第68話【精霊騎士】、近所にダンジョンができる。
ある日の午後。
俺とミスティが演習場で模擬戦を行っていると、今日は政務があると言って朝から王宮にこもりきりだった幼女魔王さまが、やや深刻な顔をしてやってきた。
「どうしたんだ魔王さま、そんな深刻そうな顔をして?」
手を止めた俺が尋ねると、
「実はゲーゲンパレスの目と鼻の先に、ダンジョンができたのじゃ」
幼女魔王さまがいつもの明るい様子とは違った真面目なトーンで言った。
「ダンジョンですか?」
ミスティが首をかしげながらおうむ返しに聞き返す。
まぁいきなりダンジョンができたと言われて、はいそうですねと納得する人はほとんどいないだろう。
だけど俺にはなんとなく話の流れが読めていた。
「もしかして精霊が作ったダンジョンなのか?」
「うむ。さすがハルトは精霊使いとしてその辺りのことも知っておるようじゃの。今朝、何の前触れもなくいきなりできたことから、恐らくは何らかの精霊力が大地に干渉して、ダンジョンが生成されたと妾は見ておる」
「つまり精霊ダンジョンってことですか。そんなのがあるんですね」
「精霊は普通は見えないし、精霊力も現実世界に目立って影響を及ぼすことはないんだけどさ。時々スポット的に精霊力が溜まり過ぎちゃって、物理的な大きな変化となって現実世界に影響を及ぼすことがあるんだよ」
「そうなんですね。勉強になります」
「しかも魔王さまの態度を見る限り、どうも危険があるみたいだな?」
「実は様子見として調査隊を向かわせてみたのじゃが、ダンジョンに入ってすぐに、トラップとゴーレムによって追い返されたと報告があっての」
「ご丁寧にトラップが用意されていて、しかもゴーレムまで出るのか」
「とても本格的ですね」
「もしかしたら迷宮精霊【ミノタウロス】がいるのかもな」
「迷宮精霊【ミノタウロス】ですか? どんな精霊なんでしょうか?」
「文字通り迷宮を作って住み着く精霊なんだ。【ミノタウロス】本人に悪気があるわけじゃないんだけど、敵が入ってこれないように防衛用のトラップやゴーレムを配置するから、やっぱりちょっと危ないんだよな」
「間違えて子供がダンジョンに入ってしまったりすれば、下手したら死ぬかもしれんしのう」
幼女魔王さまが難しい顔で呟いた。
「それは確かに危ないですね。なにか対策はとったんでしょうか?」
「今のところは入り口の周囲に土嚢と空堀を3重に巡らせて、さらには騎士団が24時間の監視体制を敷いて、ゴーレムが出てこれないようにしてあるのじゃが」
「ま、いつまでもそのままにしておくわけにはいかないか」
「うむ。なにせ場所が場所じゃからの。ゲーゲンパレスの目と鼻の先ということを考えれば、なるべく早くダンジョンを調査して危険度を把握しておきたいというわけなのじゃよ」
「それで私たち勇者パーティが調査に向かうというわけですね?」
「うむ、数多のトラップやゴーレムたちを切り抜け、最後は迷宮精霊【ミノタウロス】と戦うことになるやもしれん。かなり危険なミッションになるじゃろう。勇者ミスティ、精霊騎士ハルトよ。妾と一緒に行ってくれるかの?」
「もちろんです魔王さま!」
「俺ももちろん協力するぞ。なにせ俺たちは勇者パーティの仲間なんだからな」
ってなわけで。
俺たちはゲーゲンパレスのすぐ近くにできた精霊ダンジョンに、調査に向かうことになった。
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