新生活、そして予感

あの日からちょうど一年が過ぎた。


元々人間だった俺はおそらく地球で電車に轢かれ死んでこっちの世界で魔物として転生したのだろう。


その魔物は龍、地球でいうところのナーガみたいなものだろう。なんせあの日俺の目の前にいた龍は首が7つあったのだからな。


まだ年齢が幼いせいかそれとも弱いのか俺には首が一つしかない。おそらくあの龍はかなり長い年月を生きているのだろう。

そりゃぁあんな威厳があるもんだ。


人間と比べて手足がない蛇のような見た目の俺。

かなり体を動かすのに苦労したが、なれると結構快適だった。


なんせこの世界、人じゃないから会社だったら面倒なことを考えなくてもいい。


しかも俺は、


(シャャャャャーーー!!)


(フギャッ?!)


目の前にいる子鬼ゴブリンに勢いよく噛みつく。

小鬼ゴブリンは最初こそ暴れていたが、次第に力なく倒れた。


そう、俺はこの森の中の魔物より少し強い。


龍みたいなものいがいたら流石に負けるが今のところそんな魔物は見たことがない。


、、まぁあんなのがうじゃうじゃいたらたまったもんじゃないからね。


そんなことを考えながら俺は小鬼ゴブリンを洞窟へ運ぶ。そこにはあの龍がいた。


(ただいまー)


(、、、)


実を言うとこの龍、俺の親らしい。

親、というのはこの種族性別がないのだとか。


いわゆる無性という奴なのだろう。


なんでも魔力?を込めれば卵を作れるらしい。

ここら辺は俺にはよくわからない。


そんな龍はもちろん人間の言葉なんて話さない。


けれども同じ種族なのかなんとなく言いたいことがわかる。


多分今のは、(おかえり)的なものだろう


そうして俺たちは魔物を食べる。

当然生肉だが人間より胃が強いのかお腹を壊す気配が全くない。少し血生臭いが一年もたつと然程気にならない。


ご飯を食べ終えると俺はふと思う。


この世界には本当に人間っているのだろうか、


実を言うとこの一年間人間を見たことがない。

まぁ、龍がいる森になんか普通は入らないけども、


よし、今日は洞窟からちょっと遠いところまで行ってみよう。


そう思い、森を駆け抜けた、

、、まぁ駆け抜ける足なんてないんだけれども。


———数時間後。


あれから探してみるもやっぱり見つからない。

やっぱりいないのだろうか。そう思い洞窟に帰ろうとした瞬間。


「ーー!ーーーー!!!!」

(ヒッ!りゅ龍だっ!!)


ん?


ふと声がした方に向くと何やら騎士のような格好をした男が数人俺を見つけて驚いている。


「ーーーー、ーー」

(マジかよ、本当にいやがった、、、)


「ーーー!!!ーーー!!」

(総員撤退用意!! 急いで森の外まで走れッ!!!)


なんだったのだろうか。


俺の姿を見た瞬間一目散に逃げ出した。

まるで悪魔を見たかのように。


けれども人間がいたことに少し嬉しさを覚えた。

仲良くなれたらいいんだけどなぁー。


そんなことを考えながら俺は帰路についた。


———洞窟内。


洞窟に入ると龍が少し怒っていた。


「人間にあったな、」


俺はドキリとした。

何か不味かっただろうか


「いいか、人間に二度と会おうとするな。もし見つけても近づくな、すぐこの洞窟へ戻れ」


「どうして?」


「お前はまだ弱い。 私がいたら守れるが1人だと討伐される恐れがある、だから絶対に近づくな、わかったな?」


「、、わかった」


どうやら俺のことを心配してくれてたみたいだ。

この龍はいつも助けてくれる。多分龍がいなかったら俺は今頃この世にいなかったくらいに。


人間ってそんなに悪そうな人じゃないと思うんだけどなぁ。







そんなことを思っていた時期があった

——あの夜までは。

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