第47話 2010年、突入~


「あっけまして、おめでとうー!」



「…あけまして、おめでとうございます。それじゃ…俺は二度寝するかな」





「駄目ですよぉ。今日は皆で初詣に行って、…その後、福田さん達が昼から挨拶にやってきますね。その後はアパレルブランドのメンバーが。明日はブログのライターさん達がこちらに来ます。」


「…何故だ。俺は三が日だけはダラダラするって決めてたのに…」


「年商400億円のグループ会社の会長になったんだから、仕方有りませんね?」


「うう~ん。どう見ても縁故での雇用ばかりなのになぁ。そんなに畏まる必要無いんだけど…。」



「ああ、せっかく運転免許も車も。どちらも手に入った訳ですし、おじさま達にも挨拶行きませんか?去年の夏に【わかった】時に行けなかったですもの。」





「ん。んん~。そう言えば…そうか。梨沙も安定したし、そうするかな?」






俺たちは、子供を授かった。

そりゃ、そうだ。





きっかけは、モデルの1人【長谷川 由佳】から言い寄られたこと。


長谷川はモデル達の中でも、仕事熱心で事務作業も嫌がらない、稀有な存在。


キャピキャピしていて、本当に話しかけにくいギャルたちの中で。

彼女は、落ち着いて仕事に取り組む為か、よく最終的な打ち合わせを…彼女と行う事が多かった。…見た目はホントにアクセサリーの少ないギャルって感じなのに。


福田さんと、この長谷川さんで。

この店は成り立ってると思う。


その時は、福田さんの失敗を2人で確認・修正していた。

どうやら…誤発注の問題で、来週の目玉の商品が300頼むつもりが30しか無かった。


「うん。店頭販売だけにしよう。」

「え?いいんですか?」


「人気過ぎて、店頭即売でしたって書けるように…。その日の店頭販売を売りきった瞬間にブログにアップして欲しい。元々ネット販売と日程ズラしてたから…、それを逆に謳い文句にしようか。」


「あ、…成る程。希少性を高めるんですね。プレミア感を出すというか…。」


「…そうだね。ヒトは少ない物を欲しがる。」

「…ホント、頼りになります。」


「んん。」




・・・・・・・。




「あ、あの…会長?」

「んん?何、長谷川さん」


「私、モデルをクビになって…正直死のうと思っていました。」

「…うん。大変だったね」


「…で、でも。アパレルブランドで働いてみて…。どんどん社会を知ることが出来て…。生きる、希望が。湧いたんです。」


「…それは、雇った冥利に尽きるね。」


「…社会を知って、思いました。」

「???」



「私達は、物知らずで世間知らず。…だなって。」


「…まぁ。もともとモデルだったしね。」



「…服の売上計算を簡単に間違うし、誤発注だらけ。」

「君は良いほうじゃないか、他はもっと酷い」


「…プライドも有るから、少し冷やかしとか…意地悪みたいなのをされると怒っちゃう事もいっぱいありました。」


「お客様は神様だけど…悪い神様も居ただけだよ。」


「…普通なら、クビ。でしたね?」

「…ウチは普通じゃないから。」


「…その器の広さに。私は惹かれました。…私も【囲って】くれません?」


「…何?囲うって?」


「…貴方の生活を支える女性陣に。加えて欲しいです。」


「……。」


黙っていると、後方に威圧感の有る…影を感じた。


「…ちょっと、その話。待ってくれます?」

「ホント、…予感的中。」



「工藤さん、佐々木さん…。お会いたかったです。…聞いてました?今の話。」


「ええ。最初から。」

まじかよ、…どういう事?


「最近、長谷川さん…怪しいなって思ってたんだよぉ…分かってないのは、そこの仕事人間くらいだよぉ。ホント。」

…悪口がストレートな気がするなぁ。



その2人に長谷川は、凛として返答していく。

「お二人の意思より…先に会長の意見では?」



「お、俺は…2人の相手も。…しきれていない。君にうつつを抜かす、そんな余裕は一切…無いよ。俺は本当に2人が大切なんだ。裏切ることはしたくない。」


情けない。…本当に情けない、発言だ。




「…ふう。そう…ですか。…本当に誠実な方ですね。…会長は。」




「ちょっと…女性陣と。お話、良いでしょうか?会長。」


「…話しましょうか。」

「私も話したかったー。…ね?」


・・・・・・・・。


その時間は、本当になんというか。

生きた心地が一切。…しなかった。




結論として、まだ長谷川さんはそういった関係にはならないと決まった。


「私もいつか、信用をおける人間になりますね?…会長。」



そして、始まるのが…2人の夜のお誘いだ。

今までは3~4日に一回程度、そういったお誘いに乗っていたのだが…



毎日。いや、一日のご飯の回数より多いのでは無いだろうか。


「玲奈、梨沙。聞いてくれ。…大学行って、仕事して。家でもこうなら…俺は保たないんじゃないだろうか。…あと、欲にまみれた生活はなんというか。…良くないんじゃないかなぁ。」



「…嫌です。駄目です。絶対です!」

「もう…決めたんだもんねぇ。」




何かをつける事も許されず、回数を重ねると…


「ででで、出来ちゃいましたぁ!!」

「わわ私もぉ~~。やったよ、玲奈ぁ。嬉しいよぉ。」


…こうなる訳で。


2010年、初詣後にお墓参りにいきました。



「父さん、母さん。報告がだいぶ遅れました。俺は、会社を作りました。困ってる人を助けていったら、出来たような。そんな感じ。…あとは俺の大切な人達に。子供が出来ました。貴方達のように育てられるか、心配ですが…見ていて下さい。」



…横を見ると、真剣な表情で。

2人は墓石に拝んでいる。邪魔は出来ないなと、そっと横で拝み続けた。





(佐々木です。…長かった。長かったですよ、おじさま。おばさま。


何度…何度、避妊具を捨てても。買ってくるんです、この人は。

大学生だから?…ふざけないで下さい!もうね、駄目ですよ。


長谷川さん。あれはもう最たる例です。

落ち着いて、綺麗で。スタイルも良くて。それでいて仕事もできる。


あんなのが…今後も近寄ってくると思うと…

気が気でなくなります。もうね、失神しますよ、ホント。


私達は21になりました。ようやく…ようやく授かることが出来たのです!!

おじさま、玲奈は。玲奈は…育て方に少しだけ不満があります。


もっと…もう少しだけでも。仕事以外に目を向ける人間にならないでしょうか?

朝起きて仕事、大学でも仕事、帰っても仕事。


ええ。ええ。わかります。誰よりも稼いでいます。

…違うんです。一緒に居たいんです。


…それだけ、大好きなんです。

いつ、わかってくれるんでしょうね。幸村くんは。


子供は出てきたら、すぐに見せに来ますね?

大好きですよ、おじさま。おばさま。)





(工藤です。最近幸村さんとコーヒーかベッドでしか接していない気がします。

ようやく。ようやくですよ、おじさんとおばさん。


子供が!できました~~~~!!


貴方の息子は2人とも、子供授からせてくれましたよ~~~!

…直ぐに2人目も、見せに来ますからね!


…悔しかった。2年前に墓参りに来た時に。「来年には必ず!」と息巻いたのに。


まさか…こんなに頻度が少ないとは。

私達の身体と未来を気遣って、避妊具使うのも嬉しい。


けどね。…いらない。その気遣い、全くいらない。

本能で襲って欲しいし、もっと欲にまみれて欲しい。


おばさん…どうしたら、もっと構ってくれるんだろうか。

教えてほしいよ。…会いたいよぉ。おばさんに、会いたいよぉ。


おじさんに、もっと話したかったぁ。本当のお父さんの様に思っていましたぁ。

なんで、なんで居ないの?…おじさん。会いたいよぉ。


…ごめんね。泣いちゃって。

赤ちゃん、生まれてきたら、すぐに連れてくる。


待ってて。大好きなおじさん、おばさん)





「それじゃ…行こうか。」


「…はい、パパ」

「ね、パーパ?」


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