第3話 凱旋
その日、王国は歓喜に満ち溢れた。
勇者達が魔王の討伐に成功したという一報が届いたからだ。
これで全てが終わったわけではない。
まだ魔物はいる。脅威が全て去ったわけではなく、破壊された村や街の復興が残っている。それでもこれからの生活に希望の光が差したことは間違いないのだ。
そして、一方が届いてから、2週間、勇者たちが王都に帰還した。
「ありがと~!!」
「勇者様~!!」
「テラシア王国万歳!!!」
様々な歓声があがり、その歓声は全て一台の馬車に向けられている。
馬車の通る道のみ空け、王城に向かう道に王都の国民が集まっていた。
馬車には魔王を討伐した勇者達が乗っていて、窓から顔を見せている。
慣れたようにカトリーヌが手を振って国民の歓声に答えている。
「慣れたもんだな。俺は気恥ずかしくて顔出せんわ」
「一応、この国の王女ですからね。国民の期待には応えないといけないわ」
馬車の中から顔を出さないガルツ。
馬車には若干高さがあるため、屈むようにして国民の視点から見えないような位置で座っている。
「見ておきなよガルツ。皆の笑顔が広がるこの光景を見るために俺達は戦ってきたん
だ。まだ全てが終わったわけではないけど、一つの終わりを迎えたんだ」
アイクが手を振りながらそう言う。
「まあ、そうだな。でもサービスはお前ら2人がしておけ。俺は別にいいわ」
「ガルツっぽいね」
「俺もあいつと一緒に馬車に乗らずに待ってればよかったわ」
「レイは 「自分は影ですので」 ってすぐにどこか行ってしまったんだ」
「まあ、あの子はこういうのは絶対に出てこないでしょうね」
馬車には乗っているのは3人。レイというのは魔王討伐の際にいたローブの少女の
ことだろう。
「あいつも立派なパーティの仲間なんだがな。なんか一線引かれてんよな」
「あら、結構可愛いとこもあるのよ。頭撫でると大人しく撫でられてるし。
小動物みたいで」
「いや、ただビビッてるだけじゃね」
「はぁ~!?喧嘩うってる?」
「大人しくしなよ2人とも。そろそろ王城に着くし、それにまだ周りに人がたくさん
いるんだから」
ガルツとカトリーヌを宥めるアイク。
この2人の相性が良いのか悪いのか旅の道中では頻繁にあったため、アイクも慣れたもんである。
「王城に着いたらレイにも合流するようには言っているから、陛下に謁見する際には
4人で行くからその時にでも聞いてみれば?」
「そうね。そうするわ」
しばらく馬車を進ませると王城に到着し、馬車を降り中を進む。
「お待ちしてました」
王城の中を進む道中、どこからともなくレイが現れた。
「レイ、どこから入ってきたんだ?」
「? 普通に気配を消して正面から入りましたが」
ローブを被り確実に衛兵に止められる格好をしているレイだが、
何事もないかのように不法侵入。
ちなみにいきなり現れたレイに対して衛兵がレイを取り囲むという出来事が起きて
しまったというのは余談である。
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