第52話 動画サービス始めました。

2012年。


自由で民主的な党が、政権を取り返した年。

大災害の影響もあり、日本の景気はより後退を示していた。


世界的にも2008年のリーマンなショック以降、世界経済の牽引役となっていた中国を始めとする国々で、成長率の低下が目立った。


中国では、GDP伸び率が7四半期連続で低下し、通年の成長率は13年ぶりに8%を割り込んだ。尖閣諸島と呼ばれる場所を巡っての、日中関係の悪化も響いた。


債務危機の欧州向け輸出も減少し、頭文字を取って「BRICS」と呼ばれるブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカでは、減速は一段と鮮明であった。



…良かった。米国株に投資しておいて。



そんな年。


ウチのグループは、新しい事業を立ち上げた。

それは【動画サービス、配信事業】であった。


2年前から。

ニッコニコな動画で少しずつ、興味の有るスタッフと行っていた事業を…本格化する形となった。


それは、スタッフとの会話の中で産まれた。


「あ~。アタシ、彼氏要らないんスよね。」

そう話したのは、福田に憧れて入った、一般社員の林さん。


別に聞く気もなかったが、横にいた長谷川さんに…林さんは喧嘩を売ったのが始まりだった。


話は少し、遡る


~~~~~~~~~~~~~~


「会長ー。来てくれたんですか~!」


長谷川さんが経理の資格を勉強する、もっと前。2009年の終わり頃。


お店のデータを管理しきれず、俺は福田さんに頼まれて。

俺は財務管理の為、アパレルブランドのお店に来ていた。


その時期から、福田さんに頼まれて。長谷川さんは経理を一生懸命行っていた。

ただ、畑が違いすぎて。今の長谷川さんからは想像もつかない管理ミスも頻発していた。


「ああ。なるほど…ココは、コレで。このデータの入れ間違いと…ここの入力が足りないみたいだ。ここのデータってありますか?長谷川さん。」


「…あ、はい。ホント、すみません…」


「…大丈夫。というか、この店に経理を先に準備しなかった俺が悪いよ。よくやってくれてると思う。」


前世で働いた企業では、経理の部署にいたことは無い。


だが、度々データの入れ方で失敗して、呼ばれる事もしばしばあったので、少しだけなら俺にも理解る。

特に、誰かが入れたデータの修正に慣れていたので、入力をマメにやってくれる長谷川さんには感謝しか無かった。


「…おっけ。終了。」

「…本当にお手数かけました。」


「良いって。助かってるのはこっちだよ。」




「あー。長谷川さん、口説かれてるぅ?」

振り向くと、キャピキャピした林さんがそこに立っていた。


「…違いますよ!やめて下さい!」


「あ、珍しー。長谷川さんがそんな反応するなんて。まさか長谷川さんの方が…?」


「…止めてくれる?俺みたいなのでも恋人いるから、迷惑かかるよ。長谷川さんと恋人が困るのは、嫌だなぁ。」


「あっはは。…ごめんて会長ー。お、よく見ると会長イケてる顔してるかもー。服もオシャレだし、髪もいい感じだしねー。」


「は、林さん!会長の事…お好きなんですか?」

焦った様に、長谷川さんが林さんの腕を掴む。



「あ、ちち…違うし!アタシ、そんなんじゃないから。か、勘違いしないでよー!」


「あ、ご…ごめんね。」

パッと手を離す、長谷川さん。


「ホント、ビックリしたよ~。…でもごめんね、イジっちゃって。」

「あ、いや。全然…。」


その後、少しヒソヒソ話を2人でした後に、林さんが応えた。


「あ~。アタシ、彼氏要らないんスよね。」


「あ、そうなんだ。ごめんね。」


「アタシ…今、動画編集とかゲーム配信するのが好きで~。」


「…なんですと?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


聞いたら、動画編集は自己流。

だが…非常に見やすく作っており、基本も十分に抑えられている。


その時に、給料アップするから他の仕事として動画編集と広告動画作成を頼んだ。


それが2010年程度。ボーカロイドの使い方も十分に理解したため、企業で購入して使ってもらっていた。


「最初は危ない仕事でもさせられるかと思ったッス~。」


そして2012年。

今では、声優を複数雇って、イラストレーターも囲い込み。

短時間で見られる短編ストーリーのアニメ動画をアップしてもらっている。


ニッコニコな動画にアップして好評を博した後に、海外動画サービスに同様のモノをアップしていった。

これは今後の時代で簡易的に見られるエンタメとして、非常に数多く出回るものであった。


同様に、それが終わって時間がある時には。


ネット掲示板のスレを動画にまとめてもらったり、ゆっくり話すキャラに交互に話してもらう説明動画なども量産していった。


チャンネル登録者やいいねという面には、最初は気にしないでもらった。


とにかく、短時間で楽しめるエンタメを。

多く、量産してもらった。


企業名なんかの広告も挟みたいと、福田さんから提案があったが。

「今はまだ早い。人気になってから」と拒んだ。


2年もやれば、好評になってくるもので。

常時1~2万程度の視聴者を確保出来た。



最近ではもう一つ、動画サービスに組み込もうと考えたものがある。

節約レシピだ。


佐々木親子がやる気を出してくれて、ブログにアップした内容を動画で説明していった。元々のブログの読者をそのまま、視聴者に変えることが出来た為、非常にスムーズなスタートを切ることが出来た。



…俺もやろうかな。

そう思ったが、時間がない。


唯一、2010年から新しく手を付けたのは…





仮想通貨であった。

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