第20話 遅すぎる後悔・前編

 俺の名前は、竜ヶ崎 颯澄。

 私立城西学園高校に通う2年であり、風紀委員会に所属している。

 また、俺は竜ヶ崎財閥グループの御曹司でもあった。


 俺は実家の権力を傘にきて、城西学園に通う女子生徒達を自分の性欲を満たす為だけにという最低な理由で襲いまくっていた。

 だが、最後まで満たすことが出来たときや出来なかった時もある。

 勿論、女子生徒達を脅しておいたので俺がやったことが学園側にバレることはない…と鷹を括っていた。


 そんな俺が次のターゲットにしたのが、1年生の西園寺 沙苗という女子生徒だった。

 あの西園寺財閥グループの令嬢という理由もあるが、西園寺家から沙苗を俺の嫁に差し出すという打診が来たからというのが、ターゲットにした1番の理由でもある。


 そして風紀委員会が行っている朝の正門前での服装チェック運動をしてる時、ターゲットが正門前に現れた。

 更には桜坂 詩織という美少女までもがいたので、これはチャンスだと思った俺は、2人を呼び止めた。

 風紀委員会室に連れ込んでから襲う為に。

 だが2人の間には見知らぬ男が居るだけには留まらず、なんと2人の間にいた男に抱き着いていたのである。

 俺の嫁となる女と詩織が知らない男に抱き着いていたのを許せなかった俺は、沙苗と詩織を無理やり連れて行こうと決意し、沙苗達に声を掛けた。


「そこの君達、ちょっと待ってもらってもいいかな?」


 そう僕が呼び止めると、沙苗が不機嫌な顔をしながら返答してきた。


「はい? なんですか先輩?」


 そんな沙苗の返答に対し、僕に対してなんだその態度は?と、内心で怒りながらも僕は言う。


「君達、不純異性交友はダメだよ?

 学園の校則でも定められてるんだから、ね」


 すると今度は詩織が僕に聞いてきた。


「先輩、私達のどこら辺が不純異性交友なんですか?」


 そう反論してきたので、僕は少しキレ気味に言葉を返してしまった。


「君達がそっちの"貧乏人"の彼に抱き着いていることを指摘したつもりなんだけどね、僕は。

 そして、僕が指摘している今でも腕を解こうとしないしね」


 これに対し沙苗が言った。


「先輩…不純異性交友というのがどういう意味か分かっていて言っているんですか?

 それと…誰のことが貧乏人だと?」


 不純異性交友の意味が分かっているか、だと!?

 それくらいは知っている!!

 僕のことを馬鹿にするなよ!と思いつつも言う。


「意味を知っていて言っているんだが?

 そして、誰が貧乏人かって?

 そっちの彼の事を言っているんだがね」


 そう沙苗に言うと、次は詩織が僕に聞いてくる。


「そうですか……では先輩は貧乏人ではない、ということでしょうか?」


 その質問に対して、僕は声高らかに言う。


「それは勿論だよ。

 僕は、竜ヶ崎りゅうがざき財閥グループの御曹司の竜ヶ崎 颯澄はやとという。

 それで君の名前は?」


 既に名前は知っていたが、僕は敢えて聞いてみた。

 だけどそれに対する詩織の答えは、


「あの竜ヶ崎財閥グループの……そうですか。

 私の名を知る必要はないと思いますが?」


 という巫山戯た答えだったので、僕はキレ気味に言う。

 無論、沙苗にも言っているんだ、という意味を込めて。


「先輩である僕が名乗ったのに、君達は名乗る気が一切ないと?

 礼儀知らずにも程があるんじゃないのかな?


 はぁ……君達2人には風紀委員会室まで来てもらう必要がありそうだ」


 僕がそう言うと、再び詩織が言った。


「なんで私達2人だけ行かなければならないのでしょうか?

 行くのなら、彼も一緒に行くのが普通なのではありませんか?」


 これに対し僕はニヤッとしながら言う。


「彼は邪魔だから連れていかない。

 でないと、君達に"色々と尋問"することが出来ないじゃないか」


 すると詩織は嫌悪感を顕にしながら言う。


「…っ!? 呼び止めたのも、最初から私達2人を狙ってたのですね?」


「そういうことさ。

 分かったのなら、僕と一緒に来てもらうよ?」


 そんなやり取りを沙苗・詩織とした僕は、彼女達を連れていこうと手を伸ばす。

 だがその時、2人の真ん中にいた貧乏人が僕の腕を掴みながら間に立ち塞がってきた。

 だから僕は睨みつけながら言った。


「……僕の邪魔をしないでくれないかな?」


 その僕の言葉に対し、男が口を開く。


「そういうわけにもいきませんよ、先輩……いや、竜ヶ崎 颯澄さん」


「なんで、先輩呼びから僕のフルネーム呼びに?」


「貴方の行動は、風紀委員から逸脱しています。

 ……それに怒らせてはいけない人を怒らせてしまった」


「……!? このタイミングで"あの御方"がご出勤されるとは……私達には運が見方してくれたようですね」


 はい? 何を言ってるんだ、この貧乏人と詩織は?

 怒らせてはいけない人を怒らせてしまったとは、どういう意味だ?

 この時はこの男が言っている意味を理解出来ていなかった僕だったが、その意味を後から嫌でも理解することになる。

 何故なら、


「今朝方振りだな、儂の自慢の孫よ」


「はい、お爺様。

 今日はこの時間帯での出勤だったのですね」


「うむ、その通りだ」


 いつの間にか理事長が貧乏人の側にいて、親しげに話していたのだから。

 その理事長がいた事に驚いた僕は、


「な、な、なんで此処に理事長が!?」


 と言ってしまっていた。

 だけど僕のその言葉は無視される。

 その上で詩織が理事長に質問をする。


「どうして、理事長が正門前にいるのですか?」


「丁度出勤時間だったからだが?

 そして儂の孫がいたので一声掛けてから理事長に向かおうと思ったからだ」


 儂の孫……と言う部分に疑問を持った僕は呟く。


「へ? 儂の孫? 誰が?」


 僕のこの呟きが聞こえたのか、理事長が口を開く。


「貴様の目は節穴か? 孫なら儂の隣におるではないか」


 隣って……まさかこの貧乏人が!?と思ってしまった時には口に出して言ってしまっていた。


「この貧乏人が理事長の孫だと!?」


 この僕が彼のことを貧乏人呼ばわりしてしまったことがどうも許せなかったようで、理事長が鋭い眼光で僕を睨んだ上で怒鳴り声で言う。


「貴様ァァァァァァァ!!

 儂の孫が貧乏人とはどういうことだぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ヒィィィィッ!?」


 理事長の怒鳴り声に、僕は情けない悲鳴をあげてしまう。

 その理事長を咎めるような口調で貧乏人が言った。


「お爺様、ここは抑えて下さい。

 周りの生徒達も、お爺様の声と殺気に怯えてしまっていますので」


 その貧乏人に対して理事長はすぐに謝る。


「むっ! それはすまないことをしたのぅ。

 それはそうと……儂のことをこのボンクラに言った方が良いのではないか?」


「はぁ、自分で紹介出来るでしょうに……全く」


 そう言った貧乏人が言った───


「私立城西学園高校理事長にして、僕のお爺様でもある──瀬戸崎 繁信だよ」


 という驚愕の言葉を。



◇◆◇◆◇



─理事長室内─


 それから少しして、理事長を加えた僕達は理事長室へと移動した。

 そして最初に口を開いたのは理事長であった。


「さっきも孫から紹介されたが、改めて名乗ろうかのぅ。

 私立城西学園高校現理事長にして"瀬戸崎財閥グループ副会長"の瀬戸崎 繁信だ」


 り、理事長が瀬戸崎財閥グループの副会長でもあることを知った僕は、自分の血の気が引いてくのが分かった。

 そんな僕に理事長は聞いてくる。


「それで、だ。

 貴様の儂の孫に対してのあの態度と発言はなんじゃ?」


「い、いえ、あの、その………」


 理事長からそう聞かれたが、怯えている僕は小さな声でそう答えるのがやっとだった。

 だがそれがダメだったのか、


「声が小さい!!ハッキリと物を言わんかい!!」


 と、更に怒鳴られてしまった。

 だから僕は、


「ヒィィィィッ!?」


 と言う情けない悲鳴を上げてしまった。

 そんな情けない僕に理事長は言う。


「儂の孫とは知らなかったのか?

 まぁ、貴様如きが知らずとも無理はないか。

 この学園に通う生徒だけでなく一般人ですら、儂に孫がいることも伏せているからのぅ」


 そう言ってから続けて、


「だがそれでもだ…知っていても知らなくても、貴様のあの発言と行動はあってはならん!!

 ましてや、儂の孫を貧乏人と呼ぶなどなぁ!!」


 と、怒気を強めて言った。

 だから僕はまたしても、


「ヒィィィィッ!?」


 と言う情けない声を発してしまった。

 そんな時、情けない僕を見かねたのか…理事長の孫が口を開く。


「お爺様、これでは話にもなりません。颯澄先輩は僕の名前と彼女達2人の名前すら知らないのですから。

 そして、僕の正体もね。

 颯澄先輩が今知ったことといえば、僕がお爺様の孫であることとお爺様が瀬戸崎財閥グループの現副会長であることだけです」


 それに対して理事長が言う。


「あの顔を見ると、どうもそのようじゃのう。

 そこの小童……儂の孫の名前と彼女らの名前を知りたいか?」


 そう問われた僕は、


「い、いや……」


 そう答えた。

 沙苗は西園寺財閥の令嬢で僕の妻になる予定だからフルネームを知っている。

 詩織に関してはフルネームしか知らないけれど、な。

 だが僕の拒否する発言を無視するかのように、理事長は3人に問い掛ける。


「……言ってもいいか?」


 理事長のその問に対し、3人が答える。


「お爺様のお好きなように」

「繁信様にお任せ致します」

「はい、大丈夫です」


 その答えを聞いた理事長が口を開くのだが……それは僕にとっては更に驚愕する発言だった───


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