第63話 ビジネスの果て

時は少し進んで、2020年。


あの凶行から、6年の歳月が経っていた。


もうすぐ、俺が刺された…2023年に辿り着く。




…俺は、天使が言っていたような人間になれたんだろうか。


…正直、自信は無い。



・・・・・・・。




「ぱぱ~。休憩終わりだよ?早く遊んで~!」



2010年にお腹の中で存在を知り、2011年に生まれてきてくれた我が子は。

今年で8歳となり…愛はサッカー、真人は野球と、運動を好んでくれている。


「よぉ~し、サッカーでいこう。…真人も、それでいいか?」


「いいよ~。愛にはもう、負けないんだからね!」


スポーツにハマってくれて、一緒にサッカーや野球を出来るのも、嬉しい限り。

俺も一緒にサッカーや野球を取り組み、非常に健康的な生活を送っている。


「ぱぱー。お兄ちゃんとお姉ちゃんばっかり…ずるいよぉ!」


そう言ってきたのは、下の子達だ。


愛と真人の他に…

梨沙の子が3人、玲奈も3人、…由佳が2人の子供を。

合計4+4+2で10人もの子供が生まれることになる。


それぞれの愛する人達は、命を紡いでくれた。

…紡ぎ過ぎだとは、思うけど。



「あはは…。さっき、皆で鬼ごっこやったばかりじゃないか…。愛と真人は、終わるの待っていてくれたんだよ?」


「…でも~。」


「…ほら。一緒にやろう。お兄ちゃんとお姉ちゃんに勝てる日かもしれないぞ?」


「…うん。僕やってみる!」

「わたしも~。」


…大家族過ぎて、毎日が保育園と小学校の先生にでもなったかのようだ。



・・・・・・。



「…今日もお疲れ様、貴方。疲れたでしょう?」


そう言ってお茶をくれるのは、玲奈。

呼称もパパから貴方に代わり、一時期の焦った印象も無くなって落ち着いた様子だ。21歳で第一子を身籠った玲奈も、もう30歳となり穏やかな家族の中心として無くてはならない存在になった。


「…もう秋だねぇ。温かいお茶が。…美味しい時期になってきたねぇ。」



「パパ~。聞いてよ。下の子達が…わたしのアニメラック…グッチャグチャにしたんだよ~。パパからも言ってやってよ~。」


泣きついてきたのは、梨沙。活躍の場をブログから動画配信に変え、アニメの考察や漫画のレビュー等で独特な整理図を用いて、コミュニティを作り上げている。

とても29歳4児の母とは思えぬ若さで、10代後半~20代前半の支持を得ている。


「はは…。それだけ楽しそうに見えたんだろう。お母さんが楽しそうにしてる事は…子供にとっても魅力的だよ。でも…危なくないようにDIYでもしようか。」



「ホント…大家族って大変ですね。ゆっくん…。よく体力持つなって、心から思います。10人の子供を相手に毎日朝から晩まで遊んでくれて…本当に感謝ですね。…私は体力がないので…こうやって、もし時間を作ってくれなかったらと思うと…」


フラフラと奥から歩いてきたのは、由佳だ。

子供の世話で振り回され、あんなに理知的だった彼女も…今は昔。

統制のとれない10人の小さな天使達に、毎日振り回され続けて…34歳になった由佳には休息時間を作るようにした。



今の俺の幸せは、間違いなくこういった家族との時間なのだろうと思う。


今の俺は、ほとんど。…いや、全く働いていない。

正確には、人を雇って働いてもらい、持っている資産にも働いてもらっている。



以下が、2020年に至るまでの過程だ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


株式投資:2013年に投資した2000億が、それぞれ8~21倍に高騰し、2023年には完全売却を検討中。…ついに想定6兆近くの金額の資産をもつことになる。


仮想通貨:1コイン7円→1コイン410万円となる。7000万円分購入していた為、410×7000÷7で41,000,000,000,000。


なんと…41兆円となる。コレは途中で通貨を独占してしまう恐れがあったので、同様の価値になるような仮想通貨に変更していた。

何度かハッキング被害を受けそうになったが、インターネットから離脱させたパソコンはやはり強かった。


企業:動画配信グループが大当たりし、新型ウイルスが流行る2020年に最佳境を迎えていた。玲奈も趣味で節約料理の動画配信者となり、人気を博している。人材派遣も好調で、新型ウイルスによる貧困を救う為の受け皿としても、効果を発揮した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



仮想通貨では41兆近くの売却利益を受ける為、今後の日本企業にそれらを分配・投資して2023年以降の日本成長を願った。


2023年まで何が日本の武器になるかを、俺は考えた。

円安に向かって、強く貨幣価値が動いていく為、輸出産業や世界の企業から委託事業を受けられる産業に41兆を…そのまま投資していった。


配当金もほとんど無いものばかりだが、国家予算のような投資金額によって、複数の日本企業が突出した成果を出し始めた。


これは前世の2023年には、まったく無かった動きで。

米国の株よりも、急成長する株がいくつも乱立していった。


本来ならインドやアメリカ、ドイツなどの国力を持つ国が伸びる時期であったが、2020年の日本は新型ウイルスの影響もあるのに…歴史上、最大の国益をあげていった。




これの効果なのか。

翌年から、俺の記憶と違う歴史が…動き始めた。




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