箱庭ゲートキーパーで辺境生活を劇的改善!
風と空
一章 能力の確認
第1話 プロローグ
苦しいのはもう嫌だ……
あれだけ頑張ったのに、全部人の物になるなんて……
「うん……僕の部屋だ……」
目が覚めて天井が見えた時、前世で有名な言葉を言っても良かったけどね。だって、白雲 絢斗の意識よりも僕クレイ・リーガンの意識が残ったんだもん。なんでって多分……
「クレイ!」
「クレイちゃん!」
「おにいしゃん!」
バンッと扉を開けて入って来たのは、僕のお父さんとお母さんに妹のナーシャ。お父さんに抱き上げられたナーシャが僕に向かって手を伸ばしてる。可愛いなぁ。お母さんは僕をぎゅっと抱きしめてくれた。うん、心配かけてごめんなさい。
そう、僕は今世の家族に愛されているし、大好きなんだ。これが多分大きな理由じゃないかな。白雲 絢斗の前世ではなかった感情だもん。
だけど、地球という日本で過ごしていた記憶は残っているよ。社畜と呼ばれるくらいブラック企業で働いた事、食べる事が大好きだった事、快適な生活をしていた事なんかね。それを思い出しちゃったから、正直これからの生活に不安があるんだ。だってね……
「もう本当に心配したのよ?大丈夫?スープ持ってくる?」
お母さんが優しく言ってくれるけど、そのスープというのが問題なんだ。元日本人だった記憶が出てきたせいで、またあのうっすいスープかぁって思っちゃうんだもん。
でも仕方ないかな。なぜなら僕の家のある場所は辺境なんだ。王都からずっと離れた山の中。一応僕のお父さんが領主だけど、なんせ開拓したばかりの土地で、街というより村なんだここ。
お父さん平民からの成り上がりなんだ。元冒険者の時にスタンピートで大活躍した功績を認められて、王様から土地を与えられたんだって。聞こえはいいけど、与えられた土地が開拓村だもんね。
でもね、僕結構ここ好きなんだ。魔物はいるけど、お父さんや村の人が頑張ってくれているし、お肉も取れる。村の中は田舎そのものだけど、長閑で人も優しくあったかいんだもん。だから僕はこの村の為に頑張ろうって思ってたんだ。
「はい!おにいしゃん!どーじょ」
あ、スープをナーシャが運んできてくれたんだ。茶色のふわふわの髪にまだぷにぷにの手。綺麗なお母さんにそっくりで可愛いんだよ。
「ありがとう、ナーシャ。お母さんもありがとう」
うっすい味だけど野菜もお肉も入っているスープ。素材の味が混ざってこれはこれで僕は好き。辺境だからこそみんなが助けあって分け合う精神があるから、食べ物には困らないんだ。
「しっかり食べれるなら安心だな。だがこれを食べたら少し休め。今日は遊ぶのは禁止だぞ」
僕が美味しそうに食べる姿に安心したお父さんは、僕の頭を撫でながら笑顔で休むように言ってくれた。強いけど優しくてかっこいいんだよ。
「うん、わかってるよ」
全部平らげた僕からスープ皿を持って、安心して僕の部屋から出ていった家族。僕は満足してベッドに寝転んだけど、硬いんだよなぁ……このベッド。毛皮を数枚板の上に重ねただけだもん。僕はその上で上掛けをかけて寝ているんだ。
家があって寝る所があって優しい家族がいて……普通に考えれば幸せだと思うけど。やっぱりもっといい生活を知っているからこそ何とかしたい。……僕に力があったらなぁ……
『条件が満たされました。箱庭ゲートキーパーの能力を解放します』
「え!何?今の声?」
思わず声を上げちゃったけど、今の声って頭に響いてきたんだ。もしかしてって思っていたらヴァンッと透明なスクリーンが僕の目の前に出てきたんだ。
クレイ・リーガン 5 男
HP 450
MP 500
SP 300
スキル 箱庭ゲートキーパー〈レベル1〉 生活魔法
称号 異世界転生者 時空神の祝福
え⁉︎これってステータスってやつだよね?この世界では10歳になってから神殿で与えられるんじゃなかったっけ?というか、なんか聞いたことのないスキルに時空神の祝福って?……色々わかんないけどこれタッチパネルみたいに出来るのかな?
【箱庭ゲートキーパー】
異空間に数多く存在する箱庭の管理者。扉を開くとその箱庭が所有出来る。現在開くことが可能な箱庭は現在一つ。
[箱庭]
・海の箱庭の扉 SP200
[ゲートキーパー]管理者の能力
・ナビゲーター SP150
うわぁ……何これ?でも絶対取っておいた方がいいのは……これだよね。
・ナビゲーター SP150
どうすればいいのかな?これをタップするの?
『ナビゲーターにSP150を使用しますか?
はい いいえ 』
あ、出た!これはもちろん『はい』を選択して……と。するとポンッと音がベッドの上でしたと思ったら、真っ白いオカメインコに似た尾長インコがいたんだ。……可愛い。
「ハジメマシテ、ゴ主人サマ。ナビゲーターR1トイイマス。ヨロシクオ願イシマス」
ペコリと頭を下げるナビゲーターR1。うーん、言いづらいなぁ。しかも長いし……
「名前長いからアルでも良い?」
「カシコマリマシタ。イゴ『アル』ト名乗リマス。デハ、ゴ主人サマニイロイロトゴ説明ヲサセテ頂キタイノデスガ、宜シイデショウカ?」
「うん、お願い」
アルが説明し始めたのは、まずアル自身の事。アルは普通のご飯も食べれるし、睡眠も必要みたいなんだ。スキルから生まれたのに生き物みたいだね。アルは常に僕といる事でサポートが出来るから、僕の肩を定位置にしたいんだって。面白いんだ、アルを実際に肩に乗せてみたら、重さ感じないんだよ。あ、でも他の人が触ると重さ感じるみたい。
そしてステータスの事も教えてくれたよ。HPは体力、MPは魔力は定番通りだったけど、SPってスキルポイントなんだって。これは箱庭利用度で増えていくし、そのままでも毎日5ポイントずつ増えていくんだって。でも僕はアルを常時連れて歩くから毎日10ポイントずつ増えるんだって。やったね!
あと、レベルが上がればポイントアップもゲートキーパー能力も上がるって。頑張んなきゃ!
それにね、数多くある箱庭は誰が作ったの?って聞いてみたら、並行して存在する世界の数多くの箱庭スキル持ちが作ったコピーなんだって。だから箱庭には色々な種類があるから是非レベルを上げてくれって言われたよ。
じゃ、箱庭ゲートキーパーは何人いるの?って聞いたら各世界に1人なんだって。ってことは、このスキルこの世界には僕だけなんだね。因みに異世界転生者はいいとして、時空神の祝福って何?って事も聞いたんだ。どうやら僕が開ける箱庭は時空神がお気に入りの箱庭なんだって。要するに外れ無し、品質よしの箱庭だけみたい。凄いなぁ。
「ふわぁ、いっぱいありすぎて疲れちゃったよ」
「マダゲートキーパーノ能力ノ説明がアリマスガドウシマスカ?」
あ、そっか能力の事も聞いておかないとないいけないね。じゃあ、って言ったらね……
「クレイ?誰と話しているの?」
「おにいしゃんおきてるの?」
ガチャっとお母さんとナーシャが部屋に入ってきちゃったんだ。当然アルを見つけて騒ぎ出すよね。
「きゃああ!可愛いわぁ!」
「きれいなこなのー!」
「ア……アノ?」
……えーと、この展開は予想してなかったなぁ。まさか存在をまるっと受け入れられるなんて。ありゃ、思いっきり撫で回されてるよ、アル。
お母さん達驚かないの?え?そんなの驚いていたら辺境でやって行けないって?ナーシャまでうんって……
……もしかしなくてもウチの家族にスキルの事打ち明けても大丈夫じゃないかなぁ。
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