第3話 ウルフ討伐

「確か、この辺りだったな」


 レオナルドは、昨夜ウルフに遭遇した森の近くに来ていた。

 ここが、魔物討伐を依頼された場所であった。


 この一帯を縄張りとするウルフの群れに、商人が襲われているらしい。

 昨夜のウルフたちも、その群れの一部だろう。


 レオナルドは、あえて音を立てながら移動し、自分の存在を魔物に認識させた。

 しばらく散策していると、どこかから視線が向けられているのに気づく。


(早速、現れたようだな)


 遠巻きに、2頭のウルフがこちらの様子を伺っていた。

 灰色の毛皮をまとった魔物たちは、牙を見せながら唸り声をあげていた。


(やるか)

 背中から2本の剣を抜く。


 五芒星のように背中に並ぶ5本の剣。

 その右上と、中央の2本を選択した。


 炎剣ファイアスコーチと、雷剣サンダーブリッツだ。


 ウルフ達に背を向ける。

 襲いかかるチャンスを与えるためだ。


 ウルフはスピードに特化した魔物だ。

 こちらから追いかけても効率が悪い。


(来たな)

 敵の気配が近づいてくるのが分かった。

 ウルフが土を蹴る音が耳に伝わる。


「そこだ!」

 振り返り、左手の雷剣を横に振るう。


 剣先から放たれた雷が、背後に飛びかかってきたウルフに直撃する。


 感電して意識を失ったウルフは、飛び込んだ勢いのまま、地面へと落下した。


 もう一方のウルフが、懲りずに飛びかかってくる。


「次!」

 今度は右手の炎剣を、下から上に振るう。


 炎の斬撃がウルフを襲う。

 斬撃は、魔物の体を真っ二つに引き裂いた。


 2つに別れた体が地面に落ち、ウルフは消滅した。


(これで終わりではないだろう)


 周囲を見回す。


 いつの間にか、大勢のウルフに囲まれていた。

 20頭近くはいるだろうか。


 ウルフの群れは、円を描くように、遠巻きにこちらを囲んでいた。


 少しずつ、その円が狭まり、距離が近づいてくる。


 ジリジリとした緊張感に満ちた空気が、突然切り裂かれる。


 前後左右から、4頭のウルフが一斉に飛びかかってくる。


「そこっ」


 双剣を振るい、炎と雷の斬撃で、2頭を瞬殺する。


 背中に残りの2頭が襲いかかるが、その爪とキバが鎧を貫通することはなかった。


 その場で体を回転させ、鎧に噛み付く2頭を、遠心力で引き剥がす。


 急所である頭を隠していないのにはワケがあった。


 1つは、視界を遮らないため。

 そして2つめは、そこに敵の攻撃を集めるためだ。


 案の定、今度は3頭のウルフが、頭を目掛けて飛びかかってくる。


(一撃で仕留める)


 両腕を、自分の体の左側へ向けて水平に伸ばす。

 右腕を上に、左腕を下に、2本の剣を構える。


 そのまま、時計周りに1回転した。


 上と下、2種類の斬撃が円を描いて放たれる。


 炎と雷を同時に直撃させ、3頭のウルフを一瞬で返り討ちにした。


 ウルフたちの爪は、レオナルドに到達することなく、地面に落下する。


 双剣を振り切ったところに、別の2頭が飛びかかる。

 剣を握る手を狙ってきたようだ。


「賢いな」


 左手に魔力を込める。

 左手で握る雷剣の先端から雷撃が放たれる。


 その雷撃が、2頭のウルフに直撃する。


 感電した2頭は地面に落ちて痙攣していた。


「残念だが、それは対策済みだ」


 順調に敵の数を減らしていく。

 残りは3分の2だ。


「次はこちらからいくぞ」

 これだけ距離が縮まれば、もう射程距離内だ。


 自分の体を抱きしめるように、左右の腕をクロスさせる。

 右手で握る炎剣を左脇に、左手で握る雷剣を右脇に添えるように構える。


 そして、炎剣を右へ、雷剣を左へ、同時に振り払う。


 炎と雷の性質を持った十字の斬撃が、正面に放たれる。


 斬撃は、さらに3頭のウルフを同時に仕留めた。


 その時だった。


 離れた場所から、ウルフの激しい咆哮が聞こえる。

 その声を聞いて、周りを囲っていたウルフが離散する。


(なんだ?)


 声の主は、他の個体よりも倍以上は大きなウルフだった。

 その体長は、3~4メールはあるだろうか。


「ボスの登場か」


 その牙は口からはみ出るほどの大きさがあり、両足には強靭な爪を備えていた。

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