第11話 いじめから助けよう

注:この回は精神的なトラウマを持った人にはオススメしません。御理解の上御覧ください。


2006年になった。


メガネをかけた魔法使いが、名前を言ってはいけないあの人と戦う映画もゴブレットを争う展開。


卒業式にはこなああああああああああゆきぃぃぃが舞い落ちる。そんな時期。


俺は一つのブログを立ち上げ、佐々木さんと運用していた。

そのブログは「いじめられている人が出来る全てのこと」と題した。


2023年もいじめ問題はあったが、2006年は顕著であった。

いじめで自殺する人間が相次いだ。なんと12歳でもしてしまうのだ。


低年齢層でも携帯電話を持つようになり、その結果連絡から弾かれた人間は居場所を無くしてしまう。

2023年はそれがSNS、2006年ではそれがメールというだけだ。


いつの時代も変わらない。

大勢を助けるのは難しいが、話を聞いて助けれる事もあるかもしれない。


そう考え、ブログ上に自分の根暗話と友人が居ない話をしっかり載せた。


2023年では【ぼっち】はネタに出来るワードであったが、2006年は一人ぼっちというのは本当に辛いワードであった。


反響はすぐに来た。

「私も友達がいない」

「いじめにあっている」

涙が出そうに成ることばで溢れた。


ブログには更に綴った。

日本は、昔からの村社会が色濃く残る文化だ。

協力や社会性を重んじて、うまく強調できない人間を省いてしまいやすい。


昔はそれをしないと、その集団が生きていくことが出来なかったのだろう。

だが2000年過ぎてもそれを続けるのは話が違う。


~~~~~~~~~~~~~~~~

一人でいるメリットを探してみませんか?

僕たちは【一人でいることを推奨し、それを助け合う集団】になりたい。

~~~~~~~~~~~~~~~~


そうブログに記載した。


コメントは多かった。

「一人でいることのメリットなんて無い」

「皆で協力したほうがうまくいくじゃん」

「…ひとりで居ても良いの?」

「私がうまく合わせられないからうまくいかない」


自分の事を正直に話した。

「自分も友人がいない。居ないが、居ないことで自分のやりたい事に時間を使える。それは一つのメリットですよね?」


「まあ」 「確かに」 「ひとりだけど」


「そこで僕はPCに詳しくなりました。父がPC修理の業務をしていたのもあったのですが、手伝えるようになり、ブログを覚え収入を得るようになりました。」


嘘はいっていない。前世でも友人は少なく、そのためダラダラとやっていたPC勉強で「あ~、これ早く知っておけばなぁ。」なんて思っていた。


「僕は覚えたPC修理技術を、クラスで貧困に困っていた友人に教えました。その友人は少しずつですが家の借金を返済する目処が立ちました。その友人にはここに記載する許可を得て、隣でブログ記載を見守ってもらっています。」


コメントはすぐに帰ってくる。

ほぼチャットのような使い方になっている

「友人、よかったね」「妄想じゃないの?」「友人はいじめにあってた?」


佐々木さんは音声のみを録音し、分割して投稿した。

「私はブログを書いている方の友人です。年齢もあり家族に迷惑もかけるため音声のみでご勘弁ください。恥ずかしい話ですが、私の家は一般的に言う貧困の家でした。父親の事業の失敗によって明日の食べるご飯も用意できない時が有りました。」


コメントは即座に帰ってくる

「友人、女性だったか」

「きれいな声だが、貧困の話は悲しい」

「ウチはまだ裕福だしな」


「私はクラスメートに常に馬鹿にされていました。貧乏。借金。風呂入っていないから臭い。全てが私という人格を傷つけました。」


「わかる。」

「臭いは私も言われる」

「友人、頑張れ」


「ある日、クラスで貧困について話し合う授業が有りました。そこでブログを書いている方とは一緒の班になりました。殆ど話したことは無かった人でした。」


「あ、元から友達ではないんだ」「そこで友だちになったのか」

「それにしても酷い議題だね」


「テーマを聞いた時から逃げ出したくて仕方有りませんでした。一緒の班になった違う方は貧乏はその人のせい。そうはっきり言っていました。稼ぎが足りないのは頑張っていないから。いい父親を捕まえない母親のせい。そう言われると何も返せなくなっていました。」


「つらい」「酷すぎる」


「相手は私が貧困層であることを知っていたようで、いつも何を食べているかを聞いてきました。私は母の作るカレーが大好きでした。具はないですが色んな工夫が有りました。それを伝えると具がないことを笑われました。母を笑われ弁解しようとしていた所、ブログ筆者がそれは間違っていると言ってくれました。」


「おお。」「やるじゃん」


俺も音声に入った。

「友人の環境は…なんというか同じ経験はしていないけど身にしみて分かったからね。でも、その時は助けて終わりだと思っていたよ。」


「ふふっ。その後、ブログ筆者にお礼を言いにいったんだけど…大変なのかって聞かれて話す間に泣いちゃって…そしたらブログ筆者の家でバイトをしないかと伝えられました。」


「おお!」「金銭的に楽になるね」


俺がサポートする。

「自分の家の仕事を手伝うと、こうした方がいいんじゃないか、これは良いといったのがわかるようになった。仕事は上向きだったからちょうど働き手を探していたし、何事にも丁寧なのはクラス一緒だから知っていたよ」


「なるほど」「私は丁寧になれないなあ」


「小学生の妹2名がおり、面倒も見なければという事で他のバイトが出来ずに居た私にとっては非常にありがたかったです。妹のことを伝えると働き方も融通してくださいました。本当に感謝しています。」


「捨てる神に拾う神ってことだね」「いいな、羨ましい」


佐々木さんは大きく息を吸って、落ち着いてから話し始めた


「伝えたいことがあります。それは私は今でも貧困で、心無い人間からお金をあげるから身体を許せと碌でもない誘いを受け、いじめも続いています。」


「え?」「良くなったんじゃないの?」


「いじめと言っても仲間に入れてくれない、無視される程度です。皆さんのほうが酷い場合もあります。…ですが!…なのですが、ブログを書いている人は…何一つ…悪いことをしていないのに、常に悪口を言われ、私を助けたばかりに悪い誘いをした人間から恨まれもしています。」


思わず俺もびっくり。

「え?」


「なんでブログ主が驚いているのか分からないけど、つらいね…」

「助けたのに…」


俺も聞く

「悪口は知ってたけど…常に言われてんの?」

「あ…えっと…はい。」


「…ちょっと面白いかも。ごめんね不謹慎で」

「気づけよ」


―――――――静寂に包まれる


佐々木さんがハッとする

「あ…ご、ゴホン!…つまり何が言いたいかと言うと、いじめや学校以外での生活に重要なものを置いたほうが良いということです。」


「急に戻った」

「あー。まあ確かに」


「私の場合、それは今はバイトであり、それで大学まで行って勉強したいという夢を持つことが出来ました。…正直それまでは身体を売ることも、自分で命を絶つこともどちらも真剣に考えていました…」


「ツラすぎるよ…、よかったね」

「選ばなくて本当に良かったね」


「ブログ筆者とはつい先日「お友達になりましょう」という話をしたばかりです。私達はようやくバイト上での知り合いから友人に為ることが出来ました。」


「え?遅くね?」

「そういうものなの?」


「私はブログ筆者の歩みに合わせます。心地よいのです、一人ひとりにしっかり向き合う彼の姿勢がとても。」


「誠実とかでは無い気がするような…」

「素晴らしいね。その姿勢」


「私は皆さんには最悪の選択を取ってほしくない。その為に出来ることを誇れる友人とやっていこうと思います。まずは単独で出来ることや身につけたほうが良いことをまとめてこのサイトにUPしてこうと思います。」


そうやって、その日の投稿を終えた。


…今日のコメント欄はいろんな言葉が多い。


その中で目を引くコメントがあった。


「私と同じ環境なのに…ずるいよ。私は助けてくれる人が居なかった…もう…いいかな。」


俺はそのコメント主に直接連絡を取ってみた。

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