第12話 連絡を待ちながら株を買い始めるよ

悲痛なコメント主に連絡を取ったが、一週間。

返答は返ってこない。


もう行き着くところまで行ってしまったのか…

辛い環境や境遇での嫌な結果を想像してしまい、非常に嫌な気持ちになる。


その一週間。

俺は父親の株の勉強に付き合いつつも、パソコン修理に精を出していた。


~~~~ 一週間前。~~~~~


「おーい、幸村。2006年から株を始めようと思うんだが…」


父親からそんな事を言われ、単純に驚きと興味を持った。

職人気質で、あまり俺も昔から会話することが少なかったからだ。

口調は優しいが、頑固な面があり、男はこうでないとという固定概念が強い父親であった。どんな心境の変化で株なんか始めるのだろうか。


「いやな?顧客と話すことが増えたんだが去年の2005年に株が異常に高騰したろ?それでかなり懐が潤ったと聞いてな…。今のウチの売上の多さを株に入れればトンデモナイことに為るんじゃないかと思ってな…」



典型的に失敗する例であった。ある意味、安心する。


「父さん、自分で言ってたろ?株は怖いって…」

「お前も言ってたろ?勉強したからやってみたいって。俺も買ってみたぞ~。ネットで見つけた【これなら失敗しない株の買い方】!なんと10万もしたんだ!!」


なんて悲しいことに、情報商材までしっかりと売りつけられている。

他者を助ける前に父親を助けねばならんとは。


「父さん、情報商材は危険だよ?中身はどんなモノ?」


「ああ…。例えば、これから成長する株はグロース株と呼ばれているそうだ。後は指標と為るPBR、PERについても詳しく説明が載っているぞ!!」


これは…昔、流行った【株についての基本のことしか書いていないコピペ情報商材】じゃないか!!

ある意味、流行る前に捕まえている為、非常に感度の良い客とも言える。

それがまた非常に悲しい。


「父さん、これらは基本的なことしか乗っていないよ。俺が今からサイトを送るからそっちで勉強したほうがよっぽど身になるよ?」


「な…なんだt…」


崩れ落ちる父に、優しく基本的なことを教えていく。


「いいかい、父さん。俺たちは目の前で2倍になる株を買ってキャッキャする必要はない。それはFXという超短期的な株の売買をする人たちがやるものだ。」


「ほ…ほう。なるほど」


「俺達がやるのは今は価値が全くない分野に投資してその分野が隆盛した時に売るっているウォーレンなバフェッ…、ゴホン。アメリカの超有名な投資家が実践した方法を取ったほうがいい。」


「…教えてくれ」

「うん。親孝行させてよ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


父が購入を考えて居たのはライブなド…その時に世間を賑わせていたIT会社であり、今までの上昇率を考えての購入とのことであった。


全力で止めて、正解であった。来年には紙切れになっているぞ。

2006年にその会社名がついたショック発生し、社長が証券取引法違反の容疑で逮捕されるとこにまで至ってしまう。この証券取引法も随分おかしな動きであったが、そこは関係ない。


今は、うちのお金が無くなっちゃう。


2007年に愛のある携帯電話をアメリカのりんごが好きな会社が発表する。

その時はまだ覇権を握っていないが、

調べてみると100万変えば、2020年に換金すれば5000万程度になる。2022年には最大1億だったかな。


そういった未来ある会社への投資が基本なのだ。


後は日本の安定した高配当株と呼ばれる株たちだ。

父親には安定した株の買い方をしてもらい、ロスを無くして楽しみを覚えてもらおう。


2005年に稼いだ分の店の売上のある程度はPCパーツにしておき、父親が自分の取り分としていた300万円で以下のような株を購入した。


途中、株の分化などあるので簡易な指標に。


大手総合商社I籐社:株価1500円;50万分

携帯電話会社N社:株価1100円;50万分

携帯電話会社K社:株価950円;50万分

たばこ産業会社:株価1600円;50万分

日本最大アパレルブランドUを持つF社:株価2500円;50万分

一瞬で上がって消えたIT会社:株価2000~3000円;50万分


2023年にこれを観て、なるほどと思える人は、悔し涙を流しながら株を失敗した人が多いはずだ。

2006年に前述のショックの影響で色んな株の価値が下がっていく。

これらはその価値が下がりにくい、または何年後かに大きな価値となってくれる長期保有株と言える株だ。


もちろん父に短期のトレードでの旨味を教えたいので50万は遊ばせるようにしている。2023年からみた場合残ってそうな企業内容や名前で選んだが、正直ここは記憶に自信などない。


父親に少しでも株の理解が増えることを切に願って。


そう教えていると、ブログの連絡URLに直接連絡が来た。


「あの…。前にコメントしたものです。覚えていますか?連絡を頂いたので…」


安堵した。

正直、最悪の結果ばかりを思い浮かべていたので、嬉しい。


「一週間、貴方の返答を待っていました。生きてくれて本当に良かったです。」

そう返して、俺は連絡を取り始めた。





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