第2話 大金だけじゃない、どうしましょう

 恩恵のなかったチートが、突如とつじょ目覚めてくれました。


 その能力は、狩った獲物を換金する超便利なスキルでした。

 モンスター素材の買い取り需要がないこの世界には、うってつけのスキルですな。


「むほほ、世界がちがって見えますよ!」


 鬱陶うっとおしいと邪険にしていたモンスターも、今ではいとおしい存在に大変身です。


 異世界転生しておいてなんですが、生まれ変わった気分です。


 まあ見つけるのは難しかったですが、気づけばなんて事のないカラクリでしたよ。


 それにしても……10年ですかぁ。

 うん、諦めなかった昔の私、ありがとうございますね。


 ちょっとおセンチになりましたが、そんな私に更なるご褒美です。


 それはレベルアップ時のように、神様からのアナウンスが聞こえてきたのです。


〈ピロリロリーン。祝・初もの特典だよ。スキル・打出の小槌(S)が打出の小槌(S)【第一位階】へと進化ね。成長型となって、あらゆる変化がおこるよー〉


「な、なんでございますか、第一位階って?」


 神様の口調は軽いですが、とんでもない内容ですよ。


 まずこの世界ではスキルランクは固定でして、成長するなど聞いた事がありません。


 そもそもSランク自体が最高位ですから、それが成長って意味が分かりませんよ。


 ドキドキしながらステータス画面を開きまする。


 〇〇〇〇〇


 固有スキル:打出の小槌(S)【


 位階制:スキルを使用することにより経験値を貯まる。位階層があがる毎に新しい能力が解放される。


 〇〇〇〇〇


「な、なんですか。この特別感は! Sランクを飛び越えちゃってますよ」


 素直に気持ちがいいですよ。

 鏡を見なくても、ニヤついているのが分かります。


 それと有りがたいのは、スキル名の下に経験値のバーがあり、成長度合いが分かることです。


 他には付いていないこの機能。

 指でなぞって、またニヤけてしてしまいますぞ。


 たして成長とは、どんな内容になるのでしょう。ああ、今から楽しみですな。


 そして運の良いことに、その為のかてが目の前にあるのです。

 今日一日だけでも、沢山のモンスターを道に残して来ましたから、経験値には困りません。


 まずは横にいるゴブさん2(死体)にむけて、小槌をふりまする。


「出てこい、出てこい、お宝さん……おおおおおお!」


 ボタボタっと落ちる銀貨に生つばが出てきます。何度をみてもすんばらしい光景です。


 それと本題の経験値。すかさずステータス画面をチェックします。


 み、見えました。

 空欄だった場所に、みどり色の部分が現れました。


「ぬおおおお、これは良いいいいいいいいいいい!」


 わずかですが、経験値のバーが伸びていますよ。

 ほんのちょっとですよ。でもこれを重ねていけばいいのですね。


 テンションは爆あがり。

 おっとヨダレが。うれしすぎて口元の制御が効かないですよ。


 小鎚を振れば振るほどバーは伸び、お金もジャンジャカ入ってきます。


 でも調子にのり過ぎてはいけませんね。


 換金することに集中しすぎて、お金を拾うのを忘れていました。

 慌てて回収しようにも、元あった場所がわかりません。


「なんて恥ずかしい事を。貧乏人の風上にもおけない失敗ですよ」


 貧乏な私にとっては、銅貨であっても大切です。

 一枚もムダにしたくないのです。


「ない、ない、ないーー! どうしましょう。こんなに探しても見つからないなんて、う、う、うわーーーん」


 そこでハッとひらめきました。


 もしやと思いインベントリを確認すると、失くなった全てのお金があるじゃないですか。


「なんですかーーー、脅かさないで下さいよ、もーーーーーーー!」


 怪我の功名ってやつですよ。

 時間がたてば自動回収されるとは、なんて親切設計なのですか。


 半泣きでしたから、うれしさ倍増。残りの獲物を回収していきます。


「ふむ、同じF級モンスターでも、金額に差がありますね」


 ホーンラビットだと銀貨2枚、大ネズミなんて銅貨30枚でしたよ。

 忘れないようにメモですな。


 自分でも驚きましたが、随分とたくさん倒したものです。

 財布がパンパンになりました。


 内わけは、


 ゴブリン18匹×銀貨3枚。

 ホーンラビット11匹×銀貨2枚。

 大ネズミ5匹×銅貨30枚。

 フォレストウルフ10匹×銀貨4枚。

 ベビートレント2匹×銀貨6枚。


 合計銀貨133枚と銅貨150枚。

 日本円で13~4万円。


 たった半日で、1ヶ月ぶんの稼ぎに迫りましたよ。


 これだけ稼げれば、日々の生活も楽になります。

 パンと豆料理の質素な食事ともおさらばですよ。


 それと夢がどんどんと膨らみます。

 念願でした上位の武器も買いたいですね。

 いまだ最低Fランクのただの鉄剣を使っていますからね。


 本来なら真っ先に揃えるべきなのですが、今まで先のばしでした。

 高価なものですからねえ、なかなか手が出なかったんですよ。


 だってランクがひとつ上がると、価格はほぼ10倍ですよ。

 それをクエストの報酬だけで貯めるだなんて、ジョークとしても笑えません。


 苦肉の策として、それをチート能力で埋めようとしました。でもそれは成功しませんでした。


 実はこの世界では、武器の善し悪しが非常に大切なのです。


 不思議なことに、モンスターのランク以上の武器でないと、文字通りが立たないのです。


 初めはそれが嘘だとおもい、鉄剣でCランクに挑みました。


 結果は勝てましたよ。

 ええ、勝てましたとも。


 ですが鉄剣は一撃で全壊。曲がりくねって使い物にならなくなりました。


 やっと貯めて買ったのに、一瞬にしてスクラップですよ。

 あの時はさすがに大声を出して泣きましたね。


 納得はいきませんが、飛び抜けた身体能力だけではダメなのです。

 チートはチートとして発揮しますが、チートを押さえ込む理不尽なルールがあるのです。


 明らかに私よりも能力の低い人が、武器を変えただけで上位モンスターを討ちとるんです。心の底から悔しかったですね。


 これが底辺冒険者として、くすぶっていた理由なのです。


 でもこれからは違います。

 お金を貯める目処めどが立ちました。

 ギルドランクを上げれます。

 私は自分に自信が持てそうです。


「金額的にねらうのは、Dランクの黒鉄製の剣ですな。あれを手に入れたなら、フフフフフフッ」


 上位のモンスターとの対峙も心配いりません。


 あれから私も成長しましたし、少なくともCランクなど敵ではないはずです。

 あの時の屈辱を晴らしてみせますよ。


「よーし、今日は祝杯ですよーーー!」


 久しぶりにお肉を食べたいですね。

 今日ばかりは豪勢にいきましょう。


 宿屋の料理は絶品ですからね。

 頼み甲斐がありますよ。


 焼きに蒸しに煮込み料理。

 それにサラダにスープとデザートまでつけますかね、グフフフフフ。

 考えただけでヨダレがたれてきます。


 少し早い時間帯ですが、町へと戻ることにしました。


 小走りでむかうと、ヨダレが後ろに流れていきます。

 お肉たちが私を待ってますーーーー。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


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