覚悟 そして 黒い花

———エルフの森。


何だかいつもより森が騒がしい。鳥たちが慌てるように鳴いている。


いつものように花畑で花冠を作っているといつもと違う様子の森に気づく。


何だか妙な胸騒ぎがする。急いで村に戻ると、


「何者だ!ここは我ら長耳族エルフの村だぞ!今すぐここから立ち去れ!」


武装した大人たちが声を荒げている。

よく見ると、なにやら人間たちがいる。

、何やら視線が気味悪い。


「あぁ〜?な〜に人間様に楯突いてやがるこの奴隷どもが」


と思ったのも束の間、リーダーのような男が切り掛かった。


「ガハッ!」 

一瞬、何が起こったのか理解できなかった

多量の血を流しながらそばに倒れるエルフ。

そばにできた真紅の水たまりに映る自分を見てようやく理解した。




「さぁお前ら!エルフ狩りだぁ!」





そこからはもう悪夢だった。

女子供関係なしに振るわれる刃。

抵抗虚しく兵士のエルフたちは全員殺され、かなりの数のエルフが手に穴をあけられ縄を通し、連れて行かれた。

まるでのように、。


「せいぜいまた楽しませてくれよ?」


そういいアイツらは村を後にした。


残ったのは元の人口の半分ほど、

全員殺したり、連れて行ったりしなかったのはま・た・楽しむためなのだろう。


私たちを道具のようにして。



———



村は壊滅的な被害を受けていた。家屋は燃やされ、食べ物も取られ、人口も減ったため復旧もできず、また来るであろう奴らの襲撃に備えることもできなかった。


皆が皆、いつか訪れるであろうその日を怯えていた。


すると1人のエルフが口を開いた。


「、龍神様に、頼んでみたら、」


龍神様、おとぎ話でしか聞いたことがないこの森の最奥にいる龍だ。何でもその力は壮絶らしく一国を容易く滅ぼすのだとか。


「無茶を言うな! いくら龍神様が我々長耳族エルフによくしてもらってるからって、、」


「だがしかし、これしか方法が、」


「私が行く」


気づいた時には口に出していた。


「正気か?森の最奥に行けば行くほど魔物は強くなる、危険も俺たちが日頃行っている魔物狩りとは比じゃないぞ!」


「分かってる」


ではなぜ行く?


「もうあいつらにこの村を好きにさせたくない」


あぁ、そうだ。私はずっと怒っていたんだ。私の大事な家を花畑を友達を家族を全て全て全て壊したあいつらに。

自分の危険なんかどうでもいいほどに、


「「「、、、、。」」」


みんなが私を見て固まっている。それもそうだろう。

客観的に見てもおとなしい私が今その目に宿しているのは自分を焼き尽くすほどの憎しみだ。


同じ村でずっと暮らしてきたのだから私の変化に気づいたのだろう。


「、、よかろう」


「!ですが!」


「彼女がこの村で一番覚悟を決めておる。村の、種族の運命がかかっている今、最適なのは彼女だ。それとも、彼女以上の覚悟をお前は見せれるのか?」


「、、、

わかり、ました。」


男のエルフが強く握った拳からは血が出ている。



「勇敢なるエルフ、エフィルロス。

龍神様の元へ向かい、協力を仰げ!」


「分かりました。」


命を受けすぐさま準備をする。

まだ鉄くさい匂いが鼻を刺す村を後にし、簡単な武装をしてから森の最奥へと向かう。

一刻も、一刻も早く着かなければ、




全ては





そう





あいつらを





あいつらに

 



キョウフとゼツボウを

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