第63話【精霊騎士】、卓球をする。
温泉から上がった後。
地元食材をふんだんに使った、見た目も鮮やかな、すごく美味しい晩ご飯を食べてから。
俺たちは卓球と呼ばれる屋内レジャーを楽しんでいた。
「それいっ! スマッシュなのじゃ!」
パチコン!
俺が何とか返したピン球を、幼女魔王さまが俺の陣地に軽快に打ちこんだ。
「魔王さま、ナイススマッシュでーす! ハルト様ももう少しでとれそうでしたね、次ガンバです」
ミスティが幼女魔王さまをバッチリ褒めつつ、しかし俺へのケアも忘れない絶妙な応援をしてくれる。
「くっそー、またやられたな。それにしても卓球が上手なんだな魔王さまは。ちょっと意外かも」
俺は床を転がるピン球を拾い上げながら、感心したように言った。
本当にお手上げだ。
勝てる要素が見当たらない。
「ふふん。
俺に褒められてまんざらでもない幼女魔王さま。
その口ぶりには、圧倒的なまでの自信がみなぎっていた。
もちろん精霊騎士や精霊使いは、精霊の力を借りることで様々な卓越した技能を使うことができる。
今も卓球精霊【ミウミマ】を使えば、ここからでもなんなく逆転することは可能だろう。
最上位の卓球精霊術【ミマパンチ】は、そう簡単には止められないはずだ。
だけど、それはちょっと違う気がするんだよな。
なぜなら今は勝負に勝つことが目的じゃなくて、みんなでわいわいと卓球を楽しむことが目的だから。
だから俺は精霊術を使用せずに、自分の力だけで卓球を続けることにした。
幼女魔王さまの鋭いスピンのかかったサーブをなんとか返し、ドライブやスマッシュ、チキータといった特殊攻撃になんとか食らいつく――つけないことがほとんどだけど、それはそれで楽しいからヨシ!
3人で次々と相手を変えながら、時に幼女魔王さまにコツを教えて貰いながら、俺たちはちょっと疲れてしまうくらいに、卓球を楽しんだのだった。
◇
卓球を終え、シャワーで軽く汗を流して部屋に戻った後、俺たちは川の字に敷かれた布団に横になった。
俺がまん中で、右にミスティ、左に幼女魔王さまというポジショニングだ。
「ハルト様、手を繋いでもいいですか?」
小さな声でこわごわって感じで聞いてきたミスティの手が、しずしずと俺の布団の中へと入ってくる。
「構わないよ」
ミスティの女の子らしい小さな柔らかい手を、俺は優しく握り返してあげた。
「えへへ……ハルト様の手、大きいです」
ミスティは可愛らしくつぶやくと、そのままなぜか向こうを向いてしまった。
どうしたんだろう、もしかして恥ずかしかったのかな?
「せっかくだし、魔王さまも手を繋ごうか?」
「いや、
「なに遠慮してるんだよ。ほら手を出して」
俺は幼女魔王さまの布団に手を入れると、その手を軽く握ってあげた。
「まったくハルトよ、こういうのはミスティにだけしてあげるのが良いと、妾は思うのじゃがのう」
「なに言ってんだよ。ミスティも魔王さまも俺の大事なパーティの仲間――家族なんだからさ」
「ふぅむ。ま、言いたいことはなくもないのじゃが……今のところはそれでいいかの。せっかくの3人で過ごす夜に、無粋な言葉をかわすというのは、あまりに興が
「……?」
幼女魔王さまの言いたいことがイマイチ分からなかったんだけど。
その後、他愛もない話を始めた俺たちは、川の字で手を繋いだまま夜のおしゃべりに興じ――。
いつの間にか、誰からともなく寝入ってしまったのだった。
◇
翌日と翌々日も温泉に入ったり、美味しいご飯を食べたり、周囲を散策したり、ビリヤードをしたりと1日中温泉宿を楽しんで、俺たちは温泉旅館を後にした。
「いやぁ、楽しかったなぁ。ゲーゲンパレスも知らないことばかりで楽しいけど、旅行に来るのはまた別の楽しみがあるよな」
「また3人で来ましょうね♪」
「うむ」
こうして今回の温泉旅行は、3人の絆を大いに深める形で幕を閉じたのだった。
――――――
~〇〇無双~ 名門魔術学院を首席で卒業した俺、次席卒業の大手魔術企業のボンボンに逆恨みされて就活を妨害され、無職になる。「そんな時に出会ったのが、この〇〇でした」
https://kakuyomu.jp/works/16817330665708036201
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