第6話 暗殺フラグ勝手にへし折れる
「英雄よ。主の一騎当千の勇姿はダリアから聞いておる。面を上げい」
戦いが終わり、皇都を凱旋すると、姫騎士ダリア直々に同行を命じられ、ノータイムで謁見の間に通された。
俺は前世で謁見の間に呼ばれるなどなかったので、はっきりしたことはわからないが、こうして俺のスケジュールに合わせて皇帝が融通を利かせるというのは異例中の異例のような気がする。
「は!」
「ほう、その赤い瞳……。儂ら一族と同じものか。歳は10と聞いたが……。親類縁者で落とし胤に思い当たるものはおらぬな。偶然か」
「皇帝よ。お戯れを、没落した伯爵家などに貴き血との交わりなどあるはずがありません。髪の色をご覧くだされ、いと貴き紅ではなく、民草にも溢れる金色にございます」
「宰相、口を慎め! 今父上が話しておられる! 貴様の意見など聞いておらん!」
「グッ!」
宰相はゲームではラスボスを暗殺することを画策したこともあり、この世界でも性格が悪いのか、当て擦りのようなことを言って、ダリアに黙らされる。
この様子を見るとダリアがいる限りは、俺に対して宰相が暗殺計画を立てる際の抑止になってくれそうだ。
『マスターを暗殺しようとは愚かな人間です。私が内密に始末しておきましょうか?』
『やめておけ。あれが消えたら城内のパワーバランスが崩れて、宮廷貴族どもの勢力争いが激化して王都で地獄絵図が広がる。抑えるだけで十分だ』
デマキは鎧からだけでなく、念話もできるということで、不穏なことを提案したので却下する。
感じのいいやつではないが、これでも実質的なNO、2だから、いなくなれば一時的にではあるが国が傾く。
「こほんっ! では本題の英雄クリアの褒美の件に参ろうか。 儂は1000万デスと男爵位を与えようと思うが、異論はある者おるか?」
「僭越ながら父上、此奴の働きに対する褒美としてはこれだけでは足りませぬ。近衛騎士の誉を与えるべきです」
「武功を立てたとはいえ、学園にも通えぬ幼な子が近衛騎士など」「近衛騎士の選定には強さのみではなく、貴族としてのマナーや品性が問われます。時期尚早です」
提案してくれた姫騎士ダリアには悪いが、雛壇の貴族たちと同じで俺も堅苦しい上に、皇族を守るために四六時中拘束される近衛騎士はごめんだ。
それではストーリーフラグをへし折りたい俺の望みが達成できない。
胸糞はこの世にかけらも残してはいけないのだ。
「ふむ、確かに近衛騎士は公正を期して座学、実技をクリアした学園卒業者のみとしている。お前の言葉とてそれを覆すことはできん。だが能力をあるものを遊ばせておくことが皇国の損失であることは事実」
皇帝は何かを思案するように髭を撫でる。
「そういえば、放置されている領地が一つあったか。クリア・ヴィラン、そちに旧ブラッド領の暗黒平原を領地を与えよう」
「暗黒平原だと。近衛騎士団でも手を焼いている精霊鎧を持っているという盗賊の本拠地が置かれておる領ではないか」「本当に噂通りの英雄であるのならば盗賊なぞに遅れはとりはせんだろう。お手並み拝見と言ったところか」
「ありがたき幸せにございます」
暗黒平原はヒロインの1人が世話になる盗賊団が根城にしている領地だ。
ヒロインのフラグ破壊のためにも奴らを壊滅させるのは俺にとって都合がいい。
ーーー
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