出会い
2日ほどかけて歩き、ようやく人間の建物らしき場所についた。元々ここは亜人や獣人、エルフなどが住んでいたのだが、
「ひどいな、」
おそらく居住地があったであろう場所にはもはや炭しか残っていない。うっすらと血痕が残っているのをみると、奴隷狩りか。
そんな人間に吐き気を催しながらも俺は人間が作ったであろう建物を遠くから観察した。
何だろうか。居住地ではない、おそらく倉庫か何かか?
門番らしき人間が2人ドアの前に1人。
それほどの強さは感じない。
けれどもその人間が来ている鎧はなかなかに高価そうなものだ。もしかしてこの建物、貴族や王族の所収物なのか?
何にせよこの建物、何かあるな。
俺はこの世界についてよく知らない、一度も森を出たことがないからだ。あの建物の中に何かこの世界を知る手がかりがあればいいのだが、。
そんな淡い期待を抱きながら俺は彼らの前に姿を現した。
「そこのお前、止まれ 一体ここに何用だ」
別に不意打ちでも良かったがそれだと自分の強さがよくわからない。
「おい!止まれ! これ以上警告を無視するならば盗賊として処罰させてもらうぞ」
どうやら俺が黙っていたのが気に入らないらしい。
「誰が道端の小石に足を止める?」
「、貴様、自分がどう言う立場なのか分かってないみたいだな、ここは王族専用の倉庫、そんなに死にたいなら殺してやるよ!」
俺の発言が頭に来たのだろうか、胸ぐらを掴みながら大声で話す。
あぁ,もう限界だ
「その汚い手をどけろ、、」
「あ?」
「汚い手で俺に触んなつったんだよこの害虫が」
バギィィ
その瞬間、胸ぐらを掴んでいた人間が冗談みたいに高く飛んだ。正確にいうならば俺の蹴りを喰らい打ち上げられた、というべきか。重力に沿って落ちてきた人間はもはや肉塊と化していた。
「ヒッ、バッバケモ———」
「ぎゃあぎゃあ喚くな」
逃げる暇さえ与えず頭に蹴りを入れる。
案の定鎧の兜ごと頭が割れた。
弱い、まるで罠かと疑うほどに弱い。
けれどもこれ以上人が来る気配も、人の気配もない。
「••ここまで弱いのは想定外だったがまぁいい」
そう、本当の目的はその建物だ。
あのゴミが言ってたことが正しければこの中には王族のものが入っているのだろう。確かにこんな深い森誰も入らないだろうし、ここは魔物も少ないから隠しものをするには最適な場所、というわけか。
俺は淡い期待をしながら扉を開けた。
その中には、檻が一つポツンと置いてあるだけだった。
暗くてよく見えない。
そして扉を開けきり、光がその檻に差し込むと、中には少女がいた。金色の髪に赤い瞳、人間、ではないな。
「おい、お前何者だ」
「•••!」
少女は俺のことを見るなら肩を震わせる。
手足に枷、栄養失調がわかる細い体、うっすらと残る傷跡。
奴隷か、ならば恐怖するのは仕方ない。
俺はしゃがみ込んでもう一度話しかける。
「俺はあんなゴミ野郎ではない。お前を拘束しする趣味も傷つける趣味も全くない。だから教えてくれ、お前は誰だ」
「わ、私は、
驚いた、まさか
おそらく、一族もろとも襲われ彼女だけ連れてかれたのだろう。
「俺がここから出してやる、あとは勝手にしろ」
俺は檻を力でこじ開け、枷を外した。
龍の力では容易いことだ。
流石に、人間以外の奴を無意味に殺すほど俺は腐ってはいない。まぁ向かってくらならば別だけども。
「え、あ、、」
「もう捕まんなよ」
そう言って踵を返す。何か収穫があると思って赴いてみたら余計に人間のクズな面が見れたというわけだ。
まぁ、いいだろう。あんな人間に殺されるのなんて耐え難い。
その前に彼女を救い出せたと思えば。
ふと、袖を後ろに引かれた
何だろうと思い振り返ると吸血姫の少女がその細身で俺を引っ張っている
「ま、待って、。私も一緒、に」
「駄目だ、お前はこちら側に来るな。俺はあのくそ野郎共を全員殺す。そんな血生臭い道にお前を生かせられない」
「人間、、、」
その瞬間、彼女の表情が憎しみとも言えるような、怯えとも言えるやつ表情に変わった。
「あいつが、あいつらが、、。私の大事な、家を、友達を、家族を!みんな、みんなみんな壊した!
許さない許さない許さない許さない!」
その言葉は確かに本物だった。
あぁいつから俺の目は節穴になったのだろうか。そして俺は理解した。こいつも、俺と同じだ。何もできずただただ奪われた。
「、、、分かった」
その言葉が予想外だったのか、少女が俺の顔を見ながらポカンと口を開けている。
「血まみれの道、数多の死体を潜り抜けその先にある復讐という蜜を吸いたいのならば、その覚悟があるならば俺についてこい」
「、、!」
こうして俺は
その少女は嬉しそうに俺についてきた。
かなり違う歩幅を合わせようと少し小走りをしながら。
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