第48話 円高で仕込むはアメリカの株
2010年、9月。
モデル達のアパレルブランドは急成長し、業績は好調となった。
ギャルの卒業先として、その認知度は雑誌やテレビを使わなくても、徐々にしっかりと広まっていた。ウチのスタッフ達には、人気商品や新作を次々と着て、色んなイベントに参加してもらった。
有る時は、地方のお祭りに。有る時は街のイベントに。
旅行がてら、皆で色んな街に行って。
楽しみながら、随分と広告した。
お昼には新作と人気商品を着て。
楽しそうにお祭りに参加し、こちらからお金を払ってトークイベントに出演する。
夜は、オリジナルの浴衣とアクセサリーで。夜店を楽しむ。
お昼にトークイベントに参加していた為か、はたまた元々の知名度によるものか。
色んな客に声をかけられる。同性には写真のお願いや、着ている服の詳細を聞かれ、そこでようやく広告だ。男性はもちろん、釘付けだ。
もちろん悪い男も話しかけてくる。ナンパだけならまだしも、難癖をつけて関係を持とうとする人間すらいた。
ドンッ…。
「…痛った。あ、すみません」
「おぅ、姉ちゃん。何ぶつかってんだよ。」
「は、はぁ?そっちがいきなり曲がってぶつかってきたんじゃん。」
「はぁ。成る程、可愛いからって調子乗ってんなぁ、おら。ちょっと一緒に来いよ。…良い夢みせてやんよぉ。」
「い…嫌よ!た…助けて、会長!」
「…はい、お願いね。」
「…お任せ下さい、会長。あんなの、許すわけにいかないッス。」
俺は警備会社の数人をスカウトして、ウチで雇い始めた。
人格と、そして経歴をみて。
柔道日本一、そして空手世界一2連覇。
こんな逸材ならと、月200万以上の支払いで雇うこととした。
芸能界の闇も、怖いしね。
十分にそういった方面に正義感を出してくれる、非常にいい人間でもあった。
…どうやら、ウチのモデルの1人と付き合っているようでも有るのだが。
ま、全然いい。トラブルさえ無ければ。
あ、どうやら…ぶつかられたギャルモデルと付き合ってるみたい。
…すっごいイチャイチャしている。
おーい。広告も大事だからね?
こんな草の根活動のおかげか。
ネット販売も非常に好調で、店頭は毎日のように大賑わい。
これにより1999~2004まで程度のブームであった【カリスマ店員】として、ウチの店の店員が数人有名にもなった。
…おかしいな。そんなブームは無かった気がする。今は2010年なのに。
まぁ、とにかく。
アパレルブランドだけで15億の売上を作れるようになった。
ウチのグループは、未だIT業務が主だった業務だ。
ブログで年商1億程度。そのまま利益になりやすい。
人材派遣で年商2億。これは規模は大きいが、利益は少ない。7割は人件費だ。
その分、利用している人達に利益を還元している。なんたって、派遣切りにあった多くの人材だ。生活は大変だろうから、少しでもね。
その他…パソコン修理なども請け負ってるが、正直重きは置いていない。元々の、昔から親交のある顧客のみとしていた
業務はアパレルブランドも入れて、これくらい。
…ウチのグループは、他に収益が有る。
本当の中心は株。これが本当に大きい。…額が違いすぎる。
俺は未来を知っているから。
中国経済の急成長に乗じて、1億5000万を会社として運用し始めた。
答え合わせのようなものだった。
2008年に仕込んだ、中国株は2年で急成長した。
目標は1000億であったが、2年では税金分を除いて、400億程度であった。
まぁアパレルブランドのことも有るし、少し手持ちが欲しいかなと思いまして。
売却に至ったのです。
玲奈と梨沙は「400億の企業…凄い!」と言ってくれた。
君たちの為なら、より頑張るよ。
この400億。…どう使うか。
それは円高が始まった、この時代に答えがあると思う。
政府や日本銀行は2010年9月、1ドル=82円台と急激な円高を受け、円売り・ドル買いの市場介入に踏み切った。2023年は1ドル=148円程度。2倍近いのは凄いね。
円高による景気影響を懸念し、政府は事実上のゼロ金利政策である包括的な金融緩和策を決定。国債に加え、不動産投資信託など幅広くリスク資産を買い取る基金も創設し、デフレ克服への取り組みを強化した。
ここで、日本の政策にのって投資を終わらせると、マズイのだ。
どちらかと言えば、この400億は投資する絶好のタイミングといってもいい。
なんて言っても、海外の株が非常に買いやすい。
円高で2023年に買うより、ほぼ半額で購入できると言ってもいい。そして、まだ安い状態でこれから成長する株や、毎年配当金を増してくれる【増配】をしてくれる会社も多い。
俺は、米国の高配当株を200億分購入した。
これは配当金5%で運用できるように、調整して購入。
200億の5%。
…つまり、毎年10億が何もせずに懐に入ってくるようになる。
恐ろしい。
庶民が、年に10億だと…?
未だにスーパーに行くと、安い方を選ぶのに。
好きなご飯は納豆に卵とキムチが乗っていれば、最高なのに。
気付いてしまった。
…これは。今後使い方も考えないといけないかもしれない。
貧乏人は、お金の使い方を知らない。
そんなタイトルの本は、2023年によく見たものだ。
まさか…、このタイミングで知ることになるとは。
取り敢えず、400億は以下に分割した。
200億→米国高配当株
100億→会社運用資金
100億→米国・インドの急成長株
これからアメリカのIT企業が、覇権を握る時代が来る。
検索サービス、通販サービス、動画サービス、パソコン会社、スマホ会社、そしてSNS会社。
これらの役割を、少しでも日本でやっていきたい。
正直、それらアメリカのサービスは有用で日本のサービスがどんどんと消えていってしまう事になる。
俺は、日本という国も愛している。
この人間性、この社会性、この文化。
可能なら、30年間の経済成長が無かったこの国に。
柱になるような、そんな企業を作って。
日本全体、幸せに…とか。出来ないかなぁ。
それが俺がしたい事に、なるのかなぁ。
生まれてきた、子供たちの為にも。なるのかな?
―――――1ヶ月前。2010年、8月の夏。
静寂が、その場を制していた。
俺は、ずっと両手を組み合わせて、願うように。
その場でずっと震えて…神に懇願していた。
どんな辛いことも、自分が頑張る分には、なんとかなる。
だが。
…だが。愛する人間が苦しんでいるのが辛いのだ。
今、目の前で。
難産に困っている梨沙を見て。
2時間にも及ぶ戦いを。
「…お願いだ、神様。梨沙を、…子供を。どうにか無事に誕生させてあげてくれないだろうか。より…困っている人間を助けると誓おう。俺の寿命など、全てくれてやるから…頼む。梨沙を。子供を。」
そう、願い続けた。
「………オギャ、オギャァ…」
「で、…出てきました!旦那さん!奥さん!出てきましたよぉ!!」
人生でも、1番に嬉しかったのを覚えている。
そんな事を言うと、玲奈は決まって言う。
「私はすんなりだったから、嬉しくないんですかー?ブーブー。」
「違う。君と【愛】が生きてくれているのは、本当に嬉しい。…あの時は梨沙と【真人】が死ぬかと…思ったんだ。」
玲奈との子供は娘。【愛】と名付けた。【真田 愛】。誰よりも愛されるようにと願い、名を付けた。
梨沙との子供は息子。【真人】(マサト)と名付けた。【真田 真人】。真っ直ぐな人間に、成れると信じて。名をつけた。
自信を持って言える。
この家族を守るためなら、俺はなんだって出来るんだ。
「次は、息子ですねー。お姉ちゃんになりますよ、愛?」
「あ、私も娘がいい。ね、真人ー?」
…次?
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