第5話 佐々木さんを雇いましょう
「私を…雇う?それって…?」
佐々木さんに、説明した。
ウチはpc店を営んでおり、ブログやhpをやり始めた事。
それによって修理業務やデータ移行業務、pcパーツの販売が増えたことを話した。
「俺自身もブログを始めたいから、手伝い続けたくはないんだ。だから…俺の代わりに働ける人間を探してたんだけど…」
「う、嬉しいです!…あ、でも…私、妹たちのご飯用意しないといけなくて…まとまった時間で働けないから、バイトも採用されなくて…」
わかっていた。
高校入学後すぐにでも働くレベルで困窮していたのだろうが、佐々木さんの両親は子育てすべてを佐々木さんに頼み、借金返済を頑張っていたのだろう。
「俺が父親に頼む。どうだろうか?」
「願っても…ない…話です」
「成立だね」
佐々木さんは携帯を持っておらず連絡を取れないため、自宅を教えてもらった。
決まり次第報告するといった形を取った。
その日の下校、父親に相談するために。
帰り道を急いでいると…
「腹立つなー、真田。アイツ、あんなに反抗してくるなんて…」
ギャルたちが居た。
「さな…だ!めぇぇぇ!!!」
そう言いながら、落ちている空き缶を蹴るギャル達。
そのギャルが空き缶を蹴って飛ばしながら歩いていると、最後には飛ばしすぎたのか、通行人に当たってしまう…。
「…ッツ!! あああ、痛ぇーなコラあああ!!!」
そこには、スキンヘッドの怖いおじさんがいた。
「やばばばばばばっばばば!!!」
「おう…姉ちゃん達ぃ…ちょっツラ貸して貰おうかね…」
ギャルたちが、胸倉を掴まれている。
見過ごそうかと一瞬考えたが…
観てしまったものは仕方ない。
「あああああーーーーー!!!!こんな所でーーーー!!!怖い人がーーー!!!お姉さんに襲いかかってますよーーーー!!!おまわりさーーーーーん!!!」
大きな声で叫んだ。
「ちっっ!!てめえら!!今度はただじゃ済まさねえぞぉ!!」
スキンヘッドは、遠くに走っていった。
「た…助かった…」
「あ…ありがとー、誰か知らな…」
―――世界が止まった。
「真田じゃん…」
「ウチ、お礼言いたくない…」
苦々しく、俺はその状況を飲み込んだ。
「…大丈夫、期待してません。」
助けなかった方が良かったかと、少しだけ考えるも…首をブンブン振って、自分を自分で認める。
「俺、あんな奴、助けた。偉い」
心か言えないから、凄いカタコト。
改めて帰宅し、父親に相談する。
「うーん、pc技術や知識が無い子を雇うのか…確かに、手は足りないが…。」
「俺が教えるよ。俺も自分の時間を作りたいし、…どうかな?」
「お前が言うなら…雇ってみるか。しかし、人を助ける為に行動するとは…大した男になったもんだ。」
父は雇う雇わないの合否よりも、人助けをした息子を誇らしいと感じる方が強いようだ。…嬉しいやら、恥ずかしいやら。
恥ずかしさで顔を隠しながらも、了解を得た俺は…
急いで、佐々木さんの家に向かった。
学校へ向かう道中で、少し曲がれば佐々木さんの家。
初めていくが、昔はよく自転車で街を駆け回ったせいか、なんとなく理解度が高い。
身体も軽い。33歳では感じなかった身体の軽さよ。
…ここか。
屋根も剥がれ、色んな素材で塞いでいる…見事な素人仕事。
その中で、キャイキャイ声が聞こえる。…ここが佐々木さんの家か。
チャイムを鳴らすも、音が鳴らない。
「んん?…どうなってんだ?」
何度も押すが、意味がない。
仕方ないのでドアを数回ノックして見ると、小さな女の子の声で「おとーしゃんはいましぇん」と聞こえる。
ああ。借金取りとかと勘違いされたのかな。
「ああ、お父さんには用事ないよ。お姉ちゃんののクラスメートなんだ。名前は真田幸村。玲奈お姉ちゃんはいるかい?」
「いるよ!呼ぶねー!」
「ありがとう」
「オネエちゃーん!玲奈ねえ!彼氏だああああああ!!」
…ありがとうと言った言葉を、今すぐ…返してくれないだろうか。
ドタバタとすごい音を出しながら、佐々木さんが玄関に来た。
ガラぁ…
「は…はぁはぁ…すみません、妹が…とんだ…勘違いを…はぁはぁ…」
ちょっと待ってくれ。
走ってきたのは、キャミソールと短パンの同級生。
薄着すぎて困る。そして豊かすぎて困る。何処がとは絶対に言わない。
これは…眼福過ぎて、だめだ。
汗ばむのも全くけしからん。
「い…いや、こちらこそ急にごめん。父親からokもらったから…来たけど…とりあえず、上着着ておいでよ?」
佐々木さんは顔が紅くなり…
「あ、きゃっ…きゃああああああ!!!ご…ごめんなさああああああいいい!!!」
飛んでいくように、自宅の中へ入っていく。
こんな佐々木さんを見れたのは、少し幸運だったかもしれないな
玄関から見る家の中は非常に質素で、ランドセルが2つある事から…妹は2人でまだ小学生のようだ。
どれもボロボロの靴をきれいに磨いて使っており、好感が持てる。
玄関の写真は裕福だった頃のモノのようで、どれも佐々木さんを中心に笑顔が絶えない。
こんな人が…金持ちに良いようにされる未来は、どう考えても…良くないだろうな。
この生活の中でも、出来るこの人の副業とかあればいいのに。
そんな風に思いながら、玄関で佐々木さんを待っていた。
…すると、後ろから声がかけられる。
「あら…どちら様ですか?」
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