「ゴ主人!助ケテクダサイ!」
「あー!おにいしゃん、ずりゅい!」
飛び回って結局僕のところに避難して来たアル。ナーシャはまだ僕のベッドの上に1人で来れないから悔しそうにしてる。
「ふむ、クレイ。説明できるかい?」
お父さんの目線はアルに釘つけだから、この短い間に何があったのか僕に問いかけている。
……僕、家族を信じるって決めたんだ。みんな必ず僕の言うことを信じてくれるって。簡単には信じてもらえる話じゃないけど。
「……あのね。信じられないかもしれないけど……」
すっごくドキドキしながら家族に全部話したんだ。僕には既に箱庭ゲートキーパーと言う能力があった事。アルはそのスキルの案内役だって事。3日前に前世の異世界での記憶が蘇った事。でも僕は僕である事。最後は少し涙声になっちゃったけどね。
「……信じてくれる?」
僕の言葉に反論も横槍も入れずに、ずっと静かに聞いてくれたお父さんにお母さん。ナーシャは途中からわからないって顔してたけど。静かな室内の雰囲気に僕は涙目。やっぱり信頼してても勇気がすっごくいったんだよ。すぐに受け入れられない可能性があるもん。
そんな不安そうな僕を、お母さんがぎゅっと抱きしめてくれたんだ。
「クレイ。貴方はやっぱり私の可愛いクレイよ。嘘や隠し事は駄目よっていつも言っていたのをきちんと守ってくれたのね」
優しい声で「大丈夫よ安心しなさい」って言ってくれたお母さん。
「そうだな。なんでも家族に相談するように言ってきた甲斐があったな。クレイはクレイだ」
「ナーシャのおにいしゃんはおにいしゃんだもん!」
お母さんに続き、お父さんも僕の頭を優しく撫でながら受け入れてくれたんだよ。ナーシャはわかっているのかなぁ?でも3人共僕の言う事を信じてくれた……
嬉しかったけどドキドキし過ぎたのかなぁ。感情が高ぶって泣き出しちゃったんだ。そんな僕をお父さんもお母さんも優しく包み込んでくれたんだよ。おかげ安心しちゃっていつの間にか眠っちゃったんだけどね。
次に気がついたら辺りが真っ暗になってた。家の中も静かだし、……今何時なんだろう?
「ゴ主人?オキマシタカ?」
「アル?」
暗闇の中、アルの声が僕の頭の横から聞こえてきたんだ。アルはどうやら僕の枕の横で寝ていたらしいね。
「ごめんね。起こしちゃった?」
「大丈夫デス。一緒ニ寝テイマシタカラ」
「そっか。……ねえ、アル。僕どれくらい寝てたかな?」
「今ハ真夜中デス。ゴ主人ハ晩御飯ヲ伝エニ来タ妹サマニ呼バレテモ起キマセンデシタヨ」
そうだ、晩御飯……思い出した途端に僕のお腹が空腹を訴えてきたんだ。どうしよう……お腹すいたけど台所に行ったらみんなを起こしちゃうかもしれないし。
「ゴ主人。パントオ水ナラアリマスヨ」
アルが枕元に置いてあったパンと水がある事を教えてくれた。アルによると、どうやらお母さんが置いといてくれたみたい。うわぁ、助かったぁ。暗闇に目が慣れてきたから、僕は身体を起こしてパンに手を伸ばしたんだ。噛みごたえのあるパンをモムモム食べながらアルにスキルの事を聞いてみた僕。
「ねえ、アル。スキルについての話途中だったよね。教えてくれる?」
「ゴ主人。デシタラモウ一度スキルヲ開イテ頂ケマスカ?」
「うん、いーよ」
クレイ・リーガン 5 男
HP 450
MP 500
SP 310
スキル 箱庭ゲートキーパー〈レベル2〉 生活魔法
称号 異世界転生者 時空神の祝福
「あれ?アル、レベルが2になってるよ?SPも戻って10増えてる!」
「僕ガ一定ノ時間出テイタノデレベルアップシマシタ。ソレニヨッテSPガ戻リ、次ノ日ノSP分ガ加算サレテイマス」
「へえ!じゃ、アルが僕の側に居るとすぐレベルアップするものなの?」
「レベル1ノトキダケデス。レベル2カラハ上ガリズラクナリマス。ソレヨリゴ主人、スキルヲタップシテミテクダサイ」
「え?これも変わっているの?」
【箱庭ゲートキーパー】レベル2
[箱庭]
・海の箱庭の扉 SP250
・布の箱庭の扉 SP200
[ゲートキーパー]扉管理者の能力
・箱庭錬金 SP150
・チーム作成 SP10
「あ!色々増えてる!」
「ハイ。先程増エマシタ。ソレデゴ主人、宜シケレバ『海の箱庭の扉』ヲ開ケテミマセンカ?」
「いいけど……実践で教えてくれるの?」
「ハイ。ソノホウガ効率ガイイノデ」
「そっか、面白そうだね!やってみる」
アルに教えてもらった通り『海の箱庭の扉』をタップすると……部屋の壁側に光る扉が現れたんだ!それに、いつの間にか僕の手に鍵があったんだよ。これが扉の鍵?
「サアゴ主人、ソノ鍵デ扉ヲ開ケテクダサイ」
僕の肩の上に移動してきたアルが戸惑っている僕に扉を開けるように促してきたんだ。……アルもいるし、大丈夫だよね?少し不安になりながらもガチャッと鍵を開けて扉を開いたらね……サアっと潮の香りが僕を包み込んだんだ。
うわぁ、懐かしい!海の匂いだ!
ワクワクして扉の中に入ったら、目の前に綺麗な扇状の入江が広がっていたんだ。白い砂浜に、陸地には植物も見える。そしてね、海を囲う様に岩礁があって、その先にもコバルトブルーの海が広がっていたんだよ!
「うわぁ!うわぁ!凄い、凄い!」
「ゴ主人!待ッテ!」
感動のあまりいきなり走り出した僕の後ろを、慌てて追いかけてくるアル。だって僕今世で初めて海みたんだよ!これがはしゃがずにいられる?
「きゃっほー!」
靴も服も脱いで裸でバシャバシャと海に飛び込む僕。あ、でも泳げるかな?犬カキならいけるかな?
「ゴ主人〜!気ガ済ンダラアガッテキテクダサイネ〜!」
ご機嫌でチャプチャプと泳ぐ僕の頭の上を飛ぶアル。「りょーかい!」と返事をすると、アルは砂浜の方に戻っていったんだ。波も穏やかだし、海の透明感が凄い綺麗なんだよ。小魚もいたし、貝もいっぱいいたんだ。
ある程度泳いだら身体の力を抜いて、ぷかぷか波に漂ってみたんだ。日差しも強いし、ここの気温は夏なんだね。天気は快晴、雲一つない……って、アレ?ここって天気ってあるのかな?というかこの箱庭に他に動物とかいるのかな?……僕、考えたら結構危ないことしてない?自分のスキル内とはいえ、調べてから入るべきだったかも。
ちょっと反省しつつ、浜辺に戻ってきたらアルが飛んで来た。あ、どうしよう?身体拭くものもないや。これはやらかしちゃったなぁ。
「ゴ主人?ドウシマシタ?」
「ん?拭くもの持ってこなかったからどうしようかなって……」
「ゴ主人、生活魔法使エマスヨ?『クリーン』ト『ドライ』ッテ唱エテミテクダサイ」
そういえば生活魔法もあったっけ。ん?何、アル?イメージしながら唱えてみてって?うん、やってみる。
「『クリーン』からの『ドライ』!」
お風呂のイメージとドライヤーのイメージでやってみたら、ぽわっとあったかい光の後にフワリと風が吹いて身体が乾いて綺麗になったんだ!うわぁ、さっぱりー!僕、お母さんからしか『クリーン』かけて貰った事ないけど、こんなにさっぱりしたのはじめてだ!やっぱりイメージ力の違いなのかな?後で試してみよ。
スッキリした身体で服を着て改めてアルに色々聞いてみたんだ。まあ、「入ッタトキニソノ質問ガ欲シカッタデス」って呆れられたけどね。
アルによると、箱庭には基本ゲートキーパー以外には人はいないし、入れない事。箱庭に入ったら、ゲートキーパーは箱庭の中にあるものなら鑑定出来るって事。異空間化した箱庭の大きさはそれぞれ違う事。
「アト、是非『チーム作成』ヲ使ッテクダサイ。チームニ入ッタ人ハ箱庭ニ入レルヨウニナリマスシ、1日ノSPノ入ル量ガ増エマス。ソシテ錬金術ガ使エルヨウニナルトココデ塩ガ錬成出来マスヨ」
「ええ!本当?」
塩がココで手に入るの⁉︎
それにSPが増えるって⁉︎
うわぁ!うわぁ!凄いや!
うん、家族なら信頼出来るし連れてこよう!
みんな驚くぞ〜!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。